数に勝るものなし

 
 スニーカーの底が内側だけ異様に減っているですこです。
 そういう人いますよね。そういう人は100%内股で、大抵はハの字で歩いている事実は、以前、内股の同僚を尾行して底裏を検証した結果であります。なにやってんだろ、おれ。
 こないだ雪虫が大量発生しましてね。南の方に居たんですが大量っつってもハンパな数じゃなくて、どこぞの口を開ければ入ってくる蛍なんざ比べモノにならない位の、そうですね、1立方メートル辺り千匹くらいですよ。凄いでしょう? 天からごま塩降ってきたみたいに空中がチラチラしているので僕ぁ最初はどっかの工事で発生したチリが舞ってるのかと思って、ふと着ていたトレーナーを見ると雪虫が二百匹くらい付着していたんです。ビビったね、ホラーだね。しかも全員死んでる。なんだろこの生命力のなさ。トレーナーをつまんで引っ張って弾くと見事に全員跳ね落ちた。なんだろこの脚力のなさ(死んでるからだろ)。
 なんなんですかね、雪虫って。冬を告げる役目なのは解るけど、多すぎやしませんか。ネズミの集団自殺に似てなくもない。すぐ成長してすぐ死ぬ彼らの家系図は何GBで納まるのだろうか――
 
「ねぇママ」
「なあに? ぼうや」
「ぼくのおじいちゃんてどんなネズミだったの?」
「立派なおじいちゃんだったわよ」
「どんなふうに?」
生ゴミしか口にしてない貧しいネズミたちにチーズを配っていたのよ」
「へぇ、すごいや。どんなチーズだったの?」
「港まで出て貨物船に忍び込み、ヨーロッパまで渡って一流工房のチーズを頬袋に溜めて、そうして持ち帰ってきたのよ」
「ふーん。嘘くせぇなその話」
「そう、あだ名はビッグマウスだったわ」
「死のうかな?」
「うん」
「うん、て。とめろや」
「だってまたすぐ産むし」
 
 大量発生恐るべし。