くっすん日記

 
 見知らぬ電話は出ないことが多いが、局番が市内だったので出てみる。税金等の催促かと思いきや、ガス会社からだった。もう何年間も、訪問点検をブッチしているのだ。なぜなら、彼らの言う「御都合の良い日」が、平日の9時から17時だからだ。おめーの都合だろうと。普通は不在ですよ。
 更に、パロマの死亡事故の件もあるので、会社としては責任を回避するためになんとしてでも訪問しなければならない。それも都合だ。ぼくだってバカじゃないんだから、レンジや給湯器くらいは掃除なりをしてチェックしてますよ。
 だって、生きたいから。生に対して前向きな人間の部屋にあるガス器具のことを危惧したところで(←ここ笑うところ)、無意味です。
 そしてなにより、こちとら客だってぇのにきゃつらの都合に振り回されてたまるか、と思うわけです。だから言ってやりました。
「平日は居ないっ!」
「はいっ! 充分承知しております! ですから17時以降でも、いや丑三つ時でも構いません! 二十四時間年中いつでもお伺い致します!」
 け、健気じゃねえか。日曜の午後に来るらしい。
 散々じらした挙げ句、寝起きのふりをしていかにもかったるい様子で応対し、点検している横で「プゥ〜」とか屁をこいたら、怒るだろうなぁ――「ここも点検して♪」。「お前じゃだめだ、カナリア連れてこい」とか。
 
 
 マグロが安かったので(インド産)、長芋と刻み海苔を買って初めて山かけを作ってみる。
 一回目は、わさびを溶いた醤油をかけてみる。うまし。
 二回目は、わさび醤油にマグロを漬けて置き、葱を少量のせてみる。更にうまし。
 
 
 セイコーマートの日配品はスーパーよりも安い。木綿豆腐一丁68円也。
 キッチンペーパーでくるみ、適当な重石を乗せて水分を抜く。
 豆腐を四等分に切って片栗粉をまぶし、油をひいたフライパンですべての面をチリチリと弱火で焼く。
 あらかじめ作っておいたつゆに浸し、葱と海苔をのせて、余った山芋をすり下ろしてかけてみる。劇的にうまし。岩海苔なら尚よし。
 これがですです揚げ出し豆腐である。揚げるのめんどくせえ。
 あれ? なんだろ、この突き上がってくる衝動。居酒屋やれそうな気がする。週休三日の。誰か出資しませんか。
 
 
 ススキノに5店舗を展開しているJ也が「俺もいよいよブログ始めたから見てね!」と言う。お仕事ブログだから仕方ないのかもしれないが、案の定、電撃的につまらないブログだった。
 以前、ライブに行ったときも初対面の女性が「わたしブログやってるんですぅ! 良かったら見て下さい!」と、ご丁寧にURLを記した紙片を寄越したが、これまた爆発的につまらないブログだった。
 人のことは言えないが、ぼくは未だかつてブログの存在をリアルで教えたことはない。いや、二人くらいにはあって、そこからクチコミで広まってしまった。これは非常に不本意なことだ。
 なぜなら、「インターネットという大海原で、なんの付加価値もない状態の一個人が、言葉を主体とした表現方法によって、どれだけの人たちにインパクトを与えられるのか?」が、ぼくのテーマだったからだ。
 そして、その匿名性によってぼくは少しだけ成長しただろうし、最初は小馬鹿にしていた言葉のちからに、今はおののいている。現在では、言葉を考えることは世界を考えることだと、けっこう本気で思っている。ぼくは言葉の奴隷であり、いつか観念の足の指を恍惚の表情で舐め回すことになるだろう――というのは、ハッタリだ!
 なにが言いたいのかといえば、言葉は凄いし、さらに音楽もあるし、人間まじヤバイわ。しかもちんぽ付きだし。あと、リアル友人諸君、会って「ですこ」と呼ぶのはやめて下さい。
 
 
 鳥居みゆきの既婚を、いまさらながら知る。
 かつては異常な盛り上がりを見せていた某画像掲示板も、今ではやけに荒れている。
 それまでは「カワユスナ〜」などと鳥居の画像を貼っていたが、既婚の報せと同時に「だまされた!」「詐欺だ!」という怒りが噴出し、面白かったのが「応援のためにDVDを300枚買ったのに!」というやつだった。一枚2,000円として600,000円ですよ。そのお金の一部が、愛の巣の家具になったのかな。いやコンドームかも。あいや膣セレブかも。
 鳥居の存在はうんと昔から知っていたんだけど、それは ⇒GO!ヒロミ44' というカルト芸人のブログで知った。
 ぼくは結構GOさんが好きで、ブログもたまにチェックしているし、こないだトーキョーへ行ったときに開催されていた「漫談日本一決定戦」も観たかったんだけど、時間の都合で行けなかったのが残念だった。
 で、この「漫談日本一決定戦」、名前は大仰なんだけど、YouTubeで見ると電撃的につまらないんです。でもそれがいいんだよなぁ。カルトの称号が一番ふさわしいのは、音楽じゃなくてアングラ芸人だと思います。
 鳥居みゆきがなぜ人気があるのかといえば、まずはその容姿ですよね。けれど、あれくらいの美人ならタレントで他にも沢山いるわけですが、ファンはそれら凡人には興味を示さないわけです。
「キュートな奇人」の代表といえば、近年では戸川純さんだと思うんだけど、もっと遡れば「見世物小屋のヘビ女」に辿り着くと思います。代々受け継がれてゆくヘビ女は現存していて、今はゴキブリ・コンビナートの人がヘビ女を演っているはずです。やっぱりその娘も可愛いんです。で、男はこう嘆くわけだ――「そんなに美しい君がなぜそんなことを!」と。
 しかしこの感情は、風俗ならば完全に萌え要素であることは、疑いの余地がない。
 反面、「白馬の王子を求める女性」のように、「閉じこめられている少女を救い出したい!」と男は本気で思っている。監禁から救出して、その後に独り占めしたいと思っている。そこには明確な性的欲求はなく、結構ピュアだし、そんな自分に満足している。
 そこで既婚の発表である。
 さぞかし衝撃だったろうと思う。音を立てて崩れるとはこのことか、と。
 批判が飛び交う書き込みの中で、じつに的確な意見があった。
「悔しいけど、主婦がこんなことやってんだぜ? めちゃくちゃ面白くね?」
 この人は、絶対に正しい。アガペーだ。
 鳥居の件で、ぼくは確信した。人は愛し合わなければならない。
 
 
 久し振りにバーボンを呑む。
「お前のシャツのロゴ、おもしれえな」と嗤われる。
 バーボンは苦いが、ピザは美味しい。
ヒレ肉と、へなちょこ野郎」
 バーボンも耳も、相変わらず苦い。
 

 
 帰宅後、UNEMPLOYEDの意味をエキサイト翻訳してみる。
 失業者だった。
 おもしれえ。いや、全然おもしろくねえ。