感電しながら沈没してゆく極東の舟

 
 尺です子と、ころがしです太です。
 
 電気用品安全法が四年の猶予期間を経て、この四月から本格的に施行される。
 PSEマークのない電化製品を売った場合、最高で法人では1億、個人では100万円の罰金だとか。
 現在所有しているPSEマークの無い製品を使うぶんには全く問題ないが、不要になった際にソレをリサイクル・ショップに売ることは、事実上不可能になる。
 個人売買ならば罰せられないので、売りたい人は自力で売りさばくしか方法はない。パソコンを持っている人はヤフオク等で売ることが可能だが、できない人は“捨てるしかない”のである。所有か破棄しか、選択肢はない。
“売ると罰せられる”この法律で最も困るのは、いわずもながリサイクル・ショップだろう。
 特に、古いほど価値が上がるオーディオ機器や電源を搭載した楽器類などの製品を主に扱っているショップは、首吊りモンだろう。
 オーディオ&ギター&ベースなどのアンプ類、CD&レコードプレイヤー、シンセ、それほど古くないゲーム機の本体&アダプター(までもが!)etc.、いままで価値があるとされていたモノたちが一瞬にしてゴミになる。つまり、趣味人の楽しみがゴッソリと奪われることを意味する。
 ギター本体やスピーカー、ゲームのカセットなどは対象外なのがせめてもの救いか…。
 こう嘆きながらもわたしは「ショップは三月一杯で在庫を叩き売るに違いない!」と、睨みに睨んでいる。今まで30万円だったマッチレスのギターアンプが10万円で買えるかも知れない…グフッ…グフフフ(そういう問題じゃないだろ)。
 わたしが思うにこの悪法が成立した所以は「普通の人にとっては関係がない」からだろうと思う。
 壊れたら買い換えて、それが売れなければ棄てちまえ、という法律である。それはつまり「消費の促進」を意味している。この不景気にだ! アホか!
 施行は2001年で5年後の本格始動、この数年でいかに日本が不景気になり、いかに政治家か先を予見できていなく、現実を見ていないかが判るってもんだ。
 なにがエコだ。なにがリサイクル法だ。なんたる欺瞞!
 
 そう書きながらも、リサイクル・ショップ店頭での風景を見て、わたしはたまに不可解に思う。
 以前、会社のデスクを入れ替えるとき(言っとくがおれはブルーカラーだ!)、古いスチールデスクの処分方法はわたしが受け持つ事となった。
 車で国道を走れば、下品な配色で「オフィス中古用品」と掲げた看板は沢山ある。タウンページで調べて電話を掛けた――
 
「机を処分したいのですが」
「どのような机でしょう?」
「スチール製のが3つほどです」
「買い取りはできませんが?」
「タダで構いません」
「はぁ? むしろ手数料が掛かりますよ?」
「な、なにおう?」
 
 わたしはそこで電話を切った。
 あの店頭に並んでいたオフィス家具類は、全て“二重取り”していたのだ。わたしはそれ以降、リサイクル・ショップを見る目が変わった。
 例えば引っ越しの時、「不要な大型家具は無料で破棄いたします」というのは全部嘘で、その足でリサイクル・ショップに“業者価格”で売っているに違いない。
 店の前でおもむろに洗濯機をホースでジャブジャブ洗ったり、家具の埃をエアーコンプレッサーで払っているのを目撃すると、わたしの推測もあながち間違ってはいないと思いますが、みなさんはどう思います?
 ゴミをゴミとキチンと呼ばずに、恩着せがましくせせこましい二重取りの小汚い商売してんじゃねぇやい! このクズが!
…コホン、少し興奮気味で失言してしまいました。お許し下さい(だったら消せよ)。
 まぁでも、虫唾が奔るリサイクル・ショップってのぁ、案外沢山あるっちゅーこっちゃ。ケッ! 唾ぺっぺ!
 そんな店で中古品を買うべきではないし、今回の法律はむしろ「電化製品以外」に適用すべきだったのではないか? 消費を促すのなら尚更であるし、安全かつ健全である! バカ!
 なにより“技術者が修理をしながら、保証付きで製品を売っている優良店”までもが淘汰されかねないこの法律は、やはり悪法である。
「電化製品に愛情が湧くはずがない」と嘲笑うひとは、同時に、モノに愛情を注ぐ人に嫉妬をしている。そのクセ『継続は力なり』などとのたまいやがる。十八番は、破棄の人間が、だ! 嗚呼、あたまが痛い!
 
 官僚に詩人が一人もいないことが、この国を住みにくくしています。これは間違いないと思います。