尖った出る杭に肛門性交されちまえ

 
 下川こう史(しもかわ こうし)の著作は面白いぞ、ですこです。“こう”の漢字が出てこない。耳へんに火がつくりのヤツ。ATOKよ! しゃんとせい!
 
 16歳の少年が、気晴らしのために老人を殺した事件があった。
 ぼくはこの事件を、朝のニュースで知った。その番組は、いままでは峰竜太が司会だったのだが、この春から極楽とんぼの加藤に替わっていたので度肝を抜かれたね。思い切った起用だ。まあでも実権を握っているのは、以前から出演していたテリー伊藤だろがね。加藤の素人っぷりが初々しく結構面白いので、ぼくは30分早く起きるようになった。
 で、先のニュースを放送している時に初老のコメンテーターが出演していた。テロップを見ると「福島章」と出ていた。以前に『犯罪心理学入門』を読んだのだが、顔を見たのは初めてだった。まあ、何の変哲もない爺さんだったがね。著作の内容も然りだったさ。
 とは言っても、氏は古くから心理学、それも犯罪心理学を研究してきた権威なので、ぼくは正座をしてコメントに期待をした。で、やっぱり何の変哲もないコメントだったのさ。
 司会者が一新されたのなら、コメンテーターに村崎百郎でも招くべきだと思うがね……無理だな。
 
 先日も、少年が同級生の少女を殺害した事件があったばかりなので「最近は少年による凶悪犯罪が増えている」と思われがちだが、実際はさほど増えていないし、戦後間もない頃の方が現在よりもずっと多い。増えて見えるのは、情報網の発達によるものだろう。
 もちろん、戦後と現在では動機が違うが、少年による凶悪犯罪は短絡的であることは、いまも昔もあまり変わっていない。
 むかしとの差異は、コメとユメの違い程度で、ちょっとはみ出ているだけさ。
 
「なんの理由もない殺人」てのは、あり得ない。それは怨恨だったり、痴情のもつれであったり、不遇ゆえの爆発だったりする。
 老人を殺した少年には、妹に対する執拗な暴力癖があったそうだ。家族構成は祖母、母、妹で、父はいないようだ。
 特筆すべきなのは、その妹がまだ4歳だという事だろう。
 少年を持て余した母は、彼を寮付きの学校に追いやった。転校後、間もなく事件を熾したって訳だ。
 12歳下の妹は、彼と血が繋がっているのだろうか? というのがまず一つ。
 完全な血族ならば、彼は妹に嫉妬をして暴力を振るっていたのだろう。こういった子供じみた感情は誰しも経験があるだろうが、普通は十代半ばともなるとそういった感情は消沈していく。
 
 ぼくにも、10歳下の女の子の親戚がいた。その子が1歳くらいの時で、ぼくは11歳くらいだったかな。
「ちょっと買い物に行ってくるから、この子を看ててね」と言われ、彼女と二人きりになった。ぼくは、逆毛が立つような、凶暴な感情に囚われて、その子の太腿の内側を思いっきりつねってやった。火がついたように泣き始めて、自分が泣かせたくせに、自分であやし始めた。幼いながらも「ぼくはちょっとオカシイ人間だな」と思ったものだ。
 数十分後、叔母が帰ってきたが、紫色の傷を負った乳幼児が泣き止むはずもない。ぼくは咄嗟に壁掛け時計を外し、幼児のそばに置いて、叔母にこう言った。
「この時計が落ちて、この子に当たったの」
 叔母は奪うように幼児を抱きかかえ、ぼくを睨み付けた。
 それもそのはず。外した時計には、十年物と思われる埃が沢山積もっていたのさ。
 
 加害者の彼も、あの頃のぼくと同じような感情を抱いていたのではないかな。そのままの状態で、最後の安息である家も追い出されてしまったのではないかな。庇護をするわけではないが、辛くて淋しかったのだろうな。もし種違いだったのなら尚更だろう。
 だが、関係のない老人に矛先が向いたのは、やはり謎だ。いや、まったく謎でもないな。彼と老人は初対面ではないのだから。
 つまりこの事件は、単純な無差別殺人ではない、ということだ。
 
 離婚率が増えて、性を謳歌し、社会的地位を確立する女性も増えている。それは素晴らしい事だ。でも、だったらハナっから子供なんか作らなきゃよかったんだ。別に女性が悪いと言っているんじゃない、男はもっと悪いさ。
 少子化社会、夢のない男とサプリメント中毒の女、孤独のうちに野生化してゆく子供たち、それでいて寡黙なアンファン・テリブル
 
 酒だ、酒が必要だ。