世迷い日記

 
 久し振りの飲酒で厭世主義に拍車が掛かる、佐藤です蛾次郎です。
 『大日本人』が観たいんだけど、いつまで経ってもDISCASの順番待ちで一向に届く気配がなく、特に観たくもない予約リストに入っているDVDばかりが届くことに閉口している。そろそろ解約どきかしら。
 仕方がないので『ショーシャンクの空に』という映画を観ることにする。かなり有名な映画らしく、評判もすこぶるよろしい。
 普通に面白かったが、騒ぐほどの映画だろうか。紋切り型のオンパレードで、都合の良い、先が透けて見える展開は興醒めだった。まぁ、それが映画というものなんだろうけど。
 一番よかったキャストは、ちらっとしか出ていない“真犯人”だった。あの歯茎のめくれ具合が憎たらしい。あー、あのホモ野郎もハマリ役だったぜ! チキショウ!
 舞台は1940年代の刑務所だが、その年代でもアメリカの刑務所は日本のそれに比べると遙かに自由だ。「ポスターの裏に穴掘って……ありえねー!」などとぼくは思ってしまい、ラストのカタルシスは不発だった。
 ちょうど同じころ、日本の刑務所には白鳥由栄という脱獄王がいて、彼の半生は吉村昭さんの『破獄』というノンフィクション・ノベル(記録文学か)に詳しい。四度にも及ぶ脱獄の手法も見物だが、戦後の混乱した時代背景や、白鳥の純粋な人柄など人間ドラマもきちんと描かれている名著だ。誰かこれを映画化しないかしら、と調べてみると80年代にドラマ化されいるらしい。主演は緒方拳――彼はそのころ「復讐するは我にあり」でも主演だったはずだ。
 これもノンフィクション・ノベルで、モデルは稀代の犯罪者、西口彰だ。原作は佐木隆三さんで(ぼくは彼のファンだ)、今はなくなった『新日本文学賞』を穫ってデビューした佐木さんは、その後に受賞した故・永山則夫元死刑囚と、故・見沢知廉とを合わせて一部では『御三家』などと呼ばれていた。無論、佐木隆三さんは犯罪者ではないが、相通じるものがあるし、本人もそう呼ばれることに抵抗を示さなかっただろう。
 そんなわけで、『ショーシャンクの空に』がとても薄っぺらく感じるのです。ぼかぁもっと業が見たいんだよ。人間の業をだよ。それにしても緒方拳はいい役者だねぇ。倍賞美津子はやっぱり格別に美しいなぁ。しかもおっぱい出してるし。おっぱいは重要です。出すことに意義があるんです。乳輪ピックです。おっぱいって、ホント、いいですね(晴郎)。
 結局、世界の犯罪のほとんどは貧困や経済的困窮が動機なんだけど、お金持ちでも罪を犯すことを考えていくと、人間の欲って途轍もなく強力なんですよね。食欲に始まって陰毛が生えた頃には性欲が股間からはみ出してきて、フルチンのまま他者との交流を求めて、にもかかわらずそこから抜きん出たくなり、さらに目指すは自己実現だけど、そんな醜い自己が実現したところで周りから見れば傍迷惑なだけで、結局のところマズローが言う自己超越なんていうのは絵に描いた黴だらけの餅ですよ。
 涅槃までいかなくても、ある種の平穏は必要だと思うんですよね。日曜午後のマイホームやイームズに囲まれた分譲マンションといった、欲に立脚した相対的なものじゃなくて、絶対的な静寂が必要だと思うんです。こんなことを書くと、宗教に熱心な人の折伏魂に火がつくと思うけど、ぼくは必ずしも宗教が平穏をもたらすとは思えないんですね。もっと違うものがあるはずです。それは確実に宗教の影響下(というか人類の叡智)にあるんだけど、湿っていないもっと乾いたなにかがあるはずです。それはなにかと訊かれたら答えることはできないんだけど、在ることだけは確信しています。
 たぶんぼくには経済学がごっそり欠如してると思うんですね。だから、今年は経済を勉強します。でも勉強は面倒なので、そこの経済に詳しい方、二人で焼鳥屋に行きませんか。もちワリカンで。ルピアで。
 やばいなぁ、世界。広すぎだろ。時間がないぞ!