アンドロメダ・コーヒー

 
 将来的には番号で呼ばれるだろう、プリゾニゼーションですこです。
 
 FOSSILのキャップはツバの辺りだけがエイジド加工されているんだけど、AMERICAN EAGLEのキャップはご丁寧に内側まで小汚くエイジド加工されているので、辟易しちまった。
 
 その内側のフチの汚れを見て、野球少年だった頃を想い出した。
 
 正確な年齢は忘れてしまったが、小学校4年生くらいから約一年間、ぼくは野球少年だった。特に野球が好きだった訳ではなくて、ただなんとなく入団したのだった。野球よりも、野球チップスが好きだった。
 朝練は早朝6時から、夕練は終業後と、結構なハードスケジュールだったが、子供は風の子なので辛くはない。辛かったのは、当時のスパルタ教育だった。
 
 監督が選手を集めると、選手たちは監督を囲うように体育座りで話を聞く。ある時ぼくは、見上げた監督の片方の鼻の穴に、でっかいイボがある事を発見する。ぼくはソレに釘付けになってしまい、監督の話はほとんど頭に入らなくなってしまった。
 毎回鼻の穴を凝視されている事に監督も気づいたのだろう、いつからかぼくに辛く当たるようになった。
 小学校高学年ともなれば生意気な盛りである。ぼくは監督に叱られながらも、心の中では「ケッ! このイボ野郎が!」と悪態をついていた。大人はそれを見抜くのだろう、風当たりは更に強くなり、ぼくは退団する事となった。
 
 あのイボ野郎、まだ生きてんのかな?
 死んでるだろう? 窒息死でな! hahaha!
 
 ちなみに、ロクに練習をしなかったぼくは「7番ライト」という、最低のポジションだった。大抵は俊足が1番を務めるのだが、その1番よりもぼくの方が俊足だった事を付け加えておこう。
 潜在能力はあれど、ぼくはもうチームの中では見切り品だった。なにより早かったのは、引き際だったってわけ。
 
 夕練の時、汗まみれの頭上には蚊柱が立っていた。
 ぼくのファンは、彼らだけだった。