耳にタコ

 
 欲しい物は星の数ほどあれど、必要な物はヒトデの腕の数ほどで足りるだろう。三種の神器と、あと二つくらいかな。いやごめん、ヒトデを二匹にしていいですか。今はもうチャップリンの時代じゃないんだ! 赤貧時代が長かったぼくは、極貧から貧乏へとハマチのように進化して、ついには貯蓄をするようになった。そうは言っても一ヶ月間生活できる程度のお金を口座に残しておくだけで、それ以上はすべて遣いまくった。親友にもよく叱られた。そうしてぼくなりの物欲を極めてから、結局は、もぬけの殻だった。ぼくは本当のことを知りたいし、ほんとうに生きたい。本当に生きていける指針があるのならば、ぼくはそれに従って死んでもいい、という逆説はぼくの死を意味していて、結局はないものねだりなのかも知れない、という自堕落でしか人は生きられないのか、という浅瀬の地平で、たこ八郎は死んでいた。