オランウータンは鬱病である

 
 玉葱の皮を剥き切った後にちんちんの皮を剥いてヒリヒリしているアウストラロですこです。
 野生の動物は強姦をしないけれど、オランウータンはするそうです。
 
 花村萬月著『鬱』読了。古本で50円だった。〈鬱・欝〉には草木の茂るさまという意味もあり、〈了〉には両手を喪った子供の意味もあるようだ。言い得て妙である。
 文庫でおよそ600ページにもおよぶ長編で改行が異常に少なく、永山則夫無知の涙に匹敵する読みにくさだった。文体ではなく視認性においてだ。しかも読点も少なくて、あとがきには「自分の文体を崩す為にはこの本が必要不可欠だった」とあって、なるほどなと思った。とても興味深く面白い本だった。
 こんなブログでも読点を打つ場所にはよく迷う。たまにわざと読点を抜いて全部書き終わった後に俯瞰して打つこともあるが、このやりかたはドラムをシーケンスで打ち込むことと似ていて、最初にシンプルなビートを一曲分打ち込んでおいて後から微調整するのだ。この方法が良いのかどうかは判らないが、やってみると意外と面白いし、そもそも読点はどこに打とうが構わない。構わないだけに、迷う。答えがないのだ。
 面白い事に読点――つまりリズム――は読者に伝染る。ぼくもよく影響されるが、このブログにコメントをくれる人が時たま、明らかにエントリの内容のリズムに影響を受けた読点の打ち方をしているのを目撃して、ぼくはニヤニヤしている。ちゃんと読まないとそうはならないので、それを喜んでいる含み笑いでもあるという事を付け加えておこう。さんきうさんきう。
 


 

 道内タクシー中堅の昭和グループ(札幌)は五日、傘下二社の運賃値上げを申請する方針を決めた。道内タクシー会社では一九九七年四月の一斉値上げ以来約十年ぶりで、今週中にも北海道運輸局へ申請する。利用者減と規制緩和による競争激化で悪化した運転手の労働条件の改善を目的としている。値上げまでには運輸局の審査を経る必要があるが、今後追随する事業者が相次ぐとみられる。
 同グループの昭和交通(札幌)、はまなす交通(同)は営業区域としている札幌、江別、北広島、石狩の四市で構成される「札幌交通圏」を対象に申請する。現行運賃(初乗り六百円)に対し、申請する値上げ幅は15%を超える見込みだ。
 タクシーの料金改定は最初の申請から三カ月以内に申請各社の車両台数の合計がその交通圏全体の七割を超えた場合に運輸局が審査を始め、六カ月以内に結論を出す仕組みとなっている。そのため、今回の申請で実際に値上げされる場合は十二月ごろとなる。
 道内のタクシー運賃は九七年四月以来据え置かれているが、燃料高騰が経営圧迫に拍車をかけたことで昨夏から全国で値上げ申請が相次いでおり、道内でも札幌圏を中心に機運が盛り上がっていた。昭和グループの加藤欽也社長は北海道ハイヤー協会と札幌ハイヤー協会の会長も務めている。
 札幌交通圏のタクシー会社は七十四社で、車両台数は約五千三百台。

 
 不思議だよなぁ。明らかに過剰供給なのに単価が上がるというのは、経済原理に反している。ちなみに道内のタクシー運転手の平均年収は250万円だそうだ。でもこれって同情の対象にはならない訳で、過剰供給の潮時を意味していると思う。労働時間も長いみたいだけどスポーツ新聞を読みながら仕事ができるんだから“実働時間”は長くないはずだ。値上げをしたことろで根本的解決はおろか逆効果になるだろう。
 ちょっと前までのぼくは、呑んだ帰りでも必ず徒歩で帰宅していた。タクシーに千円を払うくらいなら帰りにコンビニへ寄って追加の酒なりを買った方が有意義だ、と考え実行していたんだが、やはり年なのかな、最近はタクシーに乗っちゃう。これは青春の終わりを意味していると思う。いやマジに。春からは歩こう。
 


 
 タクシーといえば、かつてこんなことがあった――。
 当時のぼくはまだ紅顔の十代でバンド活動に熱を入れており、毎週末はギターを背負ったまま終電で帰宅していた。駅に停めておいたママチャリに跨ると「おーい」と呼び声が聞こえた。振り向くとスーツを着た二十代半ばと思われる痩躯の男が手招きをしていた。無視して行こうとすると「白タクたのむー」と嗄れ声で言った。ぼくは白タクの意味を知らなかった。男は小走りで寄ってきて再度「白タクたのむよ」と正面から言った。
 外灯を浴びた男の頬は赤らんでいたが好青年だった。ぼくは男に訊いた。
「白タクってなんですか?」
「ナンバーが白いタクシーのことだよ」
 なるほどそういうことか。
「チャリにナンバーは付いてないでしょ」
「かたいこと言うなよ。そのギターはおれが背負うからさ」
 そう言って男は強引に荷台に跨った。ぼくは何故か厭な気がしなかった。線路沿いの道はちょっとした坂道だった。だからといって男を降ろすのは格好悪いと思ったので、意地になって立ち漕ぎで乗り切った。登りきればあとはひたすら下り坂だった。夜風を浴びながら背後で男が言った。
「涼しくて気持ちいいなぁ」
 ぼくは無視した。続けて男は「腹が減ったなぁ」と言った。途中にあるコンビニの前で止まって「なにか買う?」と訊くと、男は「いや金がないんだ」と言った。
 白タクと呼び止めたくらいだから、ぼくはちょっとした小銭を期待していた。だが裏切られた気持ちも怒りもなく、口から出た言葉は「じゃあウチでなにか食べていく?」だった。男は「うん」と屈託なく言った。
 家に着き男を招き入れ、水を一杯差し出すと一気に飲み上げた。戸棚を漁りながら「どん兵衛ホンコンやきそばしかないけど?」と言うと、「ホンコンやきそば?」と男の声が高くなった。
「袋タイプのやきそばだよ」と現物を見せると、「見たことない!」と立ち上がり、袋をまじまじと見始めた。
「内地の人?」
「そう。転勤でつい最近きたばっかり」
「じゃあ喰ってみる?」
「うん」
 屈託がない。
 小振りのフライパンに水を190cc沸騰させて麺を投入し掻き回していると、「そうだ!」と男が言った。スクッと立ち上がり両手で名刺を持ちながら「わたくしこういう者です」と頭を下げた。このやきそばは固めで仕上げるのが絶対なので、ぼくはかき入れ時の料理人よろしく顎でテーブルを指して「そこに置いといて」と言った。
 男はやきそばを貪り喰いながら「辛い! 水!」と言った。水を注いでやると一気に飲み上げた。名刺を見てみると大手鉄鋼会社の営業マンで、苗字は忘れてしまったが名は今でもよく憶えている。
「……弾?」
「そう。ダン」
「変わった名前ですね」
「うん。諸星じゃないけどね。ハハハ!」
「やっぱセブンから取ったのかな?」
「いや、怖くて親には訊けないんだ。ハハハ!」
 屈託ゼロ。
 弾はもう一杯水を飲み干して、「じゃ!」と去っていった。ぼくの名も、越してきたばかりなので住所も知らぬまま、弾は消え去っていった。
 
 以上、オチがなくて申し訳ない。だがほぼ100%実話である。ぼくがわざわざ実話といった時は実話である。他は、ほとんどが、虚構、だ。
 タクシーに乗ってしまうと、こうはいかないだろう。いかなくてもいいんだけど。
 

 
 大好きなつぼ鯛が半額だったので即買い。ここしばらくは毎日かつお節でダシを取って味噌汁を作っているので、魚しか食べたくない病、である。
 
 
 

・つぼ鯛
大根おろし(がっつり)
・若菜と白ごまを和えたごはん
・油揚げとほうれん草の味噌汁
ブロッコリーとアスパラ
・漬け物(柴漬け・パリっ子)
・スカトロジー大全(面白い本だ)

 
 わたくし、いつでも婿に行く準備はできております。どうですか、そこの看護婦さん。それも婦長クラス。
 夜? おまかせ下さいませ、女王様。伝家の宝刀《獅子舞クンニ》を是非とも堪能して下さいませ。