棲息日記

 
 ダニとノミの違い、ですこです。前者が将棋の歩ならば、後者は馬。前者の血族があらゆる環境に適応したのは歩だからであって、床や壁を這う事もなく飛び乗るしか術がない後者は、より依存度が高いが故に、適応能力は低い。
 それは我々人類も例外ではない。出生率が死亡率を下回った、というのは依存が原因に他ならない。依存する機会が増えればそれだけ出生率が減るのは当然である。それはまた平和の証と同時に、鬱屈の発露でもある。均等がとれている時には、大衆は興味を示さないが、それが崩れた時に興味を示し、汗ばんでくる。どうですか、ぼくとイッパツやりませんか(こらおっさん)。
 
 引っ越しをするべく色々と探しています。雑誌ならば「CHINTAI」が有名だが、客寄せなのでアテにならない。リクルート発行の無料情報誌ならばいわずもがなであります。
「イキナリ不動産屋に飛び込んだって、良い物件がみつかる訳がない」と言ったのは、かつて大手不動産で店長をやっていた友人です。先に書いた客寄せの話も、彼が言っていた台詞でした。ちなみに店長の主な仕事は「早朝5時から電柱のチラシ貼り」だとか。
 力のあるオーナー、多くの物件を持っている"お得意さん"の空き部屋を優先的に紹介する訳だから、イキナリ来た客は飛んで火に入るナントヤラであります。
 しかしながら、あの強引な、独特で軽薄なノリで紹介された物件を頑なに拒み続ける根気があれば、「オトシ物件」という取って置きを、彼らは懐に隠してあるのです。「勿体ぶりすぎて逃がすくらいなら成績を上げた方がいい」と、痺れを切らす訳です。
 ですから、例えば夫婦ならばBig Mama Thorntonのような強力なビッグママを同伴するべきです。同じ事は、中古車を買う際にも云えましょう。どちらもよほどの目利きでなければ、単独での行動は避けるべきです。
 
 最近はネットでも物件を検索できるのですが、札幌に限っていえば最も充実しているのは日本地建のサイトでした。
 CHINTAIのサイトは使い易いくて良いのですが、多数の不動産屋が同居しているだけに、やはり客寄せの感は否めません。その点、各社の自社サイトに載っている物件は、横流しを回避できるので力も入っています。ですがいかんせん、見づらくて使い難く、無駄に重い。僕は光回線ですが、それでも重い。
 これだけネットが普及しているのに、見づらいというのはいかがなものかと思います。よく、TOPにダサイFlashを載せたりしている法人サイトがありますが、二度目の来訪から邪魔で仕方がない。これだといくら回線を太くしても無意味でしょう。
 消費者のニーズと自分たちが売りたい物とを、より早く的確に合致させる事がネットの醍醐味なのに、それをしようとしない。
 店舗を設計してレイアウトやらを考えるよりも、サイトを構築するほうがうんと簡単なのにそれをしようとしない。消費者の利便性よりも、どうも制作者のエゴ寄りなんだよなー。jpgが重すぎるぜ、4色ならgifがベストだろ。そういうエゴは趣味でやればいいのに。勿体ない、せっかく良い物件持ってるのに。
 
 結局は自分の足で探すのが最善です。雑誌には載っていない番地までの住所や建物の名称、外観の写真がネットには案外載っていますから、現地まで足を運んでみるのが一番です。
 今日はめぼしい中でも第一候補の物件まで足を運びました。ここは恐らく不動産を介していないので、直接交渉をするべく管理人のチャイムを鳴らしましたが、残念ながら不在でした。帰りに界隈を探索しましたが、最高の条件です。言うことなし。また今度足を運ぶつもりです。三顧の礼であります。
 もう一つは、以前から唾を付けていた非常に魅力的な物件でしたが、いかんせん家賃が高い。払えないことはないけれど、きつくてそのうち鬱屈してしまいそうなので、それならば引っ越しの意味がない。でも興味本位で行ってみました。
 駐車場にイエローの《フェラーリ》が駐まっていました…セレブ気取ってんじゃねぇ、って事でそそくさと逃げ帰りました。でもそこまで高級な物件じゃないぜ。つーか、フェラーリを青空駐車ってどうよ?
 
 肉屋のショーケースに、生きた鶏が数羽。
「大将、この鶏ちょーだい!」
「はいよ!」店主は手早く、屠る。
「大将、そこの部位ちょーだい」
「はいよ!」素早く捌く。
「ぽんぽちも!」
「はいよ!」
「あんがとよ」
 家を建てるというのは、こういうことかもなのかも知れない。
 

 客が戻ってくる。
「大将、忘れもん!」
「なんです?」
「さっき堕ちたトサカもちょーだい!」
「はいよ…何に使うんです?」
「建前」