さらば連休

 
 わたくし今日までお盆休みで御座います、ですこです。と書くと普通よりも一日多く聞こえますが、日曜からなので正味五日ですし、今度の土日はお仕事なので、むしろ少ねえ。どうせ毎日呑んだくれるだろうと思ってビールを買い込んでおいたんですが、連日の猛暑のせいですぐに温くなってしまうのでほとんど手つかずで、それに元来わたくしは『休日には酒を呑まない(呑めない)』という健気な質なんです。
 今夜も星を見てお祈りをしようと思っていると、soichikoから「お前んち行くから迎えに来いや」とメールが来て、渋々すすきのまで車を走らせると「焼き鳥テイクアウトしようや」と言って、ぼくは「このクソ暑いのに焼き鳥かよ」と思ったけど、逆らうとお金を巻き上げられてしまうので従うほかなかった。帰り道に寄ったコンビニ店員のお兄ちゃんがやたらと男前だったので驚いた。こんなに中心部のコンビニで、こんなに男前が働いていることが新鮮だった。世のホスト共を見てごらん。デコレイトするしか術がない失敗パンケーキだらけじゃないか。それに比べてきみは原石の輝きを煌々と纏っている。鏡を見る必要はない。きみは絶対に自身を見ることはできない。自覚とは錯覚であり、それをしたとたんに輝きは屈折して曇り始めるだろう――と考えながら彼を見ていると、彼はやたらと夜窓に映る自分のヘアチェックをしていたので、なんだか醒めてしまった。
 昼間の灼熱が木造のあらゆる箇所に蓄えられているのだろうか、我が家は夜になるにつれてどんどん暑くなってゆく。呑み始めに「今日は終電で帰るぞ」と宣言して未だかつてそうしたことのないsoichikoとの時間は、あっという間に〇時を超えた。すっかり酔ってしまったぼくは「どうせタクシーで帰るならWaltzに行こう!」と、クソ暑い家を飛び出すことを提案した。
 徒歩で行ったのか、タクシーで行ったのか記憶にないが(この時点ですでにやばい)、深夜にもかかわらずお店は激混みだった。それから朝までのおよそ七時間、具体的になにをしていたのかあまり記憶はないが、悪酔いしていたことは憶えている。
 BGMは〈吾妻光良&The Swinging Boppers〉だった。一部では評価の高いいわゆるミュージシャンズ・ミュージシャンで、ぼくの中で吾妻氏は国内最高のブルース・ギタリストであり、ぼくをブルースの泥沼にいざなった人だ。高校生の頃、すべてのロックはブルースを起源としていることを悟って、書店で手にしたのが吾妻光良著〈プレイ・ザ・ブルース・ギター〉だった。8cmCDとTAB譜が付いたその本には、ブルーズマンにまつわる大量の蘊蓄と愛情があり、読み耽っては弾きまくった。それまでいくつかのブルースを聴いてはいたが、それのどれもとは違って吾妻氏のプレイはめちゃくちゃに格好良かった。偉人のプレイを真似て紹介しているんだが、音は完全に吾妻氏のオリジナルだった。例えば、アルバート・コリンズはオープンDmチューニングというキテレツな調音だが、吾妻氏はそれをノーマルチューニングで弾いてみせる。そうなると、あの独特なサックスのような細かい音の余韻を残すためには、ハンマリングとプリングを駆使しなければならなくて、指も広くストレッチされなければならない。指弾きはゲイトマウス、パッキパキの音はコリンズの影響で、それらテキサスサウンドを踏襲しつつもオリジナルのスタイルを創り上げたところに、吾妻氏の偉大さが在る。
 

 絶版です。
 
 BGMを聴きながら「相変わらずパッキパキの音だなぁ」と聴き耽っていると、隣のANI氏が「吾妻さん、呼びたいなぁ」と言うので、無理でしょと言うと、「でもK師匠と仲いいじゃん」と言うので、だからってあんな大所帯呼んだら金がかかるよと返しても、「不可能ではない」としつこいので黙っていると、「お前からK師匠に言え」と言ってきたので、おれにそんな力はないですと言っても、「いいから言ってこい」と畳みかけてくるので、いやだね! と絡み酒。吾妻氏への古い想い出が錯綜して、なんだか熱くなってしまいました。ごめんなさい。でも、喚びたいっすねぇ。
 


 
 さきほど〈Waltz〉をネットで検索してみると、とあるブログに辿り着いて読み進んでいくと〈デスコ〉なる店があるらしいことを発見して、驚いた。お店の名前は〈desco〉で、しかも札幌、それもベ○シーホールというライブハウスと、ニャンニ○ン共和国という風俗店が入っている馴染みのあるビルに構えているらしい。
 google大先生で〈ですこ〉と検索してトップにくるのは、このブログである! なんの断りもなしに〈ですこ〉を冠するとはなにごとか! ゆるすまじ! こうなったら戦争しかない! ですこ戦争だ! ちきしょう! あんまり書くと宣伝になっちまう!