笑えない日記

 
 おめこ券、ですこです。つまり紙幣です。
 
 しかし何故、性行為の事を「おめこ」とか「おまんこ」などと女性器の呼び名に喩えるのだろうか。男性同士の場合だって「ケツマンコ」と呼ぶし。
「ちんぽしようぜ」と言っても意味不明だが、例えば「お茶しようよ」と言った場合は「お茶を飲もう」を意味するので、名詞がその行為をも意味するときは対象が有益な場合が多いので、「おまんこ」は女性器によって快感を覚える男性語なのかもしれない。
 逆に女性の場合は「おまんこ」の代わりに「ちんぽしたい」と言うのだろうか? 言わないだろう。あくまで「セックス」と呼び、男性のように一方的に性器では呼ばないと思われる。
 先日、中年女性たちと性について話をしたのだが、世間一般でよく聞かれるように淡泊な意見だった。「仕方なく」「早くイけ」「腕枕がしたいだけなのに」と、性行為・オルガズムに対して能動的ではないし、諦念すら覚えている感がある。
 男性が性行為を女性器で呼ぶ事と、女性の性行為に対する消極的な態度はリンクしているだろう。「女はイッたふりをする」というのは本当で、早くこの一方的な腰振りを終わらせて、腕枕で眠りたいのだ。
 性行為の時の女性はどんなブスでも絶世の美女になるし、射精時の男性はどんなに軽薄な人間でも必ず真剣な顔をしている。その時に女性がおかめに見えたり、男性がひょっとこに見えたりしたのなら、それは別れの時だろう。
 
 なにが言いたいのかといえば、セックスがしたい。爆発しそうだ。
 
 と、いきなり下品な話から入ってしまったが、結構まじめに書いているつもりだ。
 mixiの某コミュニティは文章に関する非常に有益な情報が溢れていて、その中で書かれている「笑わない文章を書け」という教示があって、それには打ちのめされた。
 それが具体的にどんな事を意味しているのか、明確には解らなかったが、先日買った本に同じような事が書かれていてやっと理解した。
 
 

日本語の作文技術
日本語の作文技術
posted with amazlet on 07.01.26
本多 勝一
朝日新聞社出版局
売り上げランキング: 819
 
 どこでこの本を知ったのかは忘れてしまったが、必読だと思う。
『笑わない文章』について最も印象的だったのは――
 
「笑いながら演技する落語家を見て、一体だれが笑うだろうか?」
 
 という一行で、これで完全に理解した。
 
 ここまでの文章で、自分を書いたのは最初の「〜ですこです」だけだ。考えを述べながら、一人称(主語)がなくとも成り立つのが日本語の特徴で、なんかスラッとして綺麗だなぁ、今日の日記。ナナフシみたいに擬態してるぜ。
 挙げた本はブロガーに限らずみなさん読んだ方がいいと思いますよ。なんたって安い! 567円! 買おう!
 おかげで「笑っている文章」を容易に見破る事ができるようになった。ぼくもよく笑っていて、その時は完全にスベッっているし、あるいは迎合している。
 わかっちゃた。というか、わかってた。改めて提示されると突き刺さった。みんなも絶対にわかってる。わかってて読んでたんだな! 嗚呼、恐ろしい! ブログは恐ろしい!
 

 
 さて、しばらくさぼったので続けよう。便秘時のトイレで携帯から読むといい。
 渋谷の「短大生 妹バラバラ殺人」や、同じく渋谷の「外資系金融会社社員 バラバラ殺人」が話題になってるが、共通点は「家族を殺害して切り刻んだこと」だろう。
 家族といっても両者にはかなりの差違があるし、みなさんニュース等で事件の概要については既知だと思われるので、ぼくが最も印象深いと思う、かつて日本で起きたバラバラ殺人について述べてみよう。
 大抵のバラバラ殺人は、持ち運びを容易にして証拠隠滅の為か、蘇生を恐れる本能的な心理も働いて切り刻むのだが、以下の事件はちょっと性質が違う。
 
 1983年に起きた、練馬一家5人殺し事件だ。

 不動産鑑定士の朝倉幸治郎は、競売にかけられた一戸建ての物件を落札、購入した。資金は銀行からの借り入れで、毎月の金利は100万円になってしまうが、すぐに転売してしまえば利鞘が稼げる。
 ここの世帯主である白井明氏は、朝倉が立ち退きを要求しても一向に応ずる気配もなく、妻の幸子もじつに誠意のない対応をした。
 この不条理な振る舞いを命じたのは、土地の所有者である白井の妻の父、和田氏だ。和田氏の借金のカタとして競売にかけられたのだが、不動産取り引きに精通している和田氏は、立ち退き料の値上げを目的として、引き延ばしを娘夫婦に命ずる。
 朝倉は足繁く通って立ち退きを迫ったが、最悪の応対の上に、借入金の利子と殺意は膨らんで、弾ける。
 完全犯罪を目論み、死体を樹海に棄てる計画を立てる。ペーパードライバーだった朝倉は、死体を運ぶだけの為に教習所に通い、車を購入する。一時的な死体の隠し場所としてマンションまで借りる周到さだった。
 手提げバックを持って白井宅に向かい、いつものように立ち退きを迫るが、幸子氏の応対も相変わらずだった。それに、もう腹は決めていた。
 二人の子供が見ている前で金槌を振り下ろし、叫びながら逃げる幸子氏を追いかけて頭蓋骨を砕く。母の胸にすがりついた子供二人も、鳴き声が響くのを恐れて、同じように殺害する。滴り落ちた血を拭いて、三人の死体を風呂場へ運ぶ。男児の衣服は剥いだが、女児の服は着せておいた。
 そのあいだに次女が学校から帰宅したが、朝倉を見ても何も言わず、二階の部屋へ行った。朝倉は「お姉ちゃんはいつ帰ってくるの?」と訊き、次女は「お姉ちゃんは林間学校で、明後日に帰ってくる」と答えた。
 朝倉は、次女の首を絞めて殺害する。
 これで三人。血が付着した衣服は全て洗濯し、ビニール袋に入れている。
  21時、帰宅した明氏を、朝倉は居間のソファで迎える。朝倉はボディブローを叩き込むと、明氏はうずくまった。朝倉はかつてボクシングをやっていた。
 四つん這いでかがんでいる首を目がけて、隠していたマサカリを振り下ろす。
 
 翌朝、用意していた“工具”で死体を刻み始める。胴体をダルマにして、内臓を取り出して電動肉挽き機にかけてミンチにし、トイレに流す。
 丸一日かけて次の屍の解体に没頭するが、隣人に気づかれてしまい、警官に緊急逮捕される。
 
 当然、死刑判決で、2001年に執行されているが、朝倉は最期まで後悔はしなかったという。確定後も「スッキリしました!」とさえ言っている。

 
 読んでいて気分が悪くなった人もいるだろう、申し訳ない。
 どう考えても四人の死体処理は無理なのに、怨恨のみの爆発的なエネルギーでやってのけた朝倉は、とても珍しい例だろうと思う。
 この事件、どう思いますか?
 無論、朝倉はやりすぎだけれど、不動産売買で泣き寝入りしている人も居るという事を示唆しているし、朝倉は後に「子供を殺したのは申し訳ない」と言っている。
 成立してる売買を、不当に阻害された気持ちはわかる。口は災いの元というけれど、口で済んだ話だったのかもしれないが、借金は寡黙に膨張してゆく、ということか。
 
 ぼくは、バラバラ殺人に興味はない。
 本当の事を知りたいだけ。ワイドショーの残骸を。