秋ですなぁ

 
 夜、くだんのKからの着信。書留が届いた報告だろう、と受話ボタンを押す。
「おう、届いた?」
「えっ?」となぜかKは狼狽えている。
「いや、式には出られないからご祝儀を書留で送ったんだ」
「あ、そうなんだ……」
「ま、明日には届くと思う」
「いや、じつは……」と口籠もっている。
「なんだよ?」
「破談になっちゃって……」
「えぇぇぇぇぇっ!?」
 
 これはネタじゃない。いやむしろネタになった。
 なぜ破談になったのかは、訊ける雰囲気じゃなかった。
 婚約破棄という話はよく聞くけど、式場を押さえて直前で破談とかはあまり聞いたことがない。百歩譲って双方が初婚ならば、親の反対や急なマリッジブルーとかで有り得るとしても、お互いが二度目となるとまず聞いたことがない。
 それだけに、他人には窺い知れぬ事情があるのだろうか。ぼくが思うに単なるKのフライングで、相手が日和っちゃただけじゃないかと思う。
 おそらくKは新しい生活に燃えていたはずで、それは家を購入したことで証明される。原始人でいえば「寝床はあるぜ。けっこう広いぜ」と。システムキッチンに集中暖房だぜ、と(現代じゃねえか)。
 女性というのは本能的に「自分と自分の子供を養ってくれる人」を選ぶだろうし、Kの行動は子連れの未亡人にとっては渡りに船のはずだった。
 それがとつぜんの破談である。
 双方の浮気が発覚したか(Kの場合は性格的に考えにくい)、冷静に値踏みを始めたら不安に襲われたとか、そういうことだろうと予測する。
 要するに経済的な問題が大半を占めているに違いない。
 独身部族のぼくが言うのもなんだけど、経済のみでつがっていくことは、これからますます難しくなっていくだろう。精神的な繋がりが強くないと、いずれ別れることになってしまうだろう。まぁ、当たり前のことだけど。
 周りで離婚した人を見ても、徐々に物質社会に飲み込まれて行っているように見える。逆に言えば、経済的に安定していれば(というか“中の上”という幻想を体現できていれば)離婚は回避できる(故に風俗が繁盛する)。まぁ、当たり前のことだけど。
 でも、なんだかなぁ、やっぱカネかよー、とは思っちゃうな。あー、ヤダヤダ。
 どうでもいいけどKの奴、家のローンとかどうすんのかな。キャンセルできるのかな。奴の性格からして手当たり次第に招待状も送ってるだろうし、出席できない親戚はご祝儀も贈ってるだろうし、どうすんのかねぇ。やっぱお詫びはバウムクーヘンだよね。明日紅茶買いに行こっと。
 
 映画『マレーナ』鑑賞。
 少年が未亡人に恋をするという、ただそれだけの映画。青春デケデケのイタリアバージョン、あるいはライトなポーキーズ。というか、モニカ・ベルッチのための映画。ムチムチプリン。
 
 映画『デス・プルーフ in グラインドハウス』鑑賞。
 つまらなかったぜ……。
 
 苫米地英人『洗脳原論』読了。
 いまさら感たっぷりだけど、これは抜群に面白かった。こういうアクティブな学者は日本の宝でしょー。ちょっとブッ飛んでるくらいが丁度いい。
洗脳原論
 
 今日やっと届いた。

 チラ読みしたけど、これはタイトル詐欺だ。ミニミニ情報の寄せ集めに過ぎない。
 噂で聞いたんだけど、札幌の隣に江別という市があって、そこにはかつて大量虐殺されたアイヌが眠っているらしい――そういう内容を期待してたんだけど、この本はタイトルが大仰なだけで、中身がしょぼすぎだ。なーにが北海道残酷史だよバッキャロウ! 許せん!
 
 こういうふうに期待を裏切られると、もうなんか、いちいち買うのが馬鹿らしくなってきたので、これからは資料系は図書館を利用してみようと思う。