ですですクッキング

 
「はーい。じゃあ今日は珍しい素材を使ったお料理を作るわよー。東南アジアの方では食べるんだけど、日本じゃ馴染み薄いかなー? でもね、日本人が大好きな意外なものと親戚なのよ。そう、タラバガニの仲間なのでございますー。さて何でしょうか? 答えはヤドカリでございますー。やっぱり大きいのしか食材にならないから、今回はハケンヤドカリを使うわよ。いま旬だから、街中にたくさんいるわよね。それを適当に捕まえてきて頂戴。でも若いのはコクがないからだめね。勤続5年以上のがいいわよ。見つからないときは、そうね、チラシを撒けばすぐに掛かるわよ。給料の上限を大きく書いて、天引き分は明記しちゃだめよ。契約書の文字は極小で、うんと長文で書いておくの。そうして集めたハケンを無窓の工場にブチ込むの。なるべく太陽に当てないようにして、夜勤を不規則にやらせれば逃げ出す元気も失せるのよ。逃げたら? 構うことはないわ。放っておけばいくらでも集まるから。はい、ではハケンを俎板にのせましょう。あーこのハケンつがってるわね。引き離しちゃいましょう。うん、これくらいしんなり、げんなりしてるのがいいわね。そしたらまずハケンを上下に揺すりましょう。こうすることで、食べたときになけなしの小銭が口に入らなくて済むのよ。そして強引にヤドを外しましょう。こう、ガッと無理矢理、予告なしでよ。フライパンを熱してニンニク、オリーブオイル、鷹の爪を入れるわよ。オイルに香りがついたら、ヤドを外したハケンを投入して、蓋の代わりにナイロンを被せて蒸すのよ。簡単でしょ? はーい、できあがりー! ハケンヤドカリのテント包みでございますー! お味はどう? ハラワタの苦いのがまた美味しいわよ。さて、来週はどうしようかしらね? お饅頭なんかどうかしら? お饅頭の由来知ってる? あれはね、海の怒りを鎮めるために人間の頭を海に捧げていたのよ。もう少しで旬だし、来週はモトセイシャインを使ったお饅頭にしましょう、そうしましょう。本格的にいくわよー! もちろん怒りも鎮まるわよ。株主様のね」