クラッシャーズ・ダイアリー

 
 某日、捲り上げるのを忘れてしまい、自転車のギア(スプロケットではない!)に裾を引っ掛けてしまってバリバリと破ける。生地が異様に薄いのだ。
 今年の夏お気に入りのパンツだった。不可解な色のチェック柄に不可解な牛の銀箔がプリントされている、不可解なパンツだ。
 志茂田景樹じみたセンスを自分でも疑ってしまうんだけど、気に入ったものはしょうがないのでリペアショップに持ち込む。税別2,500円也、納期は一週間。儲かるのかしら?
 
 某日、修理に出していたDSが戻ってくる。一ヶ月近くかかったのは、任天堂の夏休みが異常に長いからだろう。いいナ。
 噂通り新品になっていた。しかも往復送料も無料ときたもんだ。タッチペンが増えたぜ。
 DSって主に子供が使うものだから、壊れることをある程度想定してるんだろうなぁ。だから直し易いように設計も考えてるんだろうな。
 この不景気の御時世にこういった対応は嬉しいなぁ。ぼくなんかファミコン直撃世代なんだけど、昔っから対応は良かったね。破損しやすかったコントローラーの四角いゴムボタンのリプレイスメントパーツも格安で売ってたし、その後プラスティックの円いボタンに変わったんだったっけ。で、その後はスーファミと。
 ぼくの場合、ファミコンの前は花札をやってたね。姉が麻雀とか花札が好きで、よく付き合わさせられたんだ。花札任天堂製だったなぁ。
 だからファミコンが家にきたとき、姉はすかさず〈麻雀〉を買ってたな。ちなみにぼくが最初に買ったカセットは〈ロードランナー〉だった。名前で選んだんだけど、パスルゲームだと知って愕然としたね。すっげぇ地味なゲーム。
 ぼくらの世代はかなーり任天堂に金を遣ってるので、無償修理は当然だよなー。
 
 某日、PCの前でやきそば弁当のスープを啜っていると、ありえない力加減でカップを滑らせてしまい(たぶんポルターガイスト)、キーボードの上に落下。すぐさま「ピーピーピー」と無慈悲なビープ音がPC本体から聞こえた。急いでケーブルを引き抜き逆さにして、タオルで拭き、ドライヤーを当てる。
 しばらく経った後にケーブルを挿してもダメだった。完全に基盤がイカレタようだ。とりあえず、キーに挟まっている乾燥葱をつまみ出しておく。
 物置と化している洋間を漁ると、キーボードの外箱やら一式が出てきた。保証期間もたっぷり残っている。LEDライトを当てて、再度乾燥葱をつまみ出す。
 某日、キーボードを持ってビックカ○ラへ行く。過失による故障なので、修理の見積もりを出しに出向いた。これ、結構高かったのよ。だから購入価格の半額程度で直るならそうして、それよりも上回るなら破棄しようと思ってた。
 いままで4台のキーボードを酒やらをこぼして潰しているので、もう安いやつにしようと、ついでに適当なキーボードも買うつもりだった。
 修理受付カウンターにいたオニーサンは、髪型が特徴的で、なんというか生まれつき形状が記憶されているかのような髪型で、要するに三田村邦彦みたいな髪型だった。
「どうされましたか?」と三田村さんが訊くので、「急に反応しなくなりまして」と言いつつ保証書を中指で押さえてすっと差し出すと、日付を一瞥した三田村さんは「うーん、問い合わせてみます」と奥へ引っこんだ。原因を訊かれないのが不可解だったが、そんなものは訊かれないに越したことはない。
 現れた三田村さんは「少々お待ち下さい」と言い残して、店舗の方に走っていった。
 戻ってきた三田村さんはキーボードを抱えていて、「同じのありました!」と息を切らせていた。ぼくは目を細めて、口元が歪むのを堪えた。
 ここで「え? いいの? マジで?」などと狼狽えてはいけない。ぶぜんでもふそんでもない、ニュートラルな表情を作っておく。いい、これでいいのだ。FILC○は3台目だし。I LOVE FILC○(の保証)。
 新品を手にして、さすがにこのまま帰るのは非道いと思ったので(正確には駐車料金を払うのが嫌だったので)、マウスコーナーを物色し、気になっていたロジクールの新製品〈MX518〉を購入しておく。もはや安いもんだ!
 
 いやはや、新品っていいですネ。