知ってる血だらけ

 
 実働2時間ですこです。
 今日は兄と甥が来札する日なのに、タイミング悪く夕方からお仕事。水曜の夜はちょっと…、と予め伝えてあったので、18時で上がらせて頂く。申し訳ない。
 車で病院へ向かう。検査の結果、腫瘍はやはり悪性だったらしい。悪性の度合いや転移についてはまだ解らないそうだ。遅いね、巨大病院ってのはさ。
 兄と甥を乗せて、市内北の外れに位置する親戚の家へ行く。十数年ぶりに行ったのだが、不思議なもので道順はバッチリ記憶していた。ちなみに叔父はめちゃくちゃに怖い人で、どうみても堅気には見えない。
 前もって甥に吹き込んであった――「いいかい、ともちゃん? 家に着いたら“お腹空いたー、お寿司がイイ”と言うんだよ?」とね。
 そうして寿司を御馳走になる。文字通り、魚が旨し。タダなら尚更、うまし。親戚一同集合する。幼児は全部で四人、すさまじい音量。子供というのは出会ってすぐに、磁石のようにマブダチになるのだな。
 22時、爪楊枝を咥えて親戚宅を出る。今度は東の外れに位置する実家まで彼らを運ぶ。車内、甥は疲れ果てて眠ってしまい、兄と二人で会話をする。
 兄と二人、このシチュエーションはおそらく22年ぶり、二段ベッド以来であろう。気まずさはなかったが、なんだか不思議な感じがした。おれはもう大人なのだな、と少し淋しくもあった。まったく女々しい感情だ。
 兄は甥を抱きかかえ、おれは荷物を背負って実家へ入る。兄も疲れている様子だった。
「じゃ、帰るわ」
「おう。あんがとな」
「煙草はちゃんと消すようにね」と、母がおれに言う科白を、そっくりそのまま言っている大人のおれ。
 24時帰宅。兄と甥を泊めようと、大事なギターは全てハードケースにしまって洋間に置いてあった。Guildだけを引っ張り出して、ポロンと弾いてみる。
 静かな部屋に響いたまるい音は、今日を総括してくれた。今日は、いい日だった。