誰もがわかる遅れた理由
シエスタもせず真面目に働いております。
某日、H田くんのライブ。ドラムはD輔。
T英とお互い自転車で待ち合わせて〈北の台所〉で落ち合う。
店主も交えて、中学生のようにオナニーの頻度について語り合う。
ちなみに店主は日に3回だって。おまえ中学生だろ。
だいたいいつもそうなんだけど、呑んでるのが楽しくて開演に遅れてしまう。
ゲスト扱いなので“モギリ”に名前を告げれば入場無料でございます。ありがとうございます。
入場すると、H田くんとは別の人が演奏していた。すでに一時間以上遅れているので、「もう終わったんじゃねえか?」と、T英と顔を合わせる。
タダで入っておいて「遅れちゃった」はねえよな、ということで言い訳のアイデアをお互いに捻り出す。
・すでに見終わったような顔で「やー! おつかれちゃーん!」
・ゼーハーと息を切らせながら「母親が肝臓癌の末期で」(これはT英の実話)
・素直に「オナニー談義が楽しくて遅れました」
考えてみればこういった店の場合、一部と二部が別れていたりする。ぼくたちが到着したのは、そのインターバルなのではないか。
近くにいた酔っぱらいを捕まえて話を聞くと、やはり一部が終わっただけのようだった。よかったね、ということで呑みあげる。
するといいタイミングでD輔が来たので、「どうだった?」と言わせる隙を与えずにギャーギャーと騒ぎまくる。さらにH田くんも現れたので「おつかれっすー!」と無闇に大きな声でご挨拶を。
うん、バレてない。完全にハコと溶け込んでいる。
二部が始まったが、奥まった部屋の隅でT英と呑みあげる。
H田くんはメジャー所属で、ナイスガイなんだけど、楽曲の良さという点ではレベルが低いと思う。端的に言えば、ツマラナイのだ。
付加価値として「ロハス」という売りもあるんだけど、ぼくが思うにロハスは現代の無頼だろう。ある種のいい加減さがないと説得力を持たない側面が必ずある。サイババはガン保険に加入しちゃいけないのだ。
H田くんとは3回会ってるので、彼のひととなりは少しだけわかっているつもりだ。
もの凄く真面目な男で、酒もあまり呑まない。唄もそこそこ巧いけど、それくらいなら掃いて捨てるほど居るレベル。
楽曲については、センスが古く、ひらめきがない。これはとても重要なことで、たとえばスリーコードのカントリーソングでも、その中に渾然と輝くひらめきを見出すことができる。
かつて〈ベック〉が売れた理由はそこに在るとぼくは確信している。ベックはワンコードやツーコードでもいい曲を作る。なんというか、風を起こすことができるんだ。
もちろん名曲を書いたからって売れるわけじゃないんだけど、なんだかなーとは思ったな。
いい人だし、ぼくも好きなんだけど、音楽となるとウルサイぜ。作品に人格は関係ないからね。ま、いいけどぉー。
そうそう、カントリーつっても何を聴いていいのやらわからないよね。お勧めあるよ。
ファースト・カントリー・ミュージックならこれがいい。非カントリー・ミュージシャンが演奏する、最高のカントリー・ミュージックです(オリジナルは1996年発売)。
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