オカマ野郎がオカマについて語ってみる

 
 水野キングダムを繰り返し観ている、お笑いジャンキーですこです。まじで病気かもしれない。しかもそんなに笑ってないし。なんていうのか、確認したくなるんだよね。面白くなる寸前の間とかを何度でも見たくなっちゃう。これは完成された漫才には当てはまらなくて、フリートークじゃないとだめなんだな。ジミヘンのライブ版を何回も聴くことと同じですね。
 で、やっぱり千原ジュニアケンコバの才能って図抜けてるんだよなぁ。ボキャブラリーが豊富で、そこからの取捨選択のセンスとスピードが素晴らしすぎる。この二人は仲が良いので絡むと抜群に面白いんです。あとは渡辺鐘がいい。というか、全盛期のジャリズムは神懸かって面白かったんだよ。確か十年くらい前に《豚ジャリズム》というビデオが出ていたんだけど、彼らは完成度を追求するタイプじゃなくて、ちょっとした思いつきでガーッとやっちゃうタイプだと思うんだけど、それが面白いんだよね。無数のアイデアで充ち満ちている渡辺鍾が、放送作家としても成功したのは必然でしょう。
 なんでジャリズムが解散したのかといえば、相方の山下が「おれ、吉本の社員になりたいんや」というトチ狂った発言がキッカケで、渡辺は特に作家を目指していたわけじゃなくって、仕方なく作家に転向したんだよ。
 で、山下は「社員にして下さい!」と吉本のお偉いさんに頼み込んだんだけど、すでに吉本は一流企業だったので「なに言うとんねん! なめんとんか!」と一蹴されちゃうわけだ。ほんと、ダメなやつ。
 で、無職の山下はしばらく松っちゃんに喰わせてもらうんだけど、いつか「再結成したらええやん」という台詞がキッカケでまた始めるんだけど、なんかイマイチなんだよね。
 で、渡辺は最近『世界のナベアツ』という、英国紳士風の格好をしたピン芸でブレイクしつつあるわけだ。
 
 世界のナベアツ - アホになります

 
 アホだなー。着眼点がいいし、小さいアイデアをちゃんとネタに出来るんですよね。やっぱり、一貫した才能があるんですよ。
 
 
「どんだけー!」の発祥は、『リンカーン』で放送された新宿二丁目のオカマたちなのに、なぜかIKKOが受賞して若干ムカツイた。なにがムカツクって、IKKOってたまに綺麗に見えるところがムカツクわー。お前、イケてんじゃねーか。
 現代では、オカマは市民権を得ているし、それはおすぎとピーコによる功績が大きいと思うんだけど、これだけオカマが認知されてくると、オカマであることしか売りがないクダラナイ芸能人が蔓延っていることに、そろそろ怒ってもいいだろう。
 昔は、おすぎの映画批評も、ピーコのファッション批評も、腫れ物を触りたくないがために受け容れてきたけど、オカマが認知された今となっては、中身の薄っぺらさを露呈することに終始している。差別がなくなると同時に、擁護も消滅しなければならない。
 芸も能もないオカマタレントに、ぼくはウンザリしている――と溜息を吐いていると、ある動画を発見した。
 
 はるな愛あややライブ」

 
 これ、ちょっと感動した。こんなに芸のあるニューハーフって、いままでいなかったでしょう。詳細はわからないんだけど、たぶん“彼”はトークも期待できるだろう。そういうオーラが出てる。年明けのダウンタウンDXに出演するらしいので楽しみです。
 そんなぼくですが、カルーセル麻紀は尊敬しています。ウィットだしね。あの人、モロッコで性転換手術をしたんだよね。で、性器の縫いが甘かったらしくって、自力で抜糸したら血みどろになったんだって。それも、モロッコの公衆便所で。どんだけー!
 
 昔のオカマって、差別をくぐり抜けてきたからなのか、尊敬に値する独特の賢さと強さを持っていたように思うんだけど、最近のオカマは文字通りオカマ野郎で、食傷気味です。
 
 たまにこう思うんですよね。
 オカマを例に挙げるとわかり易いんだけど、“彼女”たちはスナックのネーチャンよりもうんと面白いですよ。そこらへんの女よりも面白くないと、お客が来ないんですよね。
 で、閉店後のママが従業員を集めて指導をする――「みんな聞いてちょうだい。いい? わたしたちオカマは人を楽しませなくっちゃ、夢のオマンコどころかオマンマが喰えないの」
 従業員たちは、体育座りのままうなづく。
「金払いがいいのは疲れたおばさんたちよ。彼女たちは、私たちを貶めることでお金を払うの。それはわかるよね?」
 一人の男が立ちあがった。
「だからって、体のことを言われるのは我慢できません!」泥棒髭の新米が言った。
「うん。それを逆手に取って笑いにするのよ」
「そんなこと……できません!」泥棒髭はわなわなと震えている。
「スパーン!」ママの平手打ちが小屋に響いた。泥棒髭は女座りでへたりこんで噎び泣いている。それを無視してママが叫んだ。
「ゴタゴタ言ってんじゃねえよ! このオカマ野郎が!」
 しじまが訪れた。空調の音だけが頼りだった。
「よく聞けよコノヤロウ! あたいらは面白くなきゃ生きて行けないんだよ!」
 逆回転のドミノのように、皆の背筋が伸びた。
 
 カコン、とヘテロのバーテンがグラスに落とした氷の音が鳴り響いた。みなまでいうな、とステージの照明が点いた。
 バーボンをあおったママは、手を叩いてショータイムの稽古を促した。インディアンみたいな羽をつけた、インディアンみたいなマイノリティが、インディアンみたいに踊ってる。バーテンダーがうっとりと目を細めているとき、ママは隅っこで泣いている泥棒髭に歩み寄った。
 正座をして、耳掃除の体勢で、彼の髭を丁寧に剃ってやった。