ぼくの不幸は愉しいですよ

 
 並べて比べて、ですこです。
 
 来月から、給料がおよそ二割減になる事が決定した。以前から予測はしていたものの、急に言われたので「本当ですか?」ではなく、「マ、マジかよ!」と社長に言ってしまった。語尾に付けるべきの「バカヤロゥ!」はさすがに呑み込んだけれど。いま思えば「マジッ子マジマジ?」と言えば良かった、と後悔している。
 二割ってデカいですよ。ぼくの場合の二割は9万円ですからね。嘘ですからね。しょっぱい嘘でごめんなさいね。
 
 さて、どうしてくれようか。
 正直、減給は来年からだと踏んでいたが、それは根拠のない希望的観測だった。考えてみれば来月は九月である。四月に続いて、人間が最も動く月と云えよう。秋の心で《愁い》とは、よく言ったものだなぁ……そんなにうまくねーよバカヤロ。
 減給の理由は、ぼくが担当していた仕事が無くなってしまったからだ。会社の恩恵で額面の7割を毎月頂いていて、それがゴッソリ無くなったってわけだ。代わりに当然、イレギュラーな労働時間は減るわけだ。つまり、収入は減るけれど自分の時間は増えるってこと。
 
 こういった情勢に対する態度の選択肢は、じつは沢山あるという事に、ぼくは気づかねばならないのだろう。
 
 辞職もよし、転職もよし、フリーもよし(ぼくの場合の《フリー》は浮浪者を意味する)、社長に肩叩き券を法外な値段で売りつけるもよし(社長がホモの場合はフェラチオ券、アナル券はゴールドの菊をあしらったプレミアムバージョン)、完全営利遂行の犯罪もよし、空いた時間を読書するもよし、音楽鑑賞もよし、好きなだけギターもよし、死ぬまでオナニーもよし、トンコツラーメンみたいな悪臭を放つ雨に濡れた野良犬を抱きしめるもよし、なんかたまにはスカートめくりもよし、早朝の住宅街でロケット花火もよし、店員がアフロヘアのラーメン屋にスチールウールを持ち込んでクレームをつけるもよし、チャーシュー麺のチャーシューのみを食べ残すのもよし、カウンタックにヒップアタックもよし、代議士に生卵もよし、たまには空き缶を蹴飛ばすもよし、公園でワイセツな形のけん玉で寄せ付けた園児のおやつにフリスクもよしetc.
 
 そう、おれは自由なんである。バカヤロ。
 
 以上、もはや高級酒に成り上がった《発泡酒》を呑みながら考えてみる。もう、この高級酒を呑むのは最後かも知れないナ。
 
 友人諸賢、これからはぼくに酒をオゴッて下さいネ。