こんな休日ですが、ナニカ?

 
 勤め人にとって、休日の前夜は至福の時だ。ぐでんぐでんになるまで呑み上げるもよし、朝方まで本を読むのもまたいい。普通に過ごすのはちょっと淋しい。
 昨夜は遅くまで2ちゃんねるに張りついていた。未曾有の格闘技イベント『THE OUTSIDER』が始まるのだ。会場からの実況隊に向けて「携帯の電池切れに注意しろ!」などと偉そうに書き込んで就寝。
 翌日、午前中に起床。普段よりも手のこんだ朝食を作り、ハチミツを入れた紅茶を啜りながら、コリン・ウィルソン言うところの「頬に朝陽が差した時の至福感」をひしひしと感じる。煙草もたくさんある。ものすごく平和だ。
 洗濯機を廻し、柔軟剤を入れる。香りのデオドラント。柔らかさはどうでもよくて、柔軟剤の匂いが好きだ。初恋の人は、シャンプーの残り香と柔軟剤の匂いがした。童貞を捧げた人の唇と股座は、コーヒー牛乳と生き物の匂いがした。
 部屋中が柔軟剤の匂いで充たされる。これだけで「ちゃんと生活してる感じ」がする。だが部屋は煙草の煙で充満している。もしかしたら、あまり意味がないのかもしれない。
 午後2時、2ちゃんねるに張りつく。試合開始は3時、決戦前の緊張感が楽しい。長丁場になると思い、コンビニにペプシとポテチを買いに行く。カロリーゼロ、ポテチはのりしお。ちなみに、のりしおの“のり”が亀頭に貼り付くとなかなか取れない、とアドバイスをしておこう。
 実況隊の書き込みから会場の雰囲気が伝わってくる。掲示板にも思いのほか人が集まって盛り上がってくる。普段はほとんど2ちゃんねるに書き込みはしないが、書き込みまくる。
 さらに、試合ごとに対戦カードのテンプレを貼り、感謝され、いつからか職人と呼ばれてしまう。それを3時間、全22試合やりきる。マルチモニタ万歳。
 個人的な注目カードは「新宿侍 VS アマ100戦全勝」だった。侍が買ったとの報を呼んで、思わず「ちきしょう! やったか!」と声を漏らしてしまうぼくは、もしかしたら2ちゃんねらーなのだろうか。
 
 さて、そろそろ2ちゃんねるに戻って、帰宅しただろう実況隊のレポートを読みに行かねばならない。
 それにしてもインターネットは便利だ。もしかしたら生で観るよりも楽しいのかもしれない。言葉と想像力の凄さにあらためて驚いた。
 ありがとう、2ちゃんねる。そしてアウトサイダーたちよ。