あったまきた、燃えてきた

 
 残業上がりですちゃんです。
 頭皮マッサージを始めた33歳どぇーす! ヤベェ、おれ禿げるかも知れない。いやマジで。禿げたらテロリストに転職します。
 
 はてなが繋がらないんです。
 ヒロ吉やsoichikoのブログは繋がるのに、何故かおれんトコだけ繋がらない。
 障害情報をみると「mとnから始まるIDをメンテ中」とあったなんでやねん(「あった」の後に素早く雪崩れ込むように「なんでやねん」で)。
 数十通のメールを頂いた。「繋がらないんです!」とか「ブログ辞めちゃったんですか!?」とか「ブログはいいからあなたと繋がりたい!」とか「お願い! ヤって! アタイをボロボロにして!」とか、たくさんのメールを頂いたので、そういう淫乱な人に対しては「君のような好き者は、皮の付いた枝豆を数十個ストッキングに詰め込んでそれを出し入れしながらオナニーに励みなさい」、と(なにが「、と」だよ)。
 おいはてな、早く復旧しろよ。じゃないとこの日記はmixiに書くぞ? いいのか? え? 構わない? ふーん、あっそ!
 
 
 残業中、「いまから呑みに行こうよ」と友人から携帯にメールが来た。以前までのおれなら「いかない」とか「いけない」とか「きょうはいいわ」などと、漢字変換もせずに極めて無愛想な返信をしていたのだが、この年になると友人だちも結婚や離散をするので最近は“遊んでくれる”友達を大切にしている。
 おれが送った返信は――
「今日は残業で帰りが遅いので、たいへん申し訳ないが今夜は行けそうもない。しかしながら君の誘いは嬉しくて、ぼくは今にも全てをかなぐり捨てて君と肩を組んで短い秋の夜を謳歌したい衝動に駆られたが、いまのぼくにはそんな勇気も甲斐性もない。そんなぼくをどうか見捨てないで欲しい。できうるならば『大丈夫、大したことじゃない、心配ないよ』、そう君が思ってくれるのならばぼくは今夜グッスリ眠れるだろう。愛してる、君と君にまつわる全てを――世界のですこより。薔薇に代えて」
 なんて真摯なおれなんだろう、なんて友だちを大切にする男なんだろう。そしてなんてウザイんだろう。
 あーチキショー、呑みに出たかったー。クソー、バカヤロー。
 
 
 帰宅後、シャワーを浴び終わった直後の22時過ぎ、チャイムが鳴る。覗き穴の向こうには予想通り、上階の住民の姿があった。先日、大家に「上階が犬を飼っています」と密告った故の弁明、もしくは逆ギレだろう。ドア越しに応対する。
「はい?」
「上に住んでる者です、柄谷です」
 ドアを開ける。遠目では何度か目撃した事はあったが、面と向かうのは初めてだった。年の頃なら四十半ば、女性である。不細工ではないが、張り付いたスリムジーンズ姿の下半身は、土偶のように奇妙に発達している。
「先日、大家さんに強く言われたんですが……」
「犬の件ですよね?」
「ええ。でも飼ってないんです」
「でも、ぼく見ましたよ?」
「何をですか?」
「あなたの同居人が犬を散歩していたところをです」
「わたしは姉と住んでいますが、なぜ姉の顔を知っているのですか?」
 おれは「そりゃあんた、降りてくる時に覗き穴から見れば顔くらいわかるでしょう」とは言えなかった。なんか、覗き魔みたいに思われる事が躊躇われた。
「以前に、たまたま部屋に戻る時が同じで、その時に拝見しました」
「人違いじゃないですか?」
 本来覗き穴とは、“覗くためにある”のだが、ちょっと狼狽えたおれを見て、畳み掛けるように女は語気を強めて、さらにこう言った。
「姉を見ますか? 連れてきましょうか?」
 だったら、なぜハナっから連れてこないんだ。おれは、女が強気になればなるほど疑念を深め、それは確信に変わった。
「じゃあ、人違いかなぁ?」
「そうですよ。だってわたしたち姉妹は犬アレルギーですもの」
 なんと稚拙な嘘だろうか。「犬アレルギー」の比率は猫のソレに比べてずっと少ないことは、猫アレルギーで犬を飼っていたおれは良く知っているのだ。飼っている本人は気づかないんだろうなァ――共用部の階段に《犬の毛》がたくさん落ちていることを。
 たぶん、ヒロ吉なら「我が家の上階で聞こえる不可解な音の正体」が、「床を走ろうとして滑って引っ掻いている音」だという事に同意してくれるだろうと思う。
 何故なら、おれは「チャゲ」、ヒロ吉は「梅子」という“兄弟犬”を一緒に飼っていたのだから。ねぇ、ありゃあ絶対に犬の音だよなぁ? 犬好きをなめるんじゃねぇ!
 にしても“四十路の姉妹”が、こんな弁当箱みたいな2DKで生活している事の方に、むしろ違和感を覚える。ヤバイぜアブナイぜ。なんせこのアパートの住民は、男はおれ一人だけなんだ! あとは全部血族親子だ! ヤバイぜ! 場末のストリップ小屋かよ! こんなクソみたいなところはとっとと引っ越したいんだが、女はおれに火を点けた。このままじゃ終わらせねぇ。絶対に暴く。つまり証拠を握る。
 というか、おれは目撃したんである。足らないのは裏付けか。
 
 そんなわけで《ですこ探偵団》隊員募集! 時給は20円!(お手製クリームパン支給)