徒然日記

 
 更新しないことに慣れつつある、無気力ですこです。
 
 突然、母から「話があるから来なさい」と電話が来たのでぎくりとした。
 夕刻に病院へ出向くと、「人気のない場所に行きましょう」と伏し目がちに言うので、ひぃとなってキンタマが縮まった。
 しんとしたロビーで話を聞いて、なんだそのことか、と安堵した。
 
 千葉の姉夫婦は、母の病気をきっかけとして新築の家を建てる決断をした。義兄の職業は大工なので「いつか自分の家も」と思いながら年月が経ち、ここいらで肚を決めたようだ。一般的なサラリーマンより収入が多くとも、フリーの青色申告だとローンの審査はめちゃくちゃ時間がかかるらしい。急げば二ヶ月で家は建つが、バリアフリーという特殊な構造もあるし、なにより義兄は本職なのでじっくりと建てたいのだろう。
 回復期リハビリ病棟は150日を入院の上限とする、と法律で定められている。そこまでやってだめならもう諦めなさい、という悪法だ。
 母の場合は最長で12月20日まで居られるのだが、そうは言っても上限ぎりぎりまで入院することは希で、おそらくは11月一杯で追い出されるだろうということは、ぼくもわかっていた。
 ローンの審査が遅れれば家が建つのも遅れる。そうなると退院してから行くところがない! えらいこっちゃ! ですこに電話しなきゃ! と、母は考えていたようだが、公営住宅にこだわらなければバリアフリーの賃貸物件なんか腐るほどあるので、家が建つまで一緒に暮らせばいいじゃねえか、とぼくは考えていた。
 それに前日、姉から「家が建つのが遅れてもとりあえず千葉に来てもらう」と電話が来ていたのだった。なんというタイミング。
 それを伝えると、ぽろぽろと泣き出した。転院してからというもの、母はことあるごとに涙を流す。最初はぼくもしんみりして貰い泣きをしたものだが、あまりの頻度で泣くので「あれれれ?」と思うようになった。
 嬉し涙、悲しい涙、口惜しい涙――母の涙はそれらに当てはまらないような気がした。涙腺がゆるむというレベルじゃないのだ。あまりにぽろぽろ泣くので「もういいっつーの!」とつっこんでみると、「あたまの血管と一緒に涙腺も切れちゃったの」と泣き笑いで言ったので、今度はぼくが泣きそうになってしまった。
 
 友人のY司から聞いた話だが、そういった病棟に運ばれてきた患者は、女よりも男のほうがよく泣くそうだ。夜中じゅう、ベッドに潜って啜り泣くらしい。そしてY司は新入りにこう叱咤する――「おい! 泣いたって治んねーぞ!」
 

診療報酬、リハビリに「成果方式」導入へ 改善度を初加算

厚生労働省は18日、脳出血や骨折などの患者のリハビリテーションを対象に、診療報酬に初めて 「成果方式」を導入する方針を決めた。患者の改善度合いで病院ごとの実績を評価、診療報酬点数 を加減する内容で、評価基準作成を進めている。今秋の中央社会保険医療協議会中医協)で 評価基準案とあわせて成果方式の導入を提示、平成20年度の次期診療報酬改定での実現を目指す。
成果方式が採用されるのは、機能回復を図る「回復期リハビリ病棟入院料」。
現行では、
(1)回復期 リハビリを必要とする患者が常時8割以上入院
(2)専従の医師1人以上、理学療法士2人以上、作業療法士1人以上が常勤
 などの要件を満たせば、一律で1日1680点の診療報酬点数が与えられている。
診療報酬点数は医師の診療行為に与えられ、病状の改善度合いは加味されない。今回は患者の入院時と退院時の状態を比べ、改善度合いの良好な患者がどれだけいるかで診療報酬に差をつける。
ただ、患者の病状によって期待できる回復状態が異なることから、医療関係者の間では「成果方式になると、病院は回復の見込みが高い患者を優先し、回復が難しい患者を敬遠するのではないか」との懸念も強い。
こうした事態を防ぐため、厚労省は病状に応じた改善度合いの目標達成度を定め、数段階の評価 基準を作る。その上で、病院の過去の実績をみて、高い評価基準をクリアした病院は入院料の診療 報酬を高くする。同省は、すでに全国の病院から評価基準づくりに必要なリハビリに関するデータ 収集を進めている。

 
 関わっていない人は、このニュースに関心を示さないだろう。治る見込みのない人は受け容れられなくなるだろうし、受け容れられたとしても点数稼ぎの超スパルタが横行し、ほんとうは歩けない人がさも自力で歩いているかような、苦痛と諦念が混じって歪みきった写真を撮られるだろう。しかも「笑え!」と言われる。そうすれば金が集まる、麻原の“胡坐ジャンプ”と同じ構造だ。現代の姥捨山はどこにあるか? 大抵の場合、山の麓にあるじゃないか。
 
 北欧は福祉が充実しているけど、ポルノはめちゃくちゃにハードで、洋物マニアは〈北欧物〉しか観ないらしい。それに自殺率も高い。
 福祉の充実度とハードコア・ポルノとスーサイド、この力関係と軋轢やしがらみを文字で顕すことができたのなら、あなたは作家になれるだろう。売れないだろうけど。
 


 
 ひさしぶりにギターを磨いて、弦を張り替える。

 オールドぢゃないヨ。
 
 Gibson SGを使っているギタリストは昔からたくさん居るけれど、古今東西いちばん“SG然”とした音を出しているのは、世界でみても坂本慎太郎がNo.1だとぼくは思っている。デュアン・オールマンのように「スライドでハイ・フレットが弾き易いから」という理由も、クリーム期のクラプトンの「軽いから」という消極的な理由やらを全てブッ飛ばしたのが、坂本慎太郎だろう。ポール・ウェラーも2ndではSGを使用しているが、ゆらゆら帝国に比べればハナクソに等しい。
 ハコ物や、メイプルトップをデコレーションしたレス・ポールと比べてみれば、マホガニーのみのSGはめちゃくちゃに貧相だ。音はペラッペラで、サスティンもない。あの“いなたさ”をすべて請け負ってるのが坂本慎太郎だ。そしてなにより、カッコイイ! ロックもサイケもSGも、ぜんぶわかってる!――褒めすぎた。
 
 知っている人は少ないだろう。大昔のゴスペルでも、素晴らしいSG使いは居た。それもロング・ヴァイブローラー(マエストロ・ヴィブラート)じゃない。もっと古いサイド・ウェイ・アームで、且つホワイトの3PUカスタムだぜ! 見たことねえよ! 凄え!
 ミス・破天荒こと、Sister Rosetta Tharpe(シスター・ロゼッタ・サープ)がその人だ。
 

 ギター、ウマー! 最高!