BLUE MONDAY
アップル通信ですこです。
リンゴをパカッと真っ二つに割ると、ちょっと猥褻な切り口で、なにより蜜が溢れていて、でもその蜜はいうほど甘くなくて
と、ここまで書いていると母から電話が。
身内からの電話はイヤなものである。この歳になるとロクな知らせがない――その懸念は的中した。
「はい」
「元気かい?」
「ああ」
「仕事は忙しいの?」
「繁忙期だよ」
「兄ちゃんも忙しいって」
「で、なによ?」
おれはすでにちょっとイヤな空気を感じていた。ボヘミアンの姉がまた失踪でもしたものだと思った。もしくは母の知人の死か。
「明日から入院することになったの」
「…え? なんで?」
「癌になったの、舌癌」
「エ…エェェェェェッ!?」
と、おれは心の中ではとても驚いたが、口から出た声は「マ…マジぃ?」と、自分でも情けなくなるほどの表現力の無さだった。
とにかくえらいこっちゃ! なのだ。
と、ここまで書いていると姉から電話が。
「ねぇ…」
「聞いたよ」
切ってすぐに兄から電話が。
「なあ…」
「聞いたよ」
本州にいる姉兄は、離れているぶん心配の度合いも高いようだ。
母との電話を切って、おれはすぐにネットで「舌癌」を調べた。初期ならば9割は治るそうなのでさほど心配はしていない。なにより彼女はもう30年間くらい同じ巨大市立病院に勤めているので、環境的にも恵まれている。
ただ、リンパへ転移しているのならマズイかも知れない。母は以前からリンパが弱いのだ。
覚悟はしておかなければならない。病院はウチの近所なので、いつでも見舞いには行けるのが救いである。
「もっと静かで広いところ」なんて引っ越しを考えていたが、実家に帰ることになるかも知れない。姉兄はおれにそれを望んでいるだろう。そんな電話だった。
前回のラジオの放送中、母の家出の知らせを聞いたヒロ吉の瞳は潤んでいたが、いまのおれもたっぷり潤んでいる。左朴全みたいにブルブルしている。
みなさん、親が元気なうちに親孝行はしておいた方がいいですよ。