引き合う孤独の引力、とはよく言ったものだ

 
 はてなからこんなメールが届いた。

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 よく見ると《申しw》となっている。このメールを書いた人をプロファイルしてみると、「あー、また障害かよ。ったくダリいなァ。つーかどうせ便所の落書きばっかなんだから障害くれーでガタガタ言うなっつーのwww障害はしょうがないマジウケルおれ天才www」という風に思っているに違いない、ロバート・K・ですこです。
 
 帰宅後、そわそわが止まらない。
 例のアレは昨日が発売日だったが、北海道は遅延のおそれがあるので今日なら確実だろう。そういやお母ちゃんの通帳も記入しに行かなければならない。近くにないんだよね、その銀行のATM。札幌駅の近くにならあるなぁ。うーん、よし行こう。
 
 
 買っちゃった!
 
 DS文学全集であります! 明治〜昭和文学が百冊入っとります! かさばらない!
 これね、いままで似たようなソフトはあったんだけど、決定的なのは、来月から現役作家の書き下ろしを順次ダウンロードして読めるところなんですよー。面子も、北村薫田口ランディ貫井徳郎、その他未発表の作家が三名いるんですよー(町田康奥田英朗舞城王太郎を希望)。これが二千八百円なら買うでしょーがー、普通。
 

DS文学全集

DS文学全集

 
 ただ、ダウンロードするためにはWi-Fiとかいう物が必要なので、このためだけに買いましたけどね……高くついたなぁ。
 任天堂は囲い込みが巧いよねぇ。たぶん青空文庫と提携してると思うんだけど、それだけじゃなくて書き下ろしが読めるというところが、出色。
 これね、例えば最近は海外の有名アーティストがこぞってレコード会社と決別している流れが日本にも来て、そうなると「歌本をDSで配信」という流れになりますよ。つまり、バンドスコアをDSで配信するわけです。しかも職人による採譜じゃなくって、アーティスト自ら監修とかなったら、売れまっせー。いや、ソフト自体はそれほど売れなくても本体が売れるでしょー。しかもですよ、最近はおやじバンドブームですから、著作権の切れたジャズなんかを収録したHOW TOを出せば、売れるね。タイトルは〈DS大人のジャズ〉、コピーは「ニッチもサッチモいくんです!」。監修は山下洋輔で。ヤバい、売れる、売れちまう!
 うーん、任天堂、恐るべし。
 

 
 先日、面白いニュースを見たんです。

大分県警日田署は14日、大分県日田市十二町、会社員西村隆浩容疑者(46)を現住建造物等放火の疑いで現行犯逮捕した。西村容疑者は同日午前3時ごろ、自宅の玄関の外から、自宅に届いていた新聞紙にライターで火を付けて自宅内に投げ込み、放火した疑い。鉄筋コンクリート4階建てマンションの3階の自宅部屋約80平方メートルが全焼した。 
同署の調べでは、酒に酔って帰宅した西村容疑者が、玄関ドアにチェーンがかかっていて入室できなかったことに腹を立てて、火を放ったらしい。当時、妻(46)と娘(7)が室内で寝ていたが、放火後我に返った西村容疑者が隣家に助けを求め、ベランダ経由で西村容疑者が自宅に入って救出し、無事だった。

 
 このニュースを見て真っ先に想い出したのが『石部金吉』という人物だった。これ、名は体を表す四文字熟語じゃなくて、あだ名なんです。ググっても出てこないので、人物をざっと書いておきます。面白いよ。
 
 一九三九年五月十九日、福岡県磐城郡渡辺村の農家の三男として生まれた。金吉が六歳のとき父が戦死し、戦争未亡人の母は窮状のまま子供たちを育てる。母親想いの素直な性格で、小学校の成績は普通だったが、中学になると学力は次第に低下していったが、「性行きわめて従順」との評価があった。
 中学を卒業して東京へ出て、印刷会社に就職する。いわゆるオフセット印刷で、当時は最先端の技術だった。元来、図画工作が得意だった金吉は胸を躍らせた。
 工場の二階は寮になっており、六畳一間に三人も詰め込まれるという狭さだったが、実家はもっと狭かった金吉はあまり気にしなかった。酒乱の先輩に仕事の失敗をなじられたが、素直に謝り、同じ失敗は二度と繰り返さなかった。着実に技術を身に付けていたが、夜中に布団で悔し泣きしているのを同僚は目撃していた。
 そのうち先輩からプロレタリア文学、徳永直の『太陽のない街』を教わってあらすじを聞くが、従順な金吉には響かなかった。
 一九六〇年、勤勉な金吉は正社員へ昇格する。同僚が祝い酒を勧めるが、ジンマシンが出ると金吉は断った。酒は呑めたが深酒はしない質だった。
 そのうち金吉は“太陽”を見つける。働き者の明るい女性だ。まだ若いという理由で親兄弟に反対された結婚だった。祝福がなかったのが不満だったのか、金吉は酒に溺れてゆく。
 次第に深酒を工場長に注意されるようになるが、素直に謝った。妻にも酒量を決められて、それを殊勝に守った。
 一九六六年八月二十九日、晴天の東京は三〇度の熱帯夜だった。この日、従妹が上京してくるというので金吉は休暇を取り、東京を案内していた。
 帰り道、酒場を通りがかると同僚が声をかけてきた。金吉は大瓶二本を呑んで、「かあちゃんに叱られる」と言って席を立つと、「だらしいねえのぉ」と同僚が言った。今日は従妹を案内したご褒美だ、と金吉はもう一件つきあうことにした。
 二件目の女主人は「あら、金吉さん。今日は大丈夫なの?」と言った。妻は界隈の飲み屋に「金吉に酒を与えないように」と釘を刺していた。金吉は苦笑してウイスキーの棚を見た。
 すると係長と補佐が来店して、冗談交じりに「仕事を休んで酒かぁ、いいなぁ」と言った。「文句あっか!」金吉は突如としてキレた。みんながなだめると温和しくなったが、今度は酔っぱらい特有の正論を吐き始めた。それは異様に饒舌で、得てして極めて主観的なものである。金吉の酒は進んだ。
 係長に怒鳴りつけられた金吉は、鏡を殴りつけて甲が血だらけになった。たまりかねた係長は金吉を殴った。金吉はまったく無表情だった。
 すると、店に妻が現れた。金吉は血だらけの手をポケットにしまって、急に静かになった。妻にうなじを掴まれた状態で寮へ向かっていると、金吉は赤いバケツを持っていた。
「それ、なに?」
「ぐふっ、ガソリン♪」
 機械を動かすための燃料、それに印刷工場には紙がいたるところにある。
「ぬ、ぬ、わーろ!」
 意味不明に叫んだ金吉はバケツをブン廻して、ジッポで火をつけた。爆発音がして火柱三メートル、一面火の海。
 死傷者四名、うち死亡者一名。死者は、太陽だった。
 
 尋問によって、当時の金吉は記憶がなかったことが立証された。
 酒精犯罪が糾弾されまくっている現代なら考えにくいことだが、模範工だったがゆえに愛妻焼殺をも悪夢とみなされて、金吉には寛大な刑が処されている。寛大と言っても無期だ(本来、放火殺人は死刑)。
 
 
 長くなってしまったが、もうひとつ書いておきたいことがある。
 これは、こないだラジオで松っちゃんが言っていて目から鱗だったんだけど、例えば飲酒運転で人身事故を起こした人間が、“シラフの状態で反省してもまったく無意味”だということ。酔って狼になって事件を起こした人間が、素のまま反省してもそれは詭弁である、と。
 ガンガンに呑ませて、車のエンジンも丁度いいくらい暖めて「さあ、どうします?」とやってからじゃないとダメなんだよ。
 これは浮気の検証にも応用できて、ベッドで股を拡げた若い女性と、柱の陰にエプロン姿の妻とを配置しないとダメなんだよね。若い女をはねのけて妻のもとへ走らなきゃならない。
 もちろんロリコン犯罪者にも応用できて、たとえば赤貝とアワビ(以下ry
 
 ぼくも酔っぱらいなので、全否定はできないんですけど、例えばゴムボール(スーパーボール的なやつ)の塊をぐいっと裏返すことができたのなら、それは一つの宇宙が生まれたことと同じだと思うんですね。そこからなにか始まりを予感させるでしょう? で、酔っぱらいというのは、それをお酒を呑むことによって自分でぐいっとやってると思うんです。宇宙は常に膨張しているらしいけれど、酔っぱらいの、ゴムボール大のちっちゃいコスモはそこいらでポコポコと生まれていて、それが酔っぱらいの醍醐味だと思うんですよね。おおげさに言えば新しい世界ですよ。でもこれは場所を間違えるとまったくの傍迷惑で、露出狂、もしくは酒乱と名付けることができますよね。
 酔っぱらいでもTPOは見極めなきゃね。つーか酒乱って、じつはちゃんと見極めてるんだけどな。場所が見つからないだけのかも。
 
 はい、長くなりました。最後まで読んだひと、愛してます。
 では、酔い週末を!(呑ミニケーション的なオヤヂギャグ)