本を燃やして焚き火でもしようぜ

 
 今朝の室温6℃、ですこです。慣れてます。
 
 出版社が続々と倒産しているようですが、以前から出版業界は不況だと言われてきたので特に驚きませんよね。なんせプロの作家でも印税収入のみだと年収二百万円なんかザラで、それでもまだ良い方らしいです。専業でウハウハなんていう人は一握りでしょう。
 某SNSで某作家さんの日記を楽しく拝読させていただいてるんだけど、日々もの凄い仕事量で、しかも借金まみれらしいです。売れっ子でもこの状態ですから、まったく大変な職業だと思います。もっとも、その作家さんは金銭感覚が麻痺しているので(作家には多いですよね)、「小説家は出版社に借金ができるのだ!」と豪語しているのが可笑しかった。たぶん印税の前借りで、もし死んだとしたら印税は出版社に行くような契約をしていると思うんだけど、どうなのかしら。
 草思社はマトモな会社だと思うんだけど、新風舎はヤバイですよね。いわゆる「共同出版商法」というやつで、広告バンバン打って沢山の店舗に本を並べてやると謳い、著者から高額な契約金を取るというものです。三百万円なら、正当な自費出版の五倍ほどの金額ですね。
 詐欺師というのは人の欲につけ込む術を考え抜いて成立するわけですから、新風舎のやり方も巧みです。少額の賞金が出るコンテストを主催して、応募者へ手当たり次第に声を掛けるわけです。
 二万円(!)の優秀賞には「きみには才能がある!」と持ちかけ、落選者には「きみは来年に開花する。ゴッホだって生前は理解されなかった」と肩を組む。
「でも、三百万円なんか払えません」と渋る人には、「今は未熟でも、あなたの未来は明るい。正直、この本は売れないかもしれない。しかしです。あなたはいずれベストセラーを出すでしょう。そしてその経歴の欄にこの本は載ります――つまり、あなたはたったの三百万円で大きなダイヤの原石を買えるのです。あなたは今のうちにあなたを買うべきだ!」
 著者の眼はハートマークで、なんなら未来で怒っている――「この輝きに気づかなかった愚民どもめ!」
 
 考えてみればです。
 三百万円あったら一年くらいは生活できるわけで、そのあいだ篭もって作品を書き、“マトモな公募”に送ろうとかは考えないんでしょうかねぇ。
 この商法の構図は昔から存在していて、広告代理店の営業マンが小さな土建屋に飛び込むんです。一代で会社を築いた、自己顕示欲が社会の窓からはみ出ている社長を持ち上げて、サクセスストーリーを聞きに足繁く通います。数ヶ月後、『わしの成功論 〜地下足袋でベンツを乗りこなせ〜』と銘打った五百冊の単行本を持参して、三百万円請求するというものです。もう断れないし、金もないことはない。仕方ないので十数人の社員に配って、残りは金庫の中で重しになるというわけです。
 
 たぶん、作家になりたくないという人は少数だと思うんです。みんな小さい頃は漫画家になりたかったんじゃないかしら。少なくともぼくはそうでしたし、周りはみんな漫画家に憧れていました。
 大人になって小説を読むようになると、「うーん、つまらん」などとしたり顔で言ったりして、心の裡では「おれの方がもっと面白い」と思っている人って、じつはもの凄く沢山いるはずで、新風舎の件はそれを表していますよね。
 潜在的小説家志望の人には共通する特徴があって、一作も書いたことがないのに「おれはできる」と思ってるんですよね。ギターを弾けない人は「おれはジミヘンより凄いぜ!」とは言いませんよ。なまじ義務教育で国語を習ったからそう思うんでしょうか。
 これってやっぱり、小説や言語の抽象性が高いからなのかな。
 でも、パンクロック然り(shaggs、slits、jonathan richman等)下手くそでもハートに響く音楽があるように、同じような小説だってあるはずなんだけど、そういった清新なことを表現できる人は、新風舎に原稿なんか送りませんよ。苔の生えた岩の下で悶々とうねっているはずです。
 
 たぶん、騙された人の大半は、引退した団塊の世代による“身辺雑記”が主だと思うんだけど、恋心を抱いているならいざしらず、誰が赤の他人の自分語りに金を払いますか。なんという高慢でしょうか!
 そもそも自費出版というものは、自腹を切って親しい人に配るもので、お金もさほどかかりません。
 母の同級生が自費出版で(非売品との表記あり)、昔の石狩の油田にまつわる本を配っていましたが、面白かったです。なぜなら、著者のことなど一言も書いていなくて資料に徹していたからです。
 
 はっきり言いましょう――「誰もお前の人生に興味はねえ」。
 
 現在はブログという素晴らしいツールがあるので活用しましょう!
 
 近い将来、自費出版した本を自力で売ることができるようになると思います。個人のサイトで売ることは今でも可能ですけど、たとえばAmazonに置いてもらうこともできるようになるんじゃないかしら。
 その場合、プロと同じ本棚に並ぶわけですから、タイトルや装丁が月並みだと誰も興味を示さないでしょう。
 ぼくが最も好きな装丁の本はこれです。
 
 
 稲垣足穂の『人間人形時代』という本で、タイトルも良いけど、本の真ん中に小さな穴が貫通しているのです。
 
 
 中身はエドワード・マイブリッジの連続写真がパラパラ漫画の要領で動くようになっています。素晴らしいセンスでしょ? でも肝心の中身はまったく理解不能でした。
 
 
 これはロシアのポスターを集めた画集なんですが、妙にかっこいいでしょ。アヴァンギャルドと書かれていますが、二十世紀初頭の物です。
 
 
 いい。ぜんぜん古くない。
 
 
 同年代のダダの影響か、ポップです。
 
 たぶん、広大な冷え切った当時のロシアでは文盲もたくさんいたから、視覚で訴えるポスター技術が発展したのかな。実際、当時の政府によるプロパガンダポスターもド派手ですし。
 
 本っていいですよね。豆本でも作ろうかしら。