真面目が一番です

 
 某日、暑苦しい中、昼飯も喰わず仕事に専念する。我は労働者の鑑である!
 終業後、空腹で倒れそうになり、這々の体でスーパーへ寄る。
 野菜や果物を買い込み、玉子のコーナーへ行くと通路を挟んだ正面が鰻コーナーだ。
 生唾ゴクリ。人がそれを欲しているのではなく体が欲している、と聞く。
 中国産、一尾680円也。かなりでかい。
 ぼくが買った物はパックに入っていたんだが、串刺しの物は裸で置かれている。
 どれどれと覗いていると、黒くて小さい生き物がぼくの目尻から素早く消えた。
 何事かと目を追うと、その生き物が人気のない生理用品のコーナーに消えて行くのが見てとれた。
 背後から追ったのでは鉢合わせてしまうので、逆側から小走りで向かう。
 その生き物は、尋常じゃないくらい日焼けしているおじいちゃんだった。
 おじいちゃんは、鰻の串を貪り喰っていた。啜るように喰っていた。
 目が合った。その背後に、いつも巡回している店員を見つけた。
「ちょっとー! このひと鰻喰ってるよー!」と言おうと思ったが、やめた。
 あの尋常じゃない黒さの首筋から察するに、ホームレスの人ではないかと思われた。あるいは、日雇い労働からあぶれた老人だろう。
 ぼくは、未来の自分を重ねた。そしてこう思ったんである。
「そんなに腹減ってんならいいんじゃない?」
 確かに犯罪を見逃したんだけど、生理用品を目の前にして鰻を喰っている人間を咎められるほど、ぼくは立派な人間じゃねえ。
 まあぶっちゃけ、ぼくには関係のない話だった。
 さとうのごはんも一緒に食べれば良かったのにネ!
 
 中国産を毛嫌いしているぼくだが、鰻は比較的安全だと聞いている(検査が異常に厳しい)。
 レンジでチンだと芸がないので、中華鍋に割り箸を敷いて、その上に鰻を乗せて酒蒸しにする。このとき、鍋肌に鰻が付いてしまうと確実に焦げる。焦げた鰻は最高にまずいので注意されたし。
 ポン酒と、できれば紹興酒を少し入れたい。呑むとまずい紹興酒だけど、料理に使うと劇的にうまくなる。香りがパネェ。
 約二ヶ月ぶりに自宅で白米を喰う。鰻は限界までフワフワである。
 米って、おいしいな。
 
 あんまし関係ないけど、もし北京五輪で中国にいる人がここを見てたら、酒と漢方薬には手を出すべからず。これは絶対にやめたほうがいい。
 酒を呑むなら安酒(ビール)にするべきで、高級酒は“水増し”されている可能性が高い。五輪特需となれば尚更で、本当に水で増してくれればいいんだけど、変なところで律儀なのか、メチルを混ぜやがるので始末が悪い。
 近年、酒宴での日本人死者が増えているらしい。
 ちなみにメチルとエチルは混同しがちだけど、「目散る」と憶えておけば一生忘れません。
 漢方も、やはり高価な物はやばい。
 たとえば〈冬虫夏草〉を使った希少な漢方も、これまたアルコールと同じで妙な律儀さがあるのか、小麦粉とかでやってくれればいいんだけど、亜鉛とかで水増ししてるからね。
 まあ、薬も毒といえばそうなんだけど。
 って、この話は前にも書いたかな? 最近、記憶力が……紹興酒のせい?
 
 某日、久し振りに路面電車に乗って、ちよしさんとビヤガーデンへ。
 やっぱ電車ってもの凄く遅いのね……おまえら歩けよ。
 ビヤガーデンは激混みで座れそうもなかったので、西へ向かって〈K富士〉へ。
 焼き鳥屋のくせに鶏精を切らしているという豪傑っぷり。ぶた、もつ、塩辛、卵焼き、いか焼き。
 ちっこいコップで瓶ビール(サッポロ・ラガー)、ささやかな贅沢。うーん、やっぱ瓶ビールはうまいぞ! やっぱりうまいぞ!(佐川くん)
 次は東に行って油そば、芋ロック大盛り。
 次は南下して、とここから記憶が曖昧。
 三時就寝。なんか尻が痛い。どこかでてっ転んだか。
 
 翌日、寝坊、遅刻。起き抜けにカルピス一杯。
 悪びれる様子もなく出社。
「週一で休みがあれば寝坊なんかしませんぜ?」という逆ギレオーラを噴出させておく。まったく労働者の鑑です。
 そういや今夜はN村さんのライブだなぁ。行きたかったなぁ。
 
 はやくお盆になあれ!