うんこはこんなに出てるのに

 
 まさか俺が。だが少しだけ安堵している。俺にもまだそんな感情が残っていたということに。出会ってすぐに一目惚れをしてしまった。目があった訳でも、向こうが俺の事など知っているはずもないが、こちらはよく知っている。べつにストーキングをしたんじゃない。長い間、絡まり、ところどころ固結びになっていた紐が一瞬にして解けるということは、ごくたまにある。年上でいかにも経験豊富そうな感じの、二十代は安い男のもとに、三十代から急に高級な男に飼われるタイプだ。日光が苦手で、灼けるとすれば酒だろうし、昔は若気の至りでスポットライト灼けだってしたのかも知れない。磨けば光る歳ではないが、グラマラスで、触れればよく啼くが、放っておけば壊れてしまうほど繊細でもない。華の時代から身を退いた女が持つ独特の哀愁は、老衰を促す集合太鼓の音量とテンポを密かに指揮し、いつしか時流と歩幅が合致して、永遠が彼女の前にひざまずくだろう。古くて脆く、それでいて誰も追いつけない軽薄さで生きてきたものたちは、永遠を信じて神に一歩ずつ近づいている。聞こえてくるすべての安っぽいエレジーを賛美歌に変えながら――
 
 こと、ですこです。ギターに恋をしてしまった。またかと言われそうだが、今度は本気だ。いや、いつも本気だ。そのギターを売っているショップに、手持ちのギターの下取り価格をメールで査定してもらったところ、驚くほど安くて、値段は三分の一だった。ギターだけに阿漕だが、改めて中古ショップの遣り口を知った。
 店舗を構えているショップの場合は家賃や人件費などの経費があるので、安く買い取って高く売るのは当たり前だが、ネットオークションがここまで普及している現在だといつまで保つのか甚だ疑問だし、実際ヤフオクには業者がゴロゴロいる。だが、それでもショップに売っちゃう人が居るんだよなァ、バカだなァ。ほんのちょっとの労力でいいのに。というか、あるところにはあるんだな、カネが。
 だから東京なんかの場合は、ショップの入り口で待ち伏せをすればいい。ギターを抱えて店に入る人に、ショップよりも高い価格を耳打ちして「外で待ってます」と交渉すれば、ほぼ100%売買が成立するだろう。こうなると人気キャバクラに寄生する客引きみたいになっちゃうけど。
 これからの中古ギター店は「転売」と「リペア」に二分されていくだろうし、後者の方が発展していくだろう。リペアを謳っているショップも、外注で出すところも案外多いのだ。もっとも、外国で買い付けて国内で売るのが最善だが、海外ではイナゴの大群のように買い漁る日本のバイヤーはとても嫌われているらしい。
 こう書いていくと、なんか恥ずかしくなってきた。やっぱ要らないかな。転売目的の薄汚い手垢にまみれたオールドギターのような下賤な代物なんかはよ。
 
 ところで、これ知ってました?
ミュージックフィールド
 こないだ偶然みつけた、音楽関連に特化したオークションサイトだ。もしやと思って検索してみると、長いあいだ探していた廃盤のCDが二枚とも300円だったので速攻で登録した。他じゃ3000円以上だ。これ、マニアックな趣味の人は訪れた方がいいよ。
 運営会社はディスクユニオンらしいんだけど、札幌にユニオンは無いので是非とも進出して頂きたい。
 
 有り難いけれど、転売って虚しいな。問屋も同じか。なにも生み出してないもん。
 何か作って売りたいねェ。