おれはシューゲイザーさ

 
 財布がパンパンですこです。ほんの一瞬、だけ。
 

 給料日なのです。わたしの会社は変わっていて、わたしの給料はわたし自身で算出し、わたしが記入するのです。未記入の給与明細も、源泉徴収税額表も、会社ではなくわたしの部屋にあるのです。会社には『表のコピー』があるのです、しわしわの。
 無論、万単位以下でちょろまかす事は充分に可能ですが、わたしはそれを一度もした事がありません。当然と云えば当然ですが、そこはやはり人間、「今月は厭な仕事があったから五千円アップじゃい!」とかの身勝手な考えはたまに湧き起こりますが、思い留まります。
 それは“会社からの信用を得ているのだから”と云うよりも、“会社は、わたしがズルをする処を目撃してわたしを糾弾するつもりなのだ”と、わたしは考えます。わたしは、叱られたり肩身の狭い思いをするのが大嫌いなんです。もう、死にたくなるんですね。ですから、考えようによっては、会社はわたしのそういった特性を見抜いているのかも知れません……そうは考えにくいがね! 面倒くさいだけだろ! おう!
 
 そんな訳で、四月ですから給料が上がったのです。みなさんも毎年昇給するのでしょうかね? わたしの友人などは昇給なんかはなくて(そのぶん手当があるでしょうが)、子供が産まれた時の扶養手当が月額500円だった、という事を聞いてビールを吹き出してしまった。しかも三人も居るんですよ。わたしは子供が居ないのでよく解りませんが、そんなモンなんですかね。
 
 去年の四月、わたしは「昇給はないのですか!」と、強気にせがんだのです。
 それを望んでいたのではなく、「今年は昇給はない!」と一蹴されれば、わたしは「では、辞めます!」と言うつもりだったんです。
 でも社長は「…じゃあ、三千円」と言ったので、わたしはガックリしたのです。上がるんかい、とね。本来は喜ぶべきことなのに、おかしな話ですよね。でも本当にそうだったんだ。
 
 だから今年は、黙る事にしたんです。
 すると社長が「明細、書いたか?」と訊くので、「いえ、まだですが」と答えると、「二千五百円上げといて」と言ったので、わたしはまたガックリしたのです。
 
 わたしは年度末、会計ソフトに会社の全てを打ち込んでいるので、会社が苦しいのは知っているのです。わたしを解雇して、また新たに人を雇えば会社は潤うはずなのです。
 だが会社はそれをする気配はない。わたしはとても生意気で、仕事は効率よくこなすけれども、それは「早く帰ってここから逃れたい!」その一心で、でも会社から見れば「こいつは使えるヤツだ」と見えるのだろう…てのは少々思い上がりかもな。
 
 お給料を頂戴しているのにこんな事を書くなんて、おれはひどい社員だな。忌まわしいヤツだ。
 だが本音さ。カネは確かに重要だ。だがね、カネのためだけにこの先三十年も働き続ける自信が、まったく無いんです。
 人生というのかな、生きるというのかな。いい歳こいて、いつもこんな事を考えているしょうもない人間だよ、おれは。