罪を探すことが罪である
目指せローウェル・ジョージ、ですこです。誰か髭を売って下さい。
いつだったか、于吉から「エレキギターを欲しいんだけど、どれがいいかな?」とメールが来た。本文には型番が明記されていて、それをググってみると、これまたビックリするくらいダサいギターだった。にもかかわらず、予算は6万もあると云う。
好きなことを書きすぎてしまうとみんな引いてしまうのではないか、と余計な懸念をするくらい、ぼくはギターマニアだ。生涯最高の玩具だと思っているし、新品も中古も、常に相場を熟知している。
ぼくは于吉に、Epiphoneのギターを勧めた。ビートルズによって席巻したモデルはカジノだが、あえてリヴィエラを勧めた。ほとんど運命のように、リヴィエラがオークションにあった。
近年は、韓国製ということでなにやら毛嫌いされているEpiphoneだが、ギターに罪はない。ギターほどアナログな楽器はいまどき珍しいし、ゆえに個体差もある。資材が米国だったとしても、組み立てた場所が韓国ならばメイド・イン・コリアだし、その逆も往々にしてある(グレッチを見よ!)。
ギターに罪はない。
今夜、于吉が真新しいギターを持ってやって来るというので、ぼくの心は躍っていた。于吉なんかどうでもいい。お目当てはリヴィエラだ――あのグラマーなヤツ!
右手に高級ビール、左手には低級ギターを持った于吉がやってきた。高級をよそに、低級を両手でしっかりと受け取って、于吉を乱暴に部屋へ招き入れた。
そっと寝かせて、ハードケースを開けてみる――「初めまして、世界のですこです」。
いいギターだということは、見てすぐにわかる。ぼくはもうギター歴二十年だ。なめんじゃねえ。
新古品よりも上等な、剥けたばかりの亀頭のみたいな赤味を帯びていて、もちろん手垢なんかは無い。
勝手にかかえてみて、「抱える」と「抱く」が同義であることを改めて知る。スケベな意味じゃない。ひらがなの「を」を視て、「母が子を抱きかかえている」と象形することに近い。それを想起させるくらい、いいギターだった。
途中、さとしがやって来て、ギター談義に花が咲く。
きゃつらが散ったあとに、ピザとポテトの花が咲く。
Lサイズを頼んだんだが、生地がないとのことでMサイズが二枚、と増量してしまい、ピザと山盛りポテトが余ってしまった。もちろん、ギターに罪はない。
あの抱き心地を想い出しながら、ぼくは眠る――と見せかけて、全て平らげてしまうことがジョージに近づく第一歩だと、ぼくは思っている。