虎狼日記
獣ですこです。以前、『おつけもの』を変換したら『乙獣』と出た事があります。小ボスです。スーパーマリオで云うところのハンマーブロスです。
仕事を早めに切り上げて、ガレージでタイヤ交換をする。軽のクセに16インチの5穴なので結構面倒くさい。ウォッシャー液を入れてオイルチェック、ワイパーも替える。北海道はやっと春なのだ。
母に電話をする。
「もしもし」
「ジンギスカン、喰いにいかない?」
「…ハァ? どちらさん?」
「おれだよ、おれ」
「ああ、あんたかい」
「ジンギスカン行こうや」
「…誰と?」
「おれとだろう」
「ふ、二人で?」
「一人よかマシだろ」
「どういう風の吹き回し?」
「快気祝いだよ」
「ヒィィィィッ!」
「驚きすぎだろ」
「お金なら貸さないわよ!」
「そうじゃねぇよ」
「…わかったわ、あんた病気よ」
「……」
「わたしは精神科に異動になったからよく判るのよ」
「なんの病気だよ」
「解離性と虚偽性の合わせ技よ」
「重度じゃねーか」
「DSMくらい読みなさい」
「新訂版は持ってるぜ」
「あ…あぁぁぁぁっ!」
「今度はなんだよ」
「あんたが甘い言葉を発する時は、いつだって悪事の罪滅ぼしだったわね!」
「昔の話だろ」
「今度はなにを!? マリワナ? ハシーシ? ヘロイン? シャブ? エクスタシー? MDA? MMDA? TMA? DMT? PCP? ケタミン? ヤヘイ?」
「随分と詳しいし、発音がシブイぜ」
「貴方は麻取りックスに目を付けられてもう逃げることはできない…観念して自首する前に最後の晩餐としてわたしを誘ったのね…そうでしょ!」
「Vシネマみたいな推理だな。まあとにかく50分後に迎えに行くよ」
実家に到着。
「これ、あげる」
「一升瓶…しかも金箔入り。どうしたのよ?」
「正月に貰ったんだ。おれはポン酒を呑まない」
「…ウソおっしゃい! 盗んできたのね? ふじさか商店からパクってきたのね!」
「もういい加減、読者も飽きてきた頃だと思うよ」
「そうね」
そんなわけで、ジンギスカンの発祥と名高いツキサップじんぎすかんクラブに行ってきました。松紳ゴールデンで梅宮辰夫が紹介していた店だったと思います。
八紘学園という農業専門学校が所有する広大な敷地内にあり、抜群のロケーションで、夏などは野外で食べる事ができるようだ。ただ、羊を見ながら食べるというのはいささか悪趣味だが…。
全部で500席ほど、かなりデカい。肝心の味は、なかなかに旨かった。切り込みの入ったジンギスカン鍋に七輪、不味いはずがない。ちなみに一人前の量はかなり多い。
だるま、札幌ジンギスカン、ひつじやetc.、もうここまでくると優劣ではなく、好みの問題になってくる。ススキノ界隈の名店との決定的な違いは“子供連れでも来られる”ことだろう。道外からの客人をもてなす時にビール園(サッポロビール園が一番よい)が喜ばれるが、ビールは美味しいが肉がイマイチなのだ。その点、この店は肉が旨いのでお勧めです。家族連れでワイワイやるといい。
二人で二人前、ビール×3でおあいそ。肉も多くておにぎりが付いているのでかなり満腹だ。会計時のレジ前。
「あんた、ホントに払うの?」
「もちろん」
「じゃ、アレも」
母がさした指先の向こうには『ソフトクリーム300円』との文字が。
「…喰えるのか?」
「別腹ぐへへへ」
助手席で、パンダの赤ちゃんみたいにペタペタとソフトクリームを舐める母。
飼育係の休憩時みたいに煙草をふかすおれ。
再度、実家に到着。
「これ、貰ってくぜ」
「なに?」
「ボジョレー・ヌーボー」
「これも持って行きなさい」
「なんだこれ?」
「マグロの山かけよ」
「日持ちするのか?」
「今日中に食べなさいよ」
「ヒィィィィッ!」
そんな、野獣親子の一日。