おやすみ、人類

 
 ものすごく暑い。アイスを貪り喰いたいが、我慢する。バニラアイスにマイヤーズを垂らして――嗚呼っ!
 食事制限を始めて早一週間が経ち、今回は本気であります。
 ダイエットについて考えてみると、運動のみによってカロリーを消費させるのは至難の業であることが、なんとなく理解できます。
 そうなると、まずは食事制限から始めて、体と精神を慣らすことが重要だと独断いたしました。つまり、脳味噌を徐々に変えてゆくのです。
 そして炭水化物と脂質を減らし、蛋白質中心の食事を意識することにしました。
 そうなると、問題にぶち当たります。蛋白質の増やし方がとても厄介なのです。
 豆腐には蛋白質が含まれていますが水分が多すぎます。そして鶏のササミを持ってしても完全に蛋白質を補給することは困難である、ということです。
 おそらくは、そのためにプロテインが存在していると思われます。
 要するに、まずは粗食を続けて満腹中枢を慣らし、それからプロテイン蛋白質を補給し、運動をして筋力を上げつつ徐々に代謝を上げていく、という流れです。
 たぶん、いきなり食事制限と運動を同時に始めたところで、ほとんど効果はないと思われます。
「就寝前がいかに空腹であるか(空腹感ではない)」が重要で、そこには血糖値の問題が絡んでいると思われますし、朝食が重要である所以も関係しているはずです。
 以上、まったくの独断なので参考にしないで下さい(でも、たぶん正しいと思う)。
 
 ざるそばを喰らう。
 そばはヘルシーと言われているが、ダイエットには向かない。それでも喰う(おい)。
 スーパーに売っているそばは、生麺自体は普通に美味しいんですけど、添付されてるつゆが不味いと思います。めんつゆみたいに小瓶に入っているやつも、漏れなく不味いのです。
 なんでこれほどまでに不味いのかと考えた場合、おそらくは保存期間の問題ではないかと思いました。鰹節等の旨味成分を多く入れてしまうと腐りやすいがために塩分で誤魔化している、と予測します。濃縮タイプが多いのもそのためだと思います。
 ですから、自分でつゆを作ることにしました。
 温かいかけつゆは一から自分で作るので楽勝です。それに、半年ほど前に作った『ですですかえし』が冷蔵庫に眠っているので、あとは出汁を取ればいいだけです。
 普通の『かえし』と『ですですかえし』の違いを申し上げますと、名前が違います。それは、明らかに違います。それだけは言っておきます。
 出汁の取り方はなんでもいいんですけど、鰹節はけちらずにがっつり入れるべきです。頭上で漂っている出汁の神様が「おいおいおい!」と狼狽えるくらいが丁度いいです。
 つけつゆの場合は昆布を敷かなくてもいいと思います。冷たいつゆの場合、昆布の風味が鼻につくことがありますので。
 さて、お味はと申しますと、めちゃくちゃに旨かったです。鰹の風味が半端じゃねえ! パネェ!
 みなさんもお試し下さい。はっきり言って、雲泥です。あたしゃもう、麺しか買いません。ミツカンよ、人間をナメるなよ。
 
 映画『ゆきゆきて、神軍』を観る。
 奥崎謙三についてはものの本で知っていましたが、映画は初めて観ました。映画というか、ドキュメンタリーです。
 これはちょっと、凄いです。観ているぼくも「ちょ、ちょっと奥崎さん。やめましょうよ」と狼狽えてしまいました。
 そこには暴力がありました。奥崎氏も初老であり、殴打に迫力こそないものの、圧倒的な暴力がありました。
 もし奥崎氏が刃物を持っていたとしたら確実に殺害していただろうし、また彼は過去、こういう風に人を殺したんだろうな、とリアルに感じました。
 暴力と言いますと、たとえば喧嘩や殴り合いを連想しますが、奥崎氏の暴力は次元というか、動機が違うんですね。
 この映画では戦争犯罪の追求のために暴力を行使していますが、そもそも彼は兵役中にも上官を殴っていることを考慮すると、これは先天的な資質と言えます。
 そしてその動機が不満による衝動的なものではなく、上官が不正行為を働いたからという理由が、なおさら彼をややこしくしていると思います。
 兵役を終えた奥崎氏は、正義のために不動産業の人を殺害し、懲役を独房で過ごします。思うに、この間に彼の先天的な資質みたいなものが養われ、より強固になったと思われます。
 つまり、先天的な資質と戦争体験とプリゾニゼーション(拘禁症)が渾然一体となって、『天の声』を聞いたわけです。
 しかしながら、彼は正常だと思われます。確かに行動は奇異ですが、それは諦念とは真逆に伸びたがための鋭利さ、とも言えます。
 彼の行動原理には、私利私欲が微塵もありませんし、「天皇は戦争責任を取れ!」という想いは、至極真っ当でもあります。
 奥崎氏と同じように、戦争問題を追求する人は今でもたくさん存在していますが、彼らのほとんどは、戦争を悔い、かつての戦友の遺族や墓に出向くという内省的なものです。
 もちろん奥崎氏にもそういう弔いの念はありますし、それゆえの爆発的な行動力なんですが、ぼくはどうも先天的な攻撃性を感じずにはいられませんでした。
 確かに正義なんですが、正義ゆえの暴力ではなく、暴力のための正義という風に見えました。そのどちらにしても、私利や私欲はとても見にくくなるんです。
 この感じは、クレーマーとよく似ています。それを解決することが目的ではなくて、新たな問題を探すことに生き甲斐を感じている人たちです。
 奥崎氏の最大の特徴は、「事象はよく見えているけれど、他人の心がわからない」ということだと思いました。これは、途轍もなく、ややこしい。
 ぼくは『ゆきゆきて、神軍』を観て、奥崎氏みたいな人が身近にいないことに、感謝しました。
 この映画は、おすすめしません。
 
 朝食が大切ということなので、トーストにはほとほと飽きてしまい、ほとんど苦痛に近かったので、器機に頼ることにしました。
 

 バウルーとかいうメーカーの、ホットサンドを作るやつです。
 じつはこれ、大昔に愛用していたことがあるんです。最近では電熱タイプもあるみたいですが、絶対にこっちの方がいいです。
 これはさっき届いたものですが、今夜届くことは知っていたので、夕方にスーパーへ行ってホットサンド用の食材を買い出しへ行っていました。
 食生活を変えてみると、あらためて物価の高騰を感じました。果物までもが高騰しているではないですか! リンゴとアボカドの価格がかつての1.5倍です。桃もバカ高ぇ! これなら、桃尻BARに行って女尻に顔面をうずめる方を選びます(そんな店ねーよ)。 
 ぼくにはまったく学がないので、これは独断ですが、最近の物価の高騰は投機のせいだと思うんですね。飢えてもいないのに価格が高騰するというのは、資本主義の成れの果てだと思います。
 たぶん、マルクスが唱えたことは「10人のうち2人が飢えているのなら、満腹な8人がそれぞれ、飢えている2人に分け与えよ」ということだと思うんです。
 これはキリストみたいに正しい考え方なんですが、マルクスが想っていたよりも人間の欲望は凄まじかった、ということです。
 ソ連の崩壊を見たからといって、社会主義を全否定することは、適切ではないと思います。責めるべきものはシステムではなく、個々であるとも思えます。それをしなかったがために今がある、とも言えますし、気休めのエコ、という構図は明らかです。
 
 ぼくがいま考えていることは、明朝のホットサンドについてです。
 ハムやチーズはもちろん、男爵をマッシュして明太タラモを作り置きしています。
 バウルーには仕切があって、二種類つくることができるのです。
 問題は、朝起きられるかどうかです。