バブルス

 
 早くも室温10℃、野菜室在住ですこです。
 ロト6が史上最高額の5億円キャリーオーバーだとか。売り場は17:30で閉まるので(ススキノ店ですら!)買いに行く時間がない。明日中には買わねばならぬ…mmmmm。
 わたくし、たまーに思い出したようにロト6を買いますが、かすった事も御座いません。しかし毎週、2億円を手にしている人が居るわけですから、その人たちはその後どうしているのかが非常に気になります。
 誰にも告げずコッソリと貯め込んでいるのか、豪遊放蕩狼藉の限りを尽くして遣いきってしまったのか、仕事も家族も捨てて独り蒸発したのか、うまい棒を2千万本買い占めたのかetc。
 2億円ものアブク銭を持っている人は、カネ目当てで殺されても全く不思議じゃないので、当選者はまず己の身を守る事を考えるはずです。誰にもバレない、なんて有り得ませんし、なにより最初に銀行にはバレている訳です。この御時世、銀行なんざむしろ疑ってかかる方が賢明でありますし、公を含む全ての機関には情報を売る内通者が必ず居ることも周知であります。
 2億ものカネを、例えどんなに散らしても短期間の内に全て銀行へ預ける事は不可能に近い。あなたの手元には必ず現金が残っているはずだ。あなたは既にその現金をはした金と思っている事だろう。だが傍から見れば充分な大金、あなたの後始末はその現金でやればいい。後は吊し上げ、蜜と鞭で吐かせるのみである。このように、相手は必ず先手を打ってくる。肉片をミクロまで砕いてくれる、法外な報酬を得た砂利採取場は、深夜の稼働を惜しむはずがない。
 
 深夜、いつもよりも硬く感じるベッド上でカネの遣い道を夢想していると(ベッドは新調する事に決めてある)、外で話し声が聞こえる。明かりを消してそっとカーテンをめくり覗くと、明らかに怪しい車が数台停まっている。いつもなら「っつたくウルセーな!」とやり過ごす処だが、勘ぐりは既にあなたを支配している。全ての他人、いや知人すらもあなたを狙っている。
 2億を10人で割ると一人あたま2千万になる。いや、一人1千9百万にして、外部の人間に1千万渡して殺害を依頼しよう。例え大金を手にしても自分の手を汚すのは厭なモンさ。拳銃はそうして爆発的に普及したんだから、いや、核が最たるモノ、だがね。
 そんな妄想を連日徹夜でしながら、極めて注意深く外出する。腹が減ったのだ。コンビニで唐揚げ弁当とカツゲンを買い、コマ送りで部屋へ帰還する。いつもなら残さず食べる塩味のスパゲティは、なんだかヤケにしょっぱいので捨てる。しかもカツゲンは甘ったるい。
「旨いステーキが喰いたい。一日二回喰うんだ。同伴とアフターでな。ケヘヘヘ」
 不意にチャイムが鳴る。厭なトーンだ。ゆっくりと忍び足でドアの孔を覗いた瞬間、あなたの脳味噌は散乱した。古いぬいぐるみみたいに座っているあなたをよそに、男たちは携帯で連絡する。
「やりましたぁー」
 そう告げるとすぐに箪笥を下から開けて現金を掴んで素早く立ち去った。
 泡を吹いているあなたの意識は、まだある。アブクって怖いな、と吹いた。
 
 
 書きながら怖くなってきました。