唇伝

 
 女系天皇には反対なですこです。
 競馬を例えに出すと、フェミニストに殺されそうですが、血統とは元来そういうもので、キンタマの系譜であります。こればっかりは仕方がないと思うんですね。
 
 妊娠した事が日本中に知れ渡ってしまう、当人たちはじつはとっても厭なはずだ。
 むかし、「天○はセックスの仕方を担当者に直接教わるらしいゼ」などという下世話な噂が広まったが、大人になったいま思っても「はたしてどういった経緯で性交のやりかたを知るのだろう?」という疑問は尽きない。
 まさかエロトピアは読むまい――。
 
 
担当官(聡明な老婆)「ではまず殿がベッドに仰向けで寝て下さい」
殿「はい」
官「姫は殿の横にお座り下さい」
姫「はい」
官「リラックスして下さい。では姫、まずはおもむろに殿の乳首を吸って下さい」
姫「はい」
官「殿、どうです?」
殿「不思議な感じが致します」
官「くすぐったいですか?」
殿「はい」
官「やめて欲しいですか?」
殿「…いえ」
官「素直でよろしい。では姫、空いている手で逆の乳首もコリコリしましょう」
姫「はい」
官「殿、いかがです?」
殿「フーッ(鼻息)」
官「よろしい。姫、一度やめて下さい。では交代しましょう。された事を同じくしてあげればよろしい」
殿&姫「はい」
官「これを前戯と呼びます。中華でいうところの下味です。わかりますね?」
殿&姫「はい」
官「舌ごしらえは重要なのです」
殿「手間暇は報われるという事ですか?」
官「その理解でよろしい。では一旦やめましょう。姫、殿のパンツをおろして下さい」
姫「はい」
官「殿のイチモツはどうですか?」
姫「いきり勃っております」
官「あたたかいですか?」
姫「真冬の馬みたいに湯気が立っております」
官「それをどうしたいですか?」
姫「……」
官「聖なる営みを恥ずかしがる必要はありません。さあ、どうしたいのです?」
姫「む、むしゃぶりつきたいですっ!」
官「ではそうすればよろしい」
姫「ハフッ」
官「殿、いかがです?」
殿「非常にぬくいです」
官「なにか物足りなくはありませんか?」
殿「…言われてみれば何かが足りません」
官「よろしい。姫、空いた手でキンタマを転がしましょう」
姫「う゛ぁい」
官「姫、殿のイチモツから何かが出てきましたか?」
姫「はい」
官「なにが出てきましたか?」
姫「トロ味成分が出てまいりました」
官「それはカウパー氏線液と呼びます。俗称は我慢汁です」
姫「我慢…ですか?」
官「あなたはその汁を嫌いますか?」
姫「いえ、特に忌まわしくは思いません」
官「よろしい。貴女は筋があります。さあ、交代しましょう」
殿&姫「はい」
官「殿、姫の股ぐらはどうです?」
殿「鍾乳洞のようです」
官「グロテスクですか?」
殿「それ以上に神秘的です」
官「よろしい。では豆状の突起物に舌を当てて下さい」
殿「はい」
官「触れるか触れない程度でよろしい」
殿「難しいです」
官「では、突起物から電流が流れていると仮定すればよろしい」
殿「電流…ですか?」
官「9Vの角電池を舐めた時をイメエジしましょう」
殿「こうですか?」
官「よろしい。姫、どうです?」
姫「体が熱いです」
官「この先、どうしたらよいでしょう?」
姫「……」
官「殿はどうしたいと思いますか?」
殿「……」
官「よろしい。鍵が掛かったドアを、あなた達はどうしますか?」
殿「開けます」
官「鍵がないと開きません」
姫「鍵を探します」
官「鍵は殿が持っています」
殿「鍵穴に鍵を入れます」
官「よろしい。わたしの役目は終わりました。わたしは去ります」
殿「待って下さい。わたしたちはこれからどうしたらよいのですか?」
官「考える必要はありません」
姫「ヒントを下さい」
官「ヒントも要りません。電気を消して、わたしが去ればよいのです」
殿&姫「……」
 
 老婆は部屋を出たあと、ドアをそっと開けて二人の営みを窃視しています。レゴブロックで城を造り始めたのを確認して、クスクスと笑いながら自分の部屋へ戻りました。
 淹れたてのお茶をすすり、机の上にある夫の遺影を見ながら、老婆は股間を熱くしました。
 
 遠くではオオカミが啼いています。