つまらないものですが、どうか
火野正平――
ヘーイ!
渋谷哲平――
ペーイ!
ですこです。
『話のつまらない男に殺意を覚える』という本が話題になっていて、これはmixiのコミュニティが元ネタになって出来上がった単行本らしく、著者や印税のゆくえが問題視されているみたいです。
それはいいとして(俺には関係ねえし)、男性はこのタイトルを目にするとヘコみますよね。
「あいつマジでつまんない」という女性の言葉は、
「あいつのまんこマジ臭かった」と同値だと思うんです。「それ言っちゃおしまいだろ」という事ですね。
『まんこの臭い女に殺意を覚える』などという本は出版されるはずがないわけですから、この本はある意味タブー本だと思いますし、あらゆるレビューでも酷評されいるんですが、これだけ評価が低いとむしろ読んでみたい――と思わせる打算が最初からできていたのなら、わたしの負けです。
たぶん男性諸君は「話のつまらない女に殺意を覚える」ことはありませんし、「話のつまらない男に殺意を覚える」こともないと思うんです。
この本がターゲットとしているのは、例えば合コンなどで出会った初対面の男に対しての文句だと思うんですけど、この場合の「つまらない男」は男性からみれば非常に使える「切り込み隊長」的な存在で、誰も彼に“質”は求めていないのです。
鍋の中に離ればなれになった具材が浸っているぬるま湯の粘度を上げる水溶き片栗粉に過ぎないのです。片栗粉に質を求めますか? しかも彼はそれを自覚して演じているのです。
つまり、この本に寄稿した女性たちは「ピエロは本当にバカだ」と思っている幼児に等しいと言えましょう。
我々の話はつまらないが、狡猾である。笑顔は端から望んでいないが、かと言って苦痛に歪む顔も望んではいない。できれば愉しませたいし、時には柔らかく驚いて欲しいとも思っている。
我々は、あなたのにおいを誰にも洩らさない。洩れたとしてもそのほとんどは誇張されていて、それは嫌悪よりも興味を誘うだろう。
我々は、貴方たちが化粧をするように化けなければならない。土砂降りでもバレないくらいに、化けなければならない。
産む機械? 羨ましい。我々は、その発言を聞いて、即座に養鶏場を連想した。産みたい。そして生きたい。我々は、産まれてすぐに殺されてしまう。備長炭の上で縮まり、あるいは貴女の顔にのっている化粧品の材料として生涯を終える。
我々は、怒ってはいないが、悲しんでいる。
我々は、貴方たちが好きなのだ。
どうか、わかってください。