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 酒量を減らすと眠くてたまらないですこです。すでに眠いぞ(20:18)。
 

横浜市旭区の自動車学校「大塚ドライビングスクール」に通う高校3年生の女子生徒 (18)にわいせつな行為をしたとして、神奈川県警保土ケ谷署は10日、強制わいせつ 容疑で同校経営者で亀井貫八郎容疑者(62)を逮捕した。
 教習中のナンバーを事前に外した上で助手席に乗っていた亀井容疑者は「運転が上手だね。(生徒の)自宅まで運転していいよ」などと言いながら女子生徒に道順を指示。女子生徒が指示どおり運転したところ、ホテル内に誘導されていた。亀井容疑者は女子生徒をそのまま 部屋に連れ込み、裸にした上で体に触ったという。女子生徒が必死に抵抗したため、亀井 容疑者は行為を途中で断念。怖くなった女子生徒は同容疑者と教習所に戻ったが、母親に相談。昨年12月13日に神奈川県警に被害を訴えた。

 
 なんというソフト・オン・デマンド、ぼくのコックから粘度のあるガソリンが漏れてきました。ちんこと妄想を膨らませて――
 
 
 志穂美艶子が通う学校も、冬休み明けから免許の取得を許可していた。父は最初、艶子の免許取得に反対していたが、助手席であれこれ指示を出すことで威厳を示したい気持ちもあった。その想いは日に日に膨らんで、いまではディーラーから取り寄せたパンフレットを見ながらニヤニヤしている。「うん、艶子にはポロがいいだろう」、そう呟いて枕の下にパンフレットをしまった。
 
 戸塚ドライビングスクールの入校を決めた理由は、まず料金の安さだった。安心オプションを全て付けても、他の教習所のエコノミーより安かった。妙な噂も耳にしたが、それはどこの教習所でもありえる話だった。
 待合室で座っていると、ぷんと嫌な匂いがした。「やあ志穂美さん!」目の前には亀田校長が立っていた。六十過ぎの小男で、古臭いタイトなスーツを着こなしている。丹頂チックで薄毛をまとめていて、その芳香が梅仁丹と混じってほとんど悪臭を放っていた。
「よろしくお願いします」艶子が会釈すると、亀田は満足そうに頷いて、意気揚々と車へ向かった。
「はい、まず後方確認! そしてキーを差し込む! いや、鍵穴に挿入かな? ぐふふふ」
 艶子はエンジンをかけた。
「そう。啼くだろ? 乗り物はすぐに啼きやがる。ぐへへへ」
 市街地に出て、左のミラーを確認すると、亀田と目が合った。
「ところで志穂美くん、どうしてAT限定じゃないんだ?」
「どうせならマニュアルも乗れた方がいいかと思って」
「ハハハ!」亀田は腰を上げて笑い、深く座り直してからレバーを引いて助手席を後ろに倒した。
「そう。乗り物は乗りこなさないとね! ハハハ!」
 艶子は、ミラー越しに亀田の入れ歯が少しずれたのを見逃さなかった。静かに窓を開ける。丹頂と梅なら耐えられるが、膿まで混ざると耐えられない。時折「チッ、チッ」と亀田が、歯茎から漏れる膿を吸い出している音が聞こえるたびに艶子は苛立った。
「よし、今日は特別にルートを変えよう。同じ所を走ったって上達しない。わたしの言う通りに進みなさい」
 到着したのはモーテルだった。黒い噂は本当だった。
 昼休みの営業マンが利用するような試写室つきのビデオショップみたいに、駐車場はトタンの塀で覆われている。フロントは介さず、そのまま部屋に直行できる仕組みだ。
「さっさと来い!」豹変した亀田は、乱暴に腕を引っ張った。
 古くて汚い部屋だった。赤いテレビ、薄いガラステーブルにでっかいガラスの灰皿、安っぽいステンドグラスがいたるところに張り巡らされている。
 亀田はいきなり押し倒して、耳にくちづけながら囁いた。
「判子が欲しいんだろう? じゃあまんこ見せなさい」
 いもむしみたいに夢中で股間を太腿に擦りつけながら、亀田は興奮していた。その鼓動の速さは艶子にもわかった。
 艶子は力を込めて亀田を抱きしめた。
 亀田は動きを止めた。三十秒ほど固まったあと、がばっと膝で立ちあがり「志穂美くーん!」と叫んだ。なぜか亀田は号泣していた。そのまま覆い被さって、痙攣を始めた。
 艶子は体位を入れ替えて、亀田の顔面に枕を被せ、その上に尻を乗せてしゃがんだ。そのままの体勢で、ベッドの上にある受話器を取ってフロントに繋いだ――「警察を呼んで下さい」
 
 初めて真っ赤なポロで駆った夜も、家の中はいつもと同じ光景だった。片手で鉄アレイを持ちながら料理を作る母と、指立て伏せをしながら夕刊を読んでいる父がいた。
 デザートのプロテインを飲んでいると、おもむろに父が切り出した。「ドライブに行こうか?」
 いつもは安全運転なのに、今夜はやたらと飛ばす。腹上死にとどめを刺した艶子も狼狽えるくらいの速度だった。
「このゴルフ、妙に速くない?」
 父はほくそ笑んだ。
「そのうちお前のポロと交換する羽目になるさ」