コケティッシュな被り物

 
 うんこが臭くない、ですこです。パンダの赤ちゃんと同じく、檸檬の匂いがします。これは嘘です。
 
 最近は自転車に乗る暇はありませんが、食事療法は続けております。サラダボーイであります。もうしばらく、家では肉類と炭水化物は摂取しておりません。野菜果物のみ、気分は中村めいこであります。

 こうして毎日野菜を食べておりますと、以前に紹介したドレッシングには飽きましたし、アレはさほど美味くはない、と思うようになりました。しかしながら、サラダに粉チーズを振りかけると非常に美味である事を学びました。植物性と動物性の和解であります! 拍手! イエイ!(往年の夜ヒットばりに)
 
 賢者は、家畜を殺さずに乳を搾るが、さらなる大賢者――つまりド変態――は獣姦をしたりする。ならばいっそ殺してくれと、ぼくが家畜ならそう言う。
 
 それで思い出した。
 たまにはシモネタもいいでしょ。牽制なんです、ぼくにとっては。
 
 
 以下は、或るベテランAV男優の武勇伝であります。
 
 いつものようにスタジオ入りすると、なにやら騒がしい。それに、現場がちょっと臭い。
「はっはぁ〜ん。アレだな、北斎のアレみたいに活ダコでも使うのだろう。そりゃスタッフだって気持ち悪がるさ、hahaha!」と、一人合点した。
 ガウンを羽織ったまま歯を磨きつつ「今日はちょろいナ。帰りに、お土産に寿司折りでも買っていこう。タコを追加でな、hahaha!」などと、考えていた。
 
「じゃ、お願いしまーす!」とADが発した、軽薄だが元気のいい声に即されて、部屋のドアを勢いよく開けると、その白いベッドの上には一羽の茶色い鶏がいた――闘鶏である。
 彼はア然として周りを見渡したが、すでにカメラは回っている。
 膝で立っている、さっきのADが両手で掲げているカンペには「さあ行け!」と般若顔で書かれている。
 彼もプロである。狼狽えるはずがない。
 ゆっくりと慎重に、シャモへ近づき、別種の求愛をブリーフ一丁で試みる。当然、彼女は激しく逃げる。辺りは羽毛だらけだ。なんなら糞だってある。それでもかまわず、彼は仕事に集中した。
 数時間後、彼は、仕事をやり遂げた。コツコツ突かれた額は、血まみれである。
 遂行までの途中、家族の顔が浮かんでは、泪で消えた。
 
 スタッフ一同の拍手喝采が起こった。堪えて漏れたトランペットから温泉が吹き出したかのような、爆笑と涙の渦だった。そこに嘲笑は、いっさい無かった。
 彼は不思議な満足感に包まれて、やっと煙草に火を点けた。
 すると、何事もなかったように、さきほど愛した彼女が首を前後に揺らしながら、紫煙の中を堂々と横切った。
 
 その頭部にトサカがあった事を、彼は初めて気づいた。