Please Send me Someone to ホットサンド

 
 朝は苦手なんですが、毎朝ホットサンドを作り、食べております。
 ホットサンド用のパンとなると冷凍保存が出来ないので(一旦解凍しなければならない)、腐らすまいと無理矢理飛び起きています。
 毎日同じ具だと飽きてしまうので、以下を試しました。
・ハム&スライスチーズ
 これは定番ですが、じつはわたくしプロセス的なチーズがあまり好きじゃないんです。だったら作らなければいいんですが、二種類のうちの一方にコレがないと落ち着かないので、咽せ返りながら無理矢理食べています。
・タラモサラダ
 ぼくは明太子で作ります。男爵を使って、玉葱のスライスを少し入れてマヨーネーズで和えます。レタスで挟みます。うまい。
・タマゴサラダ
 これもレタスで挟みます。ぶっちゃけコレが一番うまいです。
・ツナ&タマネギ&キャベ千
 醤油味にした所為かイマイチでした。マヨで和えちゃえばいいんですが、それやっちゃうと他と被ってしまうんです。
 
 思案中の具は以下です。
『トマトソース&アボカド』、『納豆(挽き割り)&刻み葱&焼き海苔』、『こぼう天&クリームチーズ』、『リンゴ&シソ&マヨ』、『鮭フレーク&オクラ』、『キムチ&モッツァレラチーズ』etc.
 と無数に浮かぶわけです。
 こうして羅列していくと、朝起きてその味を確かめたくなるんですね。これはいいですよ。
 朝起きられて朝食も摂れるという、いわば「ホットサンド健康法」です!
 しかしですね、具は前夜に仕込んでおくので、冷蔵庫の中が所帯じみてきましたねぇ。タッパーや小瓶を買いに百均へ行きましたよ。
 マヨネーズと座薬しかなかったあの頃が懐かしいです。
 
 ぼくがどれだけ朝が苦手かと申しますと、まずは少年野球を辞めています。朝練に耐えられなかったんです。逆に言いますと、朝起きるほどの価値を見出せなかったということかもしれません。
 そのチームの練習はハードで、朝練を終えて学校に行って、帰宅後に夕練ですよ。もうクタクタで、やる気ゼロです。で、頭上を見ると汗の匂いを嗅ぎ付けた蚊柱がモウモウと集っていて「ギャーッ!」と逃げても、ふと見上げるとまた蚊柱が立っていたんです。「うわぁぁぁぁっ!」
 中島らもは夕暮れの黄昏に蚊柱を用いていましたが、ぼくにとっての蚊柱はホラーでした。
 
 それからもずっと朝は苦手で、高校時代などは午後登校が当たり前でしたし、なおかつ授業中はずっと眠っておりました。眠り姫です。
 滅多に起こすことのない英語教師が「ですこくん! 起きなさい!」と怒鳴ったので何事かとよだれまみれの阿保面を上げると、先生お得意の音楽ビデオを使用したヒアリング授業でした。前回はマイルスで、今回はBB.KINGが映っていました。
 この先生がギタリストであることも、ぼくがギタリストであることも、お互いに学校祭の演奏で知りました。先生はジャズで、ぼくはストーンズっぽいことを演っていました。ぼくは先生のジャズにブルースフィーリングを感じ、それは先生も同じだったと思います。
 テストの時も寝るという眠り姫っぷりだったので(白紙で提出)、先生に話し掛けるのは躊躇いましたが、ビデオのタイトルを尋ねると「んふふふ! 知りたいか!」と言うので「教えて下さい」と言ったのが嬉しかったのか、「白紙の答案は初めて見たぞ! だが君には“2”を与えてやろう。んふふふ! 内緒だぞ!」
 この人が担任だったのならぼくは毎日朝から登校しただろう、と思いました。
 
 タイトルをメモした紙片を持って、近所のレンタルビデオ店に行きました。昔から姉と兄嫁も常連だったので、ぼくもちょっと優遇されていて、制服姿でも無修正エロビデオを借りることができました。いま思えば犯罪です。
 その店は小さいくせに音楽系も充実していて、店長にメモを差し出すと「おっ! シブイね! あるよ!」と言いました。ダビングを頼むと、ダビング料金は要らないと言いました。そして、ついでに憂歌団のCDをタダで無理矢理貸してくれました。
 帰宅して正座で鑑賞しましたが、当時のぼくにはその良さが解りませんでした。
 
 それから数年経った19歳の頃、東京から大量の上質なマリワナを持ち帰り、煙をくゆらせながら無為の日々を過ごしていました。感受性が異様に高まっていたので、テレビでオリンピックの女子柔道を見ながらポロポロと泣いていました。
 そこで想い出し、件のビデオを再生してみました。
「解ったぞ!」と叫びました。
 ぼくは、あの時は解らなかったBBの演奏を、完全に理解しました。
 しかし、それが素面の沙汰ではないことも同時に理解していました。
 それは大きなジレンマでしたが、いつしか丸ごと忘却しました。
 
 とあるキッカケで、最近その映像をYouTubeで見つけました。
 観ました。
 あの時の感動が、新鮮に蘇りました。
 ぼくはあの頃からマリワナに勝利していて、BBとグラディスに完敗していたのです。
 

 
 
Please Send Me Someone To Love / Percy Mayfield
 
どうか、すべての人々に理解する力と心の平和をお恵みください
しかしそれが過ぎた望みで無いとしたら
この私にも愛する相手をお恵みください

どうすれば世界中が仲良く出来るのか、をお示しください
憎しみが去り、平和が訪れる様を
夜、横たわったまま寝つかれずこの世界を覆う争いについて考え
いつも同じ答えに辿りつく
人類がこの戦慄すべき罪悪と縁を切らない限り
この世界は憎しみの炎に包まれてしまうのだ、と
なんと恥ずべきことか

これが私の哀しみの理由だ
憐れみは要らない
過ぎた望みで無いとしたら
この私にも愛する相手をお恵みください