くっすん日記
携帯電話のブックマークの一番上に風来坊のHPを入れているさとし、ことですこです。
土曜、デキシード・ザ・エモンズ解散の報を聞き、しんみりしながら彼らのCDを聴いていた。改めて聴くと、やはり秀逸なバンドである。60sやGSなどを演奏すれば日本で一番だろう。しかもバカなところが素敵。
数年前にBOB LOGⅢとの《日米クレイジー対決》を観に行った。本当にカッコイイバンドだったな。BOB LOGは、自分の着古した服をダンボールに詰め込んで会場で売り捌いていた。バカだなぁ。
300円の白ワインに氷を入れてしみじみしていると、
「いま師匠の店にいます」と、T英からメールが。
「10分で行きます」と返事。
おろし立ての納涼Tに着替えてチャリをカッ飛ばす。
店に着くとT英とSさんが。彼らは同じバンドで、それぞれギターボーカルとベースである。
「お腹空いたなぁ」と言うと、師匠が厨房にこもり始め、素早く野菜たちが出てくる。セロリうまし。マヨネーズなんかは使わない、少量の味噌である。いかにも師匠らしい。
「これって……」
「時価だぞ!」ニカッと笑う師匠。
「ゆで卵は50円か?」
「うははは! 吉野家の温泉卵だって60円ですよ!」
再度厨房にこもり始める師匠。すると、ぷんと陸上部の靴下みたいな異臭が店内に立ちこめる。
おれの足下をチラチラ見るT英。
「おい! おれの足の臭いじゃねぇぞ?!」
「だって、自転車にハマってるんでしょ…?」
「だからって臭いんかいっ!」
まさか師匠、納豆丼でも出すつもりなのか? その疑問符は杞憂だった。
出てきたのは、ペンネ・ゴルゴンゾーラだった。納豆とそっくりなソレは、チーズの匂いだった。
コレがめちゃくちゃにうまかった。やはり男は料理が出来ないとイカンね。サクッ、とうまいもを出せるなんて、カッコイイじゃない。
「こりゃあエルモア・ジェイムスですね」
「そうだ」
「でもエレキの音だなぁ」
「後期はソリッドに持ち替えるんだ」
ためになるなぁ。
「こりゃあイギリスの音ですね」
「バカ! スタカンだよ! このスカタン!」
「師匠って、意外とアズテック・カメラとか好きですもんね」
「モロにリアルタイムだったからなー」
そうして珍しくEP大会が始まる。
トイレから戻ると、フライング・リザーズの「マネー」が掛かっていた。いわずもがな、不屈の名カバーである。
なんと国内版のEP! こりゃ珍しい!
「RSRの時は誰が来ました?」
「あー、花田とかあの辺な。あと、またアイツ来やがった」
「アイツ?」
「浅井健一だよ」
「ブハッ!(噴麦酒)」
「おれはアイツが嫌いなんだけど、アイツはこの店が好きみたいだな」
「超大物じゃないっすか」
「自分の酒を自分で頼めない奴ぁ、おれは嫌いだな」
ですって!
すると、Sさんの彼女とその友だち計3人が来店。3人とも異常なくらい国内ロックについては詳しい、生き字引である。早速伝えてやった。
「デキシー、解散だぜ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? 嘘でしょ?」
「残念ながら本当っぽい」
泣き崩れる中年女三人組。
どうにも解せないのだが、T英とSさんのバンドは人気があるらしく、彼女たちもファンらしい。おれにはどこがいいのかサッパリ判らないので単刀直入に、
「どこがイイわけ?」と訊くと、物凄い目つきで睨まれてしまった。くっすん。
T英が発する、それほど面白くないトークに爆笑する女たち。
おれが発する、物凄く面白いトークに白ける女たち。くっすん。フェアじゃない。ぐっすん。
「お前らグルーピーだな!」と言うと、
「ふっるーい!」と一蹴された。くっすん。
「そのTシャツ、なに?」
「天下のTAKAGISM.Tだろうが!」
「なにソレ?」
「お前ら札幌在住のクセに高木敏光を知らんのか! 修行が足りん!」
「知っらなーい」
だって。くっすん。
T英が隣に来たので耳打ちしてやった。
「なぁ? ロッド・スチュアート気取りかい?」
するとT英、急に我に返って顔を真っ赤に照れ始め、おれを叩く叩く。痛い痛い。くっすん。
3時まで呑んだかな。T英は「二人でウチで飲み直そう!」と言ったけど、
「アイドルと二人きりはキツイなぁ」と返事してやった。尻を蹴られた。くっすん。
芋よりも麦焼酎が美味しい夜だった。
だって、周りがイモばっかりなんだもん(うわー)。