フランチャイズと毛細管現象

 
 牛乳を漉して水滴を垂らすテクノロジーがおぞましい、ですこです。
 ホルスタインも農作物も畸形ですから、そこから更になにかを試みようとする人間は、般若とひょっとこを高速で行き来する、ペラペラの異形です。
 
 以前、高熱を出した時に家から一番近いサンクスでおかゆを買って食べたのだが、ぼくは本当は冷凍うどんが食べたかった。使い捨てのアルミ鍋に入った冷凍うどんは意外にモチモチしていて、実はなかなかに旨くてバカにできない味なのだ。この事実は、確か以前に“ためしてガッテン”でも放送していて、冷凍うどんに優れたモチモチ感があることが科学的にも証明されていたはず。同じタイプの商品でラーメンもあるが、これは頂けなくて、うどんに限るのだ。
 お目当ての冷凍コーナーに行くと、うどんはおろか、冷凍庫の中身は空っぽだった。パンのコーナーに行ってみると、パンが一つも無い。あるものといえば、缶詰やスナック菓子などの日持ちしそうなモノばかりだった。
 界隈には、サンクスを含め全部で4つのコンビニがあるが、ぼくがよく行くのはセイコーマートだ。道外の人は知らないだろうけど、限りなくスーパーに近いコンビニである。そろそろファミリーマートと提携するはずで、そうなると道内ではいずれトップシェアを誇るだろう。
 
 セイコーマートはユニークなコンビニで、以前はチープなコンビニの代表選手だったが、最近は自社ブランドの牛乳や卵などの、所謂“日配品”が充実していて、しかも安価である。少し前に世間では卵の値段が高騰していたが、セイコーマートの卵はスーパーよりも安かったんですよ、奥さん(おれは遣り繰り上手の主婦か)。
 他にも、ジュースや缶コーヒーなども自社ブランドで展開している。コカコーラよりも三割程度安くて、でもその安さの所以を懸念してなかなか食指が動かないのだが、飲んでみると意外と美味しい。
 特筆すべきは、弁当コーナーに焼きそばが105円で売っている事だろう。
 ぼくは、スーパーではバーコードエラーを発見する天才なのだが、セイコーマートのソレはエラーではなかった。105円ですよ? 需要があるのかって? 絶対にある。UFOよりも安くて、UFOよりも不可解なのだから、買っちまうだろ。
 煙草をカートンで買った場合のおまけは、普通は百円ライターかごみ袋だが(3枚程度)、セイコーマートは箱ティッシュもチョイスできる。やはり自社ブランドのティッシュ。これは嬉しい。セイコーマートは、独り暮らしに優しいのである。
 そして最大の長所は“酒が安い”ところに尽きる。
 つまりセイコーマートは、独りモンのアル中にとってはオアシス兼駆け込み寺なのです。
 
 話が逸れた。
 くだんのサンクスは、やはり潰れていた。夜にコーラスウォーターを買いに行ったのだが、翌朝には看板が無かった。夜中に看板を撤去していたのだな。
 上階にはオーナーが住んでいたと思われるスペースがあったのだが、カーテンが無くなっていた。夜中に越したのだな。
 オーナーは、五十代と思われる夫婦だった。天然の茶髪な奥さんと、掛布みたいに禿げていて、手の甲が剛毛な旦那。ちゃきちゃきしている嫁と、背骨が曲がっている旦那だ。『宮川大助・花子』を連想してくれればいい。
 ぼくはそのおじさんが結構好きだった。物腰が柔らかくて、なんか哀愁があってさ。容姿は違うけれど、ブラジル人の男性みたいだったんだ。ブラジルの男って、哀愁があるでしょう? 彼らほど、夕日を背にする構図が似合う人種はいないと思うな。
 夫婦は、どこに行ってしまったのかな。ひょっとしたら充分に金が貯まって勇退したのかもな。
 
 ぼくの友人も、セブンイレブンのオーナーをやっている。夫婦で、2年目かな。
 一年以上も会っていないが、こんど行ってみよう。どうなっているかは、想像がついている。
 店舗のすぐ隣には焼き肉屋がある。そこに行って話が出来ればいいな。
 骨付きカルビだけは頼むまい、と心に決めているおれさ。