お金が動いて電車は止まる

 
 二日間外出をしていない、和製カスパー・ハウザーですこです。
 
 世間はmixi上場で盛り上がっていまして、現在の時価総額はなんと2200億円だとか。株の事はあまり知らないぼくでも「ちょっと高すぎじゃねーの?」と思うなぁ。一夜にして一流企業と肩を並べるほどの価値が生ずるなんて、有り得ないじゃない?
 ぼくもmixiユーザーなので判るんだけど、mixiの売り上げは各ページに現れる広告収入が主だと思われる。がしかし、ぼくはその広告を一度もクリックした事はないし、仮にクリックしたとしても絶対にカネは遣わないだろう。大半の人がそうだと思うし、ではどこからカネが流れてくるのか? という疑問が湧いてくる。
 月額300円の有料オプションによる収入もあるのだろうが、それは微々たるものだと察する。実際ぼくのマイミク24人中2人しか有料オプションを使っていない。2/24=1/12=約8%で、現在の公称ユーザー数500万人の内『複数アカウント』を少なく見積もって50万人とした場合、450万人の8%=36万人が有料オプションに加入と仮定すると、36万人×300円で月額1億800万円……アレ? アレレレ? 凄くない? もしかして計算間違ってる? いや合ってるよなぁ。年額12億9600万円だなぁ、それも有料オプションのみでだ! これに広告収入が加算されると……ワオ! 鼻血ブーッ!
 と、まあかなり好意的な単純計算だが《人が集まる所にはカネが集まる》という原理は否めない事実でもある。
 
 ぼくは以前「日本中の人から1円づつ貰えば1億円になる」という妄想をした事がある。1円くらいなら誰もが恵んでくれるだろう、と。しかし100人/日と計算すると、当然日給100円になってしまう上に、移動もしなければならないし、なにより飯も食わなきゃなんないので餓死してしまうという事実に気づいた(おまえバカだろ)。
 真夏に、およそ20kmほど離れた実家に自転車で行ったんだが、公共交通機関を使った場合は片道およそ350円ほど掛かる。自転車の場合はタダだが、自販で150円の水を買うと差し引き200円の節約になるが、時間と体力は消耗する。
 これが自動車の場合はリッター=10km走る車でガソリンが135円だとすれば270円で、速くてラクである。オートバイならばより効果的なのはいわずもがな。しかしこれらは初期投資をしなければ手に入れる事ができない。
 そう考えると、値段=相場というものはじつによく出来ている。mixiの相場は幾らかなぞなもし? 適正価格はおのずと現れてくるだろう。
 
 mixiというのはじつにいやらしいシステムで――
・既存のユーザーから招待されなければ利用する事ができない
・マイミク(お友達)をある程度増やさなければ全く面白くない
・訪問すると足跡が残ってしまう
・ログイン時間がバレてしまう
・自分の日記に書き込みがあると(あるかどうか)気になって仕方がない
・他人の日記に書き込むとレスが気になって仕方がない
 とまあこれが主な特徴である。ブログで閑古鳥が鳴いている人はmixiの方に充実感を感じるだろうが、一匹狼の特権である失言混じりの独善的な発言はなかなかしにくいのも事実である。《全肯定空間》とでも言おうかな。結構出会い系も充実しているみたいなので、イッパツやりたい人は一度お試しの上、成果を報告するよーに!
 ぼくは運良く初期の頃に花村萬月氏(ほらね? マイミクになると呼び捨てもできなくなっちまうんだ)とマイミクになれたんだけど、氏の日記が面白くてねぇ。じつは愛情に溢れた人なんだよなぁ。で、日記に書き込みしたら「うははは! 座布団一枚」とレスを貰ってねぇ、嬉しかったなァ(おまえこそmixi中毒じゃねーか)。
 
 そんな訳で萬ちゃんの『ジャンゴ』を読了。ジャンゴとは当然ジャンゴ・ラインハルト。音楽小説かと思いきや、凄惨な陵辱を受けた人間が復讐するという、萬ちゃんお得意のパターンだが、細かい描写はさすがプロ、読んでて涎が出てくる。あと漢字の使い方に特徴がある(抽んでる、爆ぜる)。
 この人の小説って「んなヤツいるわけねーだろ! ブハハハ!」と噴飯するんだが、同時に空恐ろしくて「いや待てよ。本当にいそうだな」と思わせる力に満ちている。この人の小説にハズレはないな、いまんとこ(短編はイマイチ)。
 
  想像力とは絵空事を描く事ではない。次に起こりうる現実をよりリアルに描く事だ(『ジャンゴ』)