箇条日記

 
 
 クッキーはマクビティに限る、ですこです。
 
 
■キーボードの調子が悪い。以前から不調だったが、更に酷くなってきた。こないだ、何気なくブラウザを立ち上げて、googleの検索窓にカーソルを置くと「ポポポポポポポポポポポポポポポポ」と、マシンガンのようにエラー音が鳴り響き、なにごとかと画面を見ると検索窓に「wwwwwwwwwww」の文字が! ヤラレタ! ウイルスだ! 外人風に呼べばヴィルスだ! 「w」は「(笑)」と比較すれば嘲笑も含まれているように感じる――ヤラレタ! ラフィン・ウイルスだ!
 狼狽えること数分、キーボードのケーブルを引っこ抜いてみると、挙動が止まった。もしやと思い、ラジオペンチで「W」のキーを抜いてみるとベタついていた。酒でもこぼしたのだろうか(記憶ねえのかよ)、単に押しっぱなしになっていたようだ。でも怖ろしかった。よりによって「w」はねえだろ。
 最近、誤字脱字が多いかもしれない。でもそれはぼくのせいではなく、キーボードのせいである。よりによって母音のキーとエンターまでイカレテきやがったのだ。これはかなりイラつく。だから、指先から魔法でも出すように「ヅンッ!」とキーを押していマッスル♪
 
 
■先日、近所を車で走っていると、上空にカラスがいた。以前に生卵を落とされた場所で、生ゴミにネットを掛けていないそこは、体育館裏みたいにカラスの溜まり場となっている。信号を待っていると、丁度フロントガラスから見える位置でカラスは旋回していた。
 信号が青になって走り出すと、数メートル先の上空をキープしたまま、ぼくをいざなうかのように飛び続けていた。メーターを見ると速度は四十キロだった。アクセルを踏んで五十キロになっても同じ位置で飛んでいる。速いし、燃費がいいな、と思った。
 両羽の動きはじつに滑らかで、完璧な動作に見えた。前後ではなく上下に動かしているのに、なぜ前に進むのかがとても不思議に思えた。
 たぶん大昔の人類は、鳥の真似をして両腕にハリボテを付けて崖から飛び降りただろう。なんならでっかいくちばしだって付けたかもしれない(空気抵抗を軽減するために!)。
 あれだけ大きな両翼を動作させるためには強靱な大胸筋が必要であることは、スーパーで売っている鶏の胸肉をみればわかる。脂肪がほとんどない、マチズモの権化だ。そのくせ安い。メインエンジンが、安い。
 ぼくは安堵する。
 もし、鳥類が翼ではなく拳を持っていたのなら、通勤途中の我々はカラスのパンチ(デンプシー・ロール)に怯える毎日を過ごさなければならなかっただろう。
 もしぼくが鳥になれるのなら(なりたくもねえけど)、渡り鳥になりたい。大陸を横断して、世界中のお祭りに糞を落としたい。そのために一生を費やすんだ。
 
 
■先日、カツ丼を作った。親子丼は極めたが、カツ丼を作るのは初めてだった。唐揚げはたまに作るけど、揚げ物は油の処理が億劫なのだ。ましてや粉をはたいて卵をくぐらせて衣をまぶす、となると面倒くさいこと山の如し。
 滅多に寄らない、スーパーの肉コーナーの奥にある棚に、衣をまぶしたカツが売っていた。一枚百五十円と安かったので二枚買ってみる。キャベツの千切りを添えて、カツを揚げて喰ってみた。うまかった。出来合いの総菜は不味いけど、自分で揚げたものは想像を絶するうまさだった。サクサク度がハンパじゃない。
 残った一枚を冷蔵庫から取り出してまじまじと見てみると、生パン粉を使っているようだった。手軽でいいな、と思った。そういや棚にも少数しか陳列されていなかった。でも、だから、いいな、と思った。揚げたらうまいのにみんなバカだな、と思った。「明日はカツ丼を作ろう」、そう念じて床についた。
 ぼくは蕎麦が好きで、よく蕎麦屋に行くんだけど、たまにはカツ丼でも、と食べてうまかった記憶はほとんどない(一軒のみ)。それが親子丼となると、もはやお話にならない。
 はっきり言って、蕎麦屋は丼物をナメている。どこか「ウチは蕎麦屋だからサ」という甘えが垣間見える。かといって丼物の専門店はそれに釜掛けて不当に高い。確かに旨い。でも高くねぇ? と、たかが丼にいらつき、されど丼に唾を吐くのだ。
 これは一般家庭の丼物に対しても言える。親子丼は手抜き料理としても、カツ丼にはえもいわれぬ有り難みがある。「今夜はカツ丼だよ」などと言われた日には、気絶しそうになる。
 そうしてカツ丼を掻き込む。うまい。だって天下のカツ丼さまだもの。厚さ一センチのロースをカツにして、それを丼にしてるんだヨ! まずいはずがない!――。
 それはそれでいい。あなたが好きな家庭料理を否定するつもりなど毛頭ない。
 だが、丼物は“もっとうまくなる”ことを知って欲しい。丼タレの黄金率は存在するのだ。その比率は――
 
 だし  2
 みりん 2
 醤油  1
 
 である。
 酒や砂糖などの“気休め”は、丼物に関していえば一切無用だ。余計なもん入れんじゃねえ!
 親子丼に鰹出汁は合わないが、カツ丼には合う。それも、うんと濃いやつがいい。味噌汁の出汁を取るときに、おたま数杯をカップによければいい。
 出汁の濃い味噌汁は減塩にもなるし、カツ丼もうまくなる。なんたる一石二鳥だろうか。
 余所で喰う丼物がイマイチな理由は、「味が薄い」ことに尽きる。レシピに書いてたから、という安易な惰性が丼物を不味くしている。
 この黄金律(誤字じゃないぜ)、ぜひ試して頂きたい。お子さんがいる家庭は、みりんを煮きったほうがいいだろう(酒に目覚めちまう!)。
 
 
■先週、先々週と、何度か朝まで呑んでしまった。社会人としてどうかと思う。でもちゃんと仕事はしているので、社会人として悪くないとも思う。
 だから、もう酒はやめようと思う。やめて三日目、酒の意味がわからなかった。言葉を聞いても、意味がわからない。わからないなりに脳内で変換をしているうちに、「ああ、あの悪魔の水のことかい」と。
 紅茶が美味しい。特にアールグレイが美味しい。トワイニングの安物ティーパックだけど、中国製のテレキャスターテレキャスターなように、アールグレイアールグレイなのだ。
 ばかにしないで欲しい。ぼくだって正しい紅茶の淹れかたくらいは知ってる。あれは特に女性が好きだね。ティーパックはダメらしいね。フワフワしてるからダメだって。
 なんか、筒状のガラス容器に紅茶を入れて、ギュッと圧縮するやつね。酷いね。絞り尽くさないと気が済まないんだよ。そしてこう言うんだ――「このエグ味がたまらないのよ」
 暴走列車から身を投じようと自殺を考えていたとき、反対の路線にたまたま普通列車が通ってそこに飛び込んだ――ぼくの友だちはそういう風に離婚を決意したみたい。ぼくはそれを聞いて、なぜかファミコンの『チャレンジャー』を思い浮かべて笑ってしまった。ごめんなさい。
 紅茶が好きなことは誰にも言ってないし、男が紅茶好きって、グラタン好きみたいに批判されそうなので黙っていたけど、紅茶好きオーラが出てしまっているのか、ある人から“最も高価なお茶”を頂いた。
 

 いつ呑もうカナ?