入り口も出口もお大事に

 
 右手親指の爪の辺りが、傷をキッカケに新しいホクロを創造しそうな気配を感じて、不気味な恐怖を感じているですこです。
 
 先日、やっと歯医者が終わったんである。
 昨年四月末から先日まで、実に八ヶ月にも及ぶ通院歴である。一ヶ月サボったので実質七ヶ月だが、それでも長い。
 毎朝出勤前の7時から、それはそれは辛かった。
 春夏秋はまだいい。十一月辺りからの早朝はめちゃんこ寒いんである。
 起きる気がしなくて予約の変更をしたのはたぶん三回ほどであるから、わたしは真面目な患者に属するであろうし、先生もそうおっしゃってくれた。
 そんな長い通院歴であるから、フィナーレは、ハグ等を織り交ぜた感動的なシーンになるかと思いきや――
 
「先生っ! 長い間ありがとうございました!」
「え? うん」

 と、極めてそっけないラストだった。ちょっと殺意。
 
 思えば、最初は耐えきれなくてイキナリ駆け込んだのだった。それまでは痛みのあまり毎晩ロクに眠れず、いよいよ我慢できずに飛び込んだ。
 わたしは開口一番「抜くなら帰る」と宣ったのだった。
 しかしながらレントゲンを見ると、素人でも解るくらい進行していたので、その歯については甘んじるが、他の歯は「抜かないでくれ!」と再度告げたのだった。
 その発言の所為で、治療期間は延び、わたしは毎朝電気針による苦痛に耐え忍ぶ事となった。
 その治療法は、本来抜くべき歯を抜かずに、歯に穴を空けて根の方にある病んだ部分に針で微弱電流を流して、文字通り根気よく治療してゆくという方法だった。
 あまりの苦痛に「もう抜いてくれ!」と思ったが、先生は燃えているし、吐いた唾を呑むわけにもいかないので、わたしは泣きながら耐えたのだった。
 電流は15〜30分間流される。その間、口は開けっぱなしである。開けっ放しだけでもちょっと厭なのに、そこに電流ですよ。それも毎日! しかも前歯、こりゃ辛かった。
 だが、終わってみるとやはり抜かなくて正解だったと思う。抜歯という行為は、もの凄くヘコむし、歯と一緒に小さな魂も抜かれてしまったような感じがする。
 
 歯医者にはマメに通った方が絶対に良い。
 床屋感覚で通えば、ほとんどの虫歯は未然に防げるだろう。顔を剃るのなら、歯石も取り除くべきである。
 超音波歯ブラシでゴシゴシ磨くよりも、手動で磨いて三ヶ月に一度検診してもらう方がよっぽど有意義であるし、安上がりだ。
 
 これを読んでる諸君、今月中に歯医者へ行きなさい。白い歯で新年を始めなさい。
 保険証がない人は、友達に借りなさい。わたしは以前そうして、淋病を治した。
 大島くん、その節はありがとう。泌尿器科の判が押された保険証を嫁に見られて、喧嘩になったんだっけ。
 僕は元気でやってます。