回転享楽

 
 ラブハンドルですこです。
 先ほどテレビで面白いローカルニュースを見ました。
 
『ショータイムなどと称してステージ上で女性の裸や着替えを見せていたとしてススキノの風俗店が公然わいせつ容疑で摘発されました。
 逮捕されたのは、札幌・中央区の風俗店従業員・門間秀正容疑者(31歳)とアルバイトの女子大学生らあわせて8人です。門間容疑者らは女子大学生らを使って、ステージ上から不特定多数の客に裸や着替えなどを見せていたところを他の従業員と、実際にステージに立っていた女子大学生ら5人とともに現行犯逮捕されました。摘発の際、店内には客が40人ほどいました。
 店が許可を受けていたのは個室での性サービスだけでした。個室型の風俗店を公然わいせつ容疑で摘発するのは道内では初めです。』
 
 
「プッシー・キャット」という店の名前を聞いて吹き出しました。こないだヒロ吉さんとgoodridgeさんがウチへ来たときにこの店の話をしていたのでした。
 プッシー・キャットはススキノでは非常に有名な店で、ネーミングの良さも手伝って大半の札幌在住の男性はその店名を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
 わたしなどは高校生の時から知っていて「大人になったらいつか行ったるゼ!」と、先っちょをテカらせておりました。そう、老舗なのです。
 
 随分むかしの話ですが、確かわたしは2度ほどプッシー・キャットに行った事があります。20代前半、風俗でヌイて貰った経験はまだなかったハズで、ubuな頃です。
 その頃は、いきなりヘルスに行く勇気は(というか作法か)まだなく、とりあえずキャバクラに行こう、などと友だちと頻繁にキャバクラ通いをしていました。
 大抵の場合、小さなスナック→もっと女の子が多いところ→ちょっとエッチなところ、といった具合に、欲望はハマチのように出世してゆくのであります。
 先ほどの記事で「店内には40人」と書かれていますが、店はそんなに広くありません。つまり寿司詰め、かなり繁盛しているのです。
 事実、わたしは何度行っても一時間待ちとかで、なかなか店へ入る事ができなかったと記憶しています。店の前に客引きがおり「系列店がありますヨ」と言うので付き従って行くと、そこはまったくエッチな店ではありませんでした。
 後で聞けば、客引きはプッシー・キャットとはなんの関係もなく、席が空くのを待っている悶々とした客を狙っていたのです。そんなコバンザメが出現するくらい、知名度と人気のあるお店なのです。
 
 そうしてトライ&エラーを繰り返してるうちに、ついにお店に入ることができました。まだウブだったわたしは、店に入るやいなやとても驚きました。
 楕円状のカウンターの中にいる女性が全員おっぱいを出しているのです。内装や什器はいたって普通のバーといった趣きなのですが、フツーに乳が出とるんです。
 これには驚きました。念願の透視能力が身に付いたのか、などと勘違いするほど、店内に違和感はありませんでした。極めて自然に接客し、当たり前のように乳を出していたのです。
 しかも女の子のレベルは意外に高く(乳効果もあるだろうが)、ボッタクリの雰囲気は皆無です。最初は目のやり場に困りましたが、夜目が慣れるようにわたしは品定めを始めました。
 すると突然、音楽が大きな音で鳴り始めました。BPM120くらいのハウス調の曲で、それに合わせて男の店員が「ソォレソレーッ!」などとマイクで絶叫を始め、照明がめまぐるしく色を変え始めました。
 
 イッツ・ショウタイムであります。
 
 楕円状のテーブルの外側には、ちょうどゾウリムシの周りの織毛のように男性客が整頓して座っています。たしか30人ほどだったと思います。
 数人の女の子は裸足でテーブルに上がり、目の前で座って男の両手を掴み上げ、自らの乳房にそれを当てて揉みしだいています。
 その一行は順番ずつ、徐々にこちらへやってきましたが、乳房に触れても不思議と興奮はなく、その感触は二人羽織のように実感のないものでした。
 二巡目は、確かおなじように陰毛を“触らせられた”と記憶しています。一人、ヤケに毛が硬かったのを憶えています。その娘の眉毛の周りがヤケに青かったことも。
 それが終わると今度は、奥に設けられた黒幕が垂れたところに、男性が順番に仰向けに寝そべっていくというものでした。
 仰向けの男の顔の上に、股を広げた女の子が順番に秘部を見せていくというわけです。やはり興奮はなく、思い切りスニッフしましたが匂いもなく、ちょっと生温かいだけでした。
 
 およそ30分くらいのショウタイムが終わり、照明が点き、なにごともなかったかのようにさっきのような乳出しバーへ戻りました。
 すると“いかにも慣れた感じの客”がボーイを手招きで呼び、耳打ちを始め、女の子と二人で店の奥へ行きました。わたしは「はは〜ん」と合点がいきました。そうして女の子を選んで、別室にて別料金で性的サービスを受けるのです。
 女の子はたしか6人くらいでしたから、6/30です。こうなると早い者勝ちで、耳打ちはもはや絶叫に近くなっていきます。
 徐々に女の子が減ってゆき、ついには一人になりました。しかし時が経てもその女の子にお声は掛かりません。おっぱいは、丸出しです。
 わたしは言い得ぬ哀しみを感じました。残25人の飢えた男たちの面前で、乳丸出しにもかかわらず選ばれない、というこの悲しみ。
「ブチの位置が変だから」と売れ残って、ペットショップのボスになり果てた成犬の悲しみに酷似しています。
 しかし女の子に悲愴感はなく、慣れた様子でジョッキにビールを注いでいます。わたしのジョッキは空でしたが、おかわりを頼むことはできませんでした。彼女は腫れ物だったのです。
 数十分後、別室にいた女の子が店へ現れました。そしてすぐにまた別の男と消えました。
 腫れ物は、煙草をふかしながら楕円の真ん中で佇んでいます。気怠くも勢いよく上へ吹き出された煙は、選ばれなかった悲しみよりも、キャッシュバックが貰えない苛立たしさをよく表していました。
 
 わたしたちは五千円ほどを払って店を出ました。
 友だちの一人は悶々とした様子で、もう一人は呑み足りない様子でした。
 わたしは煙草に火を点けて、勢いよく夜空へ吐き出しました。
 煙が大気に交わって消え去ると、遠くでさっきの音楽が鳴り始めました――。
 
 
 書き忘れましたが、ショウタイムの前にビンゴゲームがありました。カードを配られ、番号にマルをつけるという、いたって普通のビンゴゲームです。が、通常のビンゴとは違い、この店では揃った際に「ビンゴ!」ではなく――
 
「おまんこ!」
 
 と言わねばならないのです。
「そういうルールであり、そう言わなかった人には景品は差し上げられません」と事前に説明もありました。
 脂ぎった野郎どもが雁首並べてビンゴシートにマルをつけています。ゾウリムシよりも愚かな画です。
 しかし、わたしはいち早くビンゴしてしまったのです。
 揃ったことは黙っておこうと思いましたが、隣の友人がわたしのビンゴに気づいて「あ! 揃ってる!」と叫びました。
 わたしは意を決して
 
「お、おまんこ!」
 
 と挙手しました。
 以下の画像がその時に頂いた景品の小銭入れであります。
 

 
 見づらいかも知れませんが、確かに「プッシー・キャット」と書かれているのが判ると思います。
 わたしはこのレアな小銭入れを、長い間大切に仕舞っておいてあったのです。
 数分間探しましたが、年金手帳の横にありました。