ハードタイムだぜ!

 
 なんか最近ボケているですこです。やるべきことと、やらなければならないことと、やったほうがいいことと、やっちゃいけないこととがごちゃまぜになっていて、頭の中が痒いってことは、ぼくが今までいかに何も考えずに生きていたかという表れなんでしょう。
 あー、暇だけど多忙だなぁー。
 
 こないだJERRY"K○JI"CHESTNUTSのお店に遊びに行ったら「いやー、またスピーカー飛ばしちゃってヨー」って言うから、「もっとでっかいスピーカーの方がいいんじゃないの?」と言うと、「そうよ。JBLを注文したのよー」と言った。
 型番を聞けば4305だというので「じゃあおれの4312買ってよ」と言ってみる。もう十年以上のあいだK○JI氏には散々お世話になっているので、格安で譲ることにした。知らないヤツに高値で売るよりは、安値でも友だちに使って欲しい。
 律儀なJERRY "K○JI" CHESTNUTSは、ビールと酎ハイとバーミヤンの餃子とエビチリを持参して、我が家にやって来た。この辺がコージがコージたる所以である。
 
「おまえ、本当にいらねえのか?」
「うん、要らない」
「勿体ねえだろ」
「どうせ鳴らせないから、持ち腐れだよ」
 前日の酒が残っていると思われる出勤前のK○JIは、バッグから手帳とメジャーを取り出してなにやら計っている。そして横目で言うのだ――「餃子喰えや」
 それからCD二枚分、二人で呑む。
「うし! 買うわ!」
 ぼくは別に「ありがとうございます」と言う義理はないけれど、嬉しかった。なんだか恩返しができたような気になった。
「じゃあ明日、店に届けます」
「おう! よろしく!」
 
 それから数時間後、コージから電話――「欲しいんだけどさー、やっぱサイズ的にキビシイわー」
 ぼくは落胆しなかった。コージと二人きりで呑めたことが嬉しかった。
 売値? そんなことはどうでもいいんだ。
 
 世の中にはオーディオマニアが居て、その上限はきりがない。防音の地下室で鳴らす人もいれば、15インチのウーハーをまるでハンバーガーのように挟んで聴く人もいる。
 そういう人たちを否定するつもりはないし、実際ぼくもオーディオにハマったんだけど、「もういいや」というのが結論だな。当たり前のことだけど、ハードよりもソフトの方が重要なんだよ。サウンドよりもミュージック、ラジオから不意に流れたグッドミュージックに耳をそば立てるあの瞬間! 
 いいハードはいいソフトを知っている人に譲渡したい。べつに音楽だけの話じゃないぜ。
 
 ハードを手放して、もっと音楽を愛せるような気がするんだよ。ハードなんか、くれてやらあ! タダじゃないけどネ!
 
 
 あー、亀田2ね。見た、凝視。
 内藤のツラ見ればわかるけど、アウトボクサーじゃないし、あの階級ではハードパンチで、KO率も高い。打ち合って勝ってきた顔だよね。
「ガードが下手で顔がボコボコ」というのはまったくナンセンスで、ランカーでボコボコのやつはごまんと居るし、内藤が世界チャンプ、それも敗戦はポンサクレックのみであることを忘れてはいけない。あの顔でKO率が低いとただのタフマンに成り下がるけど、軽量級であの顔とKO率を誇っているということは、打たれ強さとカウンターの勘がいいことを表しているし、なにより経験ゆえのボコ顔だ。
 ぼくはとても不満だった。なぜKOできなかったのか。KOしなかったのか。アッパーとボディで確実に倒せたはずだ。
 当時、ボクシング界の華だった鬼塚の亀田寄りの実況は、もっと悲しかった。
 彼が現役世界チャンプになった後の台詞は、よく憶えている――「世界チャンプになったけど、なんにもないです。空っぽですよ」
 なあ鬼塚よ。おまえはお店をやって社長になった竹原と違って不器用さを売りにしてるようなきらいがあるけれど、おまえを信じた人間を裏切ってるということに、おまえは気づいていないし、たぶん気づかないだろう。だいたい鶴太郎がセコンドについた時点で終わったんだよ。彼はいまや自称ゲージツ家、おまえは他称評論家だ。
 おでんを熱がっている鶴太郎と、殴り合ってる鬼塚が好きだったね。ほんとうに大好きだったんだ。