mrng来襲!

 
 残業上がりの左官屋ですこです。なんか蟹みたいに左腕だけめっちゃ太い、和製COBRAです。
 
 土曜。
 mrng氏が来札中とのことなので、「じゃあみんなで真夏のちゃんこでも行きますか、アラ、イイデスネ!」って事で21時待ち合わせ。
 時間を持て余したのでヒロ吉とビアガーデンへ。なんとヒロ吉、ビアガーデンは初めてだってー、バカー。
 
 
 
 これで中ジョッキ、720ml。焼き鳥は不味くて高い。小ジョッキを追加して待ち合わせ場所のススキノへ。
「少し遅れます」とmrng氏から連絡。紳士なぼくらは黙って待つ。しばらくすると目の前でウロウロしている女性が。豹柄のベストに赤パン、目立つように気を遣ったmrng氏に違いない。
 
 
 
 いや違う。こんなに太ってないし、なによりこんなにオバサンじゃない(六十歳くらい)。
 遅れること30分、mrng氏現る。ジェントルメンな我々は「ヤァヤァ」とにこやかに迎える。ぼくは帽子を深く被り直して、こめかみに浮かんだ青筋を隠した。
 残念ながらちゃんこ屋は改装中だったので、ヒロ吉の案で寿司へ変更。
 本格的な、高級そうな寿司屋である。個室が空く気配がないのでカウンターへ。三人、それも初対面でのカウンターは、良い席とは言えない。必ず端のどちらかが余るし、それを回避するためには真ん中の人が忙しくなることは必至だ。。
 mrng氏はやはり心優しき人で、終始首を左右に振ってほとんど電動こけしだった、さぞかし疲れたことだろうと思う(しまいに首がポトンと床に落ちたので、こっそりごはん粒でくっつけておいたのはここだけの話)。
 分不相応の高級寿司屋の所為か、食指が動かずあまり食べられなかった。
 会計はヒロ吉が払った。>先に言ってくれればもっと食べたのに!
 
 二件目は、旧友の店へ。ヒロ吉が「できればあいつには会いたくない」などとワガママを言うので、「じゃあ面が割れていない君が偵察しておくれ」とヒロ吉を諭す。
 どうやら今日はこの店には居ないらしいので、「じゃ、ソファの席で」と店に入る。
 普通は逆である。オーナーの旧友が居なかったのなら、引き返すのダ! なんという蛮行!
 というかね、ヒロ吉くん。あの従業員は絶対にぼくらの行為を密告るよ。ぼくが悪者になっていることは間違いないのだよ! いやん!
 思ったよりいい店だった。また利用しよう。
 終電まで呑んでmrng氏を地下鉄入り口まで送る。
 mrng氏は、律儀にも我々二人にプレゼントをくれた。それもかなりヤバいブツである。
「粉々に砕いてカミソリでラインを引いてスニッフすれば、スコーン! とクル」アレだよ、わかるだろ? ご丁寧にオサレな入れ物でカモフラージュしてある。ヤバいゼ!
 
 mrng氏はハキハキした、目ん玉に深みのある人だった。
「それって本名だよね?」と訊くと
「いいえ、飼い犬の名前です」と言う。
「犬に人間の名字って、ヘンじゃ?」と訊くと
「mrngって名字はありません」と言う。
「mrng製菓があるじゃないか」と問い詰めると
「あれは森本さんと永島さんの共同出資会社です」と言う。
「本当?」と訊くと
「たぶん!」と言った。
 ぼくは「嗚呼、この人の成分中に天然果汁が20%はあるナ」と思った。
 mrng氏はなおも続ける。
「"m"と"r"(rとnだったかな)の間が可愛くないですか?」
「……」
「絶対かわいいですよ!」
 ぼくは、「嗚呼、このコの脳味噌の20%はチョクフレークでできているナ」と思った。
 さらに驚いた事に、mrng氏の実家は、我々の地元と激近なのだった。我々の地元がいかにスラムであるかを説明したが、こればっかりは朝まで語っても語り尽くせまい。
 
 
 その後、ヒロ吉と二人で徘徊したのだが、思い出すとムカムカするので割愛させていただく。