セレブが視ている世界はモザイク状

 
 こんばんは、モリッシーです。
 
 パリス・ヒルトンがテレビに出ていたので、彼女のセックス動画が流出しているという噂を想い出し、ねじりハチマキを巻いていざ検索、高鳴る胸の暴れ太鼓、湾曲を繰り返しながら確実に膨らんでゆく生き物のような想像、たちあがりつつある我が御神木。いまなら、タバコのセロハンを、突き破ることができる。
 こうした検索の場合、たとえばgoogleに『パリス・ヒルトン 流出動画』と打ち込むわけだが、ヒットの大半は広告収入目的のクソ重いサイトで辟易してしまうだろうが、ぼくくらいのマエストロになると、嗅覚で感じ取ることができる。真実はいつだって静かなものだが、立ちあがるなにかがあるものだ。それを感じ取ることができないあなたはおそらく、ホカホカのパンティが何分前に脱ぎ捨てられたことはおろか、トリュフを探すことだってできないだろう(おまえ野豚だろ)。
 伝授したいのはやまやまだが、こればっかりは経験がものをいう世界なので、残念ながら教えることができない。けど落胆しないで欲しい、諦めないで欲しい――
 あのときのきみは、確かに熱を帯びていた。だがいつしか冷めた眼になっちまって、自暴自棄になったんだ。
 きみは泥酔して喧嘩三昧の毎日だった。最後の喧嘩相手はヤクザの親分だったね。子分たちに襤褸雑巾になるまで叩きのめされたきみを見て、親分は言ったんだ――「おめえ、いい根性してるな。ったく、野良犬みてえな目つきしやがって。今日からおれの周りをうろちょろせい」
 きみは親分に飼われることになって、すぐに頭角を現し、いまや側近、果ては若頭という出世街道を歩むことになる。
 いつものクラブで親分を囲んでいると、作業服を着た二人組の男がやってきてカウンターに座った。きみは慧眼の持ち主だったので、作業服の袖から金のブレスレットが覗いたのを見逃さなかった。
 周りに鳩がいたのなら、一斉に飛び立っただろう。
 きみは親分の盾になって、銃殺されてしまった。二人組は子分たちによって始末され、親分は無傷で済んだ。
 葬式の日、親分はきみを偲んで人目も憚らず号泣したらしい。そしてこう叫んだんだ――「わしの! わしのオモチャがぁー!」
 きみの体には五発の銃痕があったが、飛び抜けて大きい穴が肛門付近に空いていたので検屍が不審に思ったそうだ。
 元気ですか。民営化された日本郵便株式会社が天国まで配達してくれるのなら、きみになにか適当な詰め物を送りたい気分です。では。かしこ。
 
 そんなわけで(なにがだよ)、ストリーミング動画がWMPだった場合、プロパティを見れば拡張子がasxのURLがあるので、それを『ダウンロード支援ソフト』でDLしてasxをメモ帳かなにかで開くと、今度は拡張子がwmvのURLが書いてあるので、同じソフトを用いてDLする、と。プロトコルがhttpでない場合は、べつのソフトを使用する(SDPが優秀)。
 で、見たんだけど、マジモンだぜよ、これ。検証のために百二十八回見たんだけど(見過ぎだろ)、どうみても本人で、普通にフェラ……おっと、露骨すぎましたね。なにか代わりに隠語を考えましょう。そうですね、チュパ千代とかどうですか、いや、違うな、大地フェラチ央、いやだめだだめだ、ケツマンサンバじゃ意味が変わってくるしな、うーん困った。どうしよう。もういいです、ハム太郎にします。ちゅぱちゅぱハム太郎にします。前歯は削る感じで。
 
 こうしてみると、パリスに比べて日本の自称セレブたちのスケールがいかに矮小かがわかるというものです。全世界にセックス動画が流出したにもかかわらず、あの居直りっぷり。これぞセレブリティと呼ぶに相応しい、真の大人物である、とわたくしは思うわけです。他の、貯め込むことしか能がないセレブとは違って、振り撒いているじゃありませんか。それも全世界に! 無修正を!
 
 パリスは、紛れもない大人物である。
 お相手の男も、かなりの巨根だったが。