抽象に呼応する神経

 
 冬が近づいているからだろうか、がぜん読書モードのですこです。
 
 そろそろ冬の到来ですが、例年に比べるとずっと暖かいような気がします。我が家にはストオブ、ホットカーペット、オイルヒーターと三種の暖房器具が御座いますが、決して寒がりなわけではなく、部屋が異様に寒いんです。真冬の室温は6℃ですから冷蔵庫とほぼ同じなわけです。あ、備え付けのガスストーブを入れれば四基あるな。でもガスってダメなんですよ。“涼しい風”が出てくるうえに料金がバカ高いですからね。たまに大家さんが「何かあったらいつでも言って下さいね」とか言ってくれるんですけど、「何もかも全部がダメなんぢゃい!」とは言えない訳で、「いやあ、窓を開けなくても換気ができるのが便利ですなぁ」などという嫌味も通じるはずもなく。この部屋に引っ越してきた時は部屋の壁紙が汚かったので「貼り替えて下さい」と言うと、「お金が無いんですぅ」などと言いつつ大家の豪邸にはジェットスキーが二台もありましたからね。まあホント、人生を謳歌するならば自分に関係のない所ではお金を遣っちゃいけないんだなァ! チキショウ、大家のドタマをジェットスキーで轢いて逆モヒカンにしてやりたいゼ!
 
 口座は全てネットで管理しているので、カードの請求書が届いても未開封のまま棄ててたんですよ。で、こないだたまたまうんこをする時に届いたから便所で開封してみるとギフト券とか入ってるんですよね。ぼかぁ驚いちゃったね。というかムカついたね。『ギフト券在中』と朱書きしておけよ! いままで捨ててたぞ! まったくきゃつらの遣り口というのは「出来るなら気づかずに捨てて欲しい」という態度が見え見えで感謝の気持ちなんかこれっぽっちも無いんだよ。というかぼくはカードはほとんど一回払いなんだけど、彼らはどうやって儲けているのかな? むしろ感謝すべきはぼくの方なのかも知れないな。カードって便利だしさ。ありがとうVISA! いや、リサ! プラスティックのステッグマイヤー! お礼にこんど肩たたき券を贈るよ! 極小の文字で「ハンマーで」という注意書きを見逃すなよな!
 
 こないだ知ったんだけど浅田次郎原作の『地下鉄に乗って』が映画化されてるようです。なんで今頃映画化されたのかはよく判らないけど、観たいねぇ。ぼくは浅田氏の本はデビューから三作の『極道放浪記』シリーズが非常に好きで、何度も読み返した。当時の氏はピカレスク小説を書かせればピカ一だったように思うな。氏のデビューは四十路過ぎと遅いんだけど、中学生の頃から小説家を目指していたんだからその執念たるや恐ろしいものがある訳で、だからこそデビュー後すぐにたくさんの賞を獲れたんだよな。その辺の経緯は『勇気凛々瑠璃の色』という全四巻のエッセイに詳しい。彼のエッセイは老若男女楽しめて抜群に面白いゾ。あー、こういう時にアフィリエイトを貼ればいいんだろうけど、めんどくせーからいいや。泣きたい人は浅田次郎を読むべし、です。
 
 浅田氏とよく比較されるんだけどじつはまったく違うタイプで花村萬月さんという人気作家が居るんですけど、彼の場合は小説家を志したのが三十過ぎで「三年やってダメなら諦める」つもりでちょうど三年目に新人賞を穫ってその後はご存じの通りなんだけど、この人はエンターテイメントで書いてきた人なのに芥川賞を穫ってしまった。その違和感に賞賛の言葉を述べたのは先の浅田氏のエッセイだったと思う。純文学とエンタメの違いは何か? というのは日本独自のテーマらしく、その定義は曖昧なままだけれど、かつて福田和也は「純文学は不快、エンタメは快」という風にかいつまんで言っていたけれどなるほどな、と思ったね。『ゲルマニウムの夜』も去年に映画化されたんだけどマイナーな所でしか上映されていないみたいで、観ることができない。じつは日本の映画って無数に撮られているけれど上映する場所がないらしい。完成しても上映は数年後だというんだから、日本の映画産業ってじつは冷え切ってるんだよなぁ。というか視聴者が右へならえだからそうなったんだけど。困ったもんだけど、昔のインディー・ミュージックシーンみたいな初々しさも感じるわけで。ぼくは幸運にも萬月さんの日記を読むことが出来るんだけれど、氏の単行本がやたら分厚いことに不満を感じている人が多いことはAmazonのレビューを見ても判るんだけど、じつはあれというのはコスト削減のためにわざとそうしているんだよ。「かつてアルバイトで生計を立てていた身としては、時給で買える値段にしたい」と書いていたんだね。上下巻に分ければ印税も増えるしウハウハだけど、萬月さんはそういう考えなんだよな。カッコイイじゃないか。惚れ直したよ。しかもそれを公の場で言わないってのがまたいいじゃない。つーかおれ書いちゃったけど。だってこんないい話を独り占めする方がよっぽど悪じゃないか。『ゲルマニウムの夜』から始まった“王国記シリーズ”、面白いねぇ。「文学って面白い」と素直に思ってる。本当にいいよ、小説って。ただ、同性間のフェラチオのシーンでギンギンに勃起してしまったのはショックだったが……。
 
 面白いなぁ、本って。文字だけでいいんだよ、文字だけだぜ? 葱と味噌汁だけですんげぇ旨いの。凄い事だ。ありがとう義務教育。お国が敷いてくれた素地のお陰で、大人になってから問題が山積みだよ。
 
 
 畳部屋の寝室にて。積ん読の山。
 
 ヤベェ、愉しみ過ぎてヨダレ出てきた。