たのしみは突然やってくる

 
 キャンタマが蛸の頭みたいになっていた、ですこです。
 昨日は風邪をひいてしまって、早い時間から寝込んでいました。正確には、ベッドの中でDSマリオをやっていました。全クリアを目指して隠しゴールを探していたんです。途中、電池切れの赤ランプが点いたのでアダプターを挿して更に続けました。睡魔が襲ってきたんですが、なんか隠しゴールがありそうな雰囲気を見つけると覚醒してしまいます。ふと時計を見ると深夜一時でした。じつに五時間くらい、寝返りを打ちながらプレイしていました。でもやめることにしました。風邪のせいではなく、右手親指が動かなくなったからです。それからルルを六錠呑んで、いまはすっかり元気です。ありがとう、マリオ。
 
 ネット上でよく目にする〈初音ミク〉ってなんだろう、と思って調べてみると、アニメのキャラじゃなくて音声合成ソフトのことだったのね。
 これ、VOCALOIDつって三年くらい前から札幌の会社(ウチの近所)が発売してて、ぼくもかつて試用したことがある。日本人の男女二種類と、外人女性二人、外人男性一人の合計五つのヴァージョンがあったはず。完成度も高くて画期的だとは思ったけど、インターフェイスはダサいし、なにより使い難かったし、デモ版の制限が多すぎだったので詳細がわからなかった。それに値段も高かった(邦版二万、洋版三万)。
 最初に出たMEIKOのサンプルを聴いて「ああ、これはアニソン向きだなぁ」と思ってから数年後、初音ミクでブレイクしたわけだけど、MEIKOとミクは機能的にほとんど同じで、じゃあなぜ急に売れたのかといえば、よりアニオタ向けに売り出したからだろうと思う。初音ミクという名前やヴィジュアルが良かった。比べてMEIKOは、素人目でも古臭かった。MEIKOは、なんか“町内会のお祭りの匂い”がして、それってオタクと対極だと思ったな。
 じつはわたくし数年前、VOCALOIDを知ってすぐに「家が近い」という短絡的な理由で求人に応募しようとしていたんだけど、VOCALOIDの技術はYAMAHAが考案したという事実を知って「ああ、オリジナルじゃないのか」と、辞めた。いま思えば応募しておけばよかったな。無論、落ちていただろうけど。
 それにしてもYAMAHAっていいな。楽器も造ればオートバイも、キッチンも風呂釜も造る希有な企業だ。オートバイのロゴに音叉マークがあるところがいいよね。初心忘れるべからずってことなのかな。ぼくがYAMAHAでいちばん好きなオートバイはDT-1だね! 後継のブロンコは、売れなかったねぇ……メカニックは最高なのにデザイナーが最低だったな。
 クリプトン社の人たちはいまごろ驚喜してるんだろうなぁ。だって初音ミクがブレイクするまで、VOCALOIDの存在なんかほとんど知られてなかったからね。
 初音ミクを知ったオタクの人たちがDTMに目覚めて、なんとか使いこなして唄わせるようになれたけど、バックの音を作らなければならないことに気づき、高価なホストDAWを購入するも、肝心の作曲ができず、夜な夜な猛勉強し、ついに出来上がったころブームは去っており、落胆した制作者は、散財して揃えたソフトや機材一式をヤフオクに出品し、それをDTMの人間が買い叩く――そうだな、あと三ヶ月後には初音ミクを含めたDTMのソフトや機材が一気に放出されて相場が下がるだろう。
 ちなみにぼくは、ヤフオクのアラートに「VOCALOID」の単語を入れて数年経つが、その間にアラートが届いたことはほとんどなかった。まったく売れてなかった。これからは鳴り響くことだろう、愉しみだ。
 ぼくがVOCALOIDを使ってなにをやろうとしていたのかといえば、「もの凄くいい曲をもの凄くクダラナイ歌詞で唄うわせたかった」からだった(卑猥なものだ!)。VOCALOIDは非常に優れたソフトで、殊にコーラスに凝れば、ブライアン・ウィルソンも真っ青の相当に凄いことができるだろう。無論、VOCALOID単体では不可能なので、初心者は気が遠くなるだろうけれど、頑張って下さい。音楽を創ることはとても楽しいです。
 時間とパソコンって似てるんだよね。「これだけ時間をあげるからなにか創りなさい」と、「これはなんでもできるソフトだからなにか創りなさい」って、ほとんど同じだよね。後者が「時間がない!」と言い訳してもそれは嘘だな。なぜかといえば、じつはなにも創れない現実を目の当たりにして、それを取り戻す時間はあるのだから。
 時間じゃないんだろうねぇ、やっぱり。