買い物日記

 
 菅井きんに墨汁をぶっ掛けるとライトニン・ホプキンスになる、ですこです。
 久しぶりにBob LogⅢを聴く。「Six Stringer Kicker」という曲がめちゃんこカッコイイ。「Bacon」もイカス。
 フルアコでファズを効かせつつ、フルアコから出る生音も同時にマイク録りするとBob LogⅢのような音で録れる。ファジーでいながら歯切れの良い、不思議な音になる。
 アンプの音とフルアコから漏れる生音を同時に拾うこの手法は、ジャズギターの録音でもよく使われる。アンプ=ダイナミック、フルアココンデンサー、さらにアンビエントマイクを立ててそれぞれ別トラックに録音して、あとでミックスすれば深い味わいの音が録れるだろうなァ。いいナ。
 
 ヤフオクで機材を買う。
 前からずっと狙っていたSansampのPSA-1という、ラックタイプのアンプシュミレーターである。10年ほど前にコンパクトタイプのClassicを買っていままで使ってきたのだが、ノイズが酷くて自力では修理不可能になってしまった。
 本当はPSA-1のみを3万円くらいで狙っていたのだが、DIGITECHのVALVE-FXというアンシュミ&マルチエフェクターと、BOSSのフットスイッチ、更に1Uラックと2Uラックをまとめて出品していたので、それを狙ってみる。
 PSA-1=30000円、FX=10000円、フットスイッチ=2000円、1U=2000円、2U=2500円の合計45000円ほどを上限と見ていた。
 まずは35000円と入札して様子を見る。終了間際、案の定ライバル出現。40000円から勝負だな、と踏んでいると37500円でアッサリ落札。ラッキーである。
 
 品物到着後、ラックからPSA-1を出してみると、天板に代理店のシールが貼ってある。意外にも正規輸入品だ。
 海外電化製品の場合は電圧が違うので、電源を日本向けに最適化されている正規輸入品の中古相場は、並行輸入品よりも2〜3割ほど高くなるし、故障の際は代理店で修理が効く。この機材もソレを明記していれば単体でも35000円は堅かったであろう。
 
 早速音を出してみる。驚いたことに、コンパクトタイプのClassicとまったく同じ音がする! なんじゃい、この無駄な大きさ! まぁアンプシュミレーターなんでそんなモンである。所詮は疑似なのだ。
 PSA-1の取説は付属していなかったが、サウンドハウスという素晴らしい楽器屋が、自らの手で和訳したPDFをweb上にUPしてくれているので、それを有り難くDLさせて頂く。
 
 FXを弄ってみる。PSA-1と違って、見るからに使いにくそうである。webでPDFの取説を探すと、あった。しかし全部英語で、全80ページもある。どなたか英語に明るい方、翻訳して下さいませんか。報酬は鼻セレブを一箱で如何でしょうか。
 英語の辞書は高校生の時に買わされたヤツしかない。国語辞書に至っては兄のお下がりで、「エイズ」という単語は、まだ載っていない。
 とりあえずグリグリ弄ってみると、なんか、ラクリマ・クリスティみたいな音がする。ラクリマ・クリスティを聴いた事はないが、ラクリマ・クリスティの音がする。もしくは、ヴァレンタインD.C、またはAURA。イカ天初期の音がする。
 VALVE-FXというだけに、この機材の売りは真空管が搭載されていることだ。ネジを開けて中身を見てみると、ちっこいプリ管が一つあった。
 こういったプリ管を搭載した製品は現在ブームだが、このFXは94年製造であるからして、当時のDIGITECHは先見の明があったと言えよう。
 だがぼくが思うに、プリ管一つじゃなにも音は変わらない。プラシーボである。
 真空管の肝はパワー管であり、そのナチュラルな効果に比べたらプリ管の効果は無いに等しい。歪むのはあくまでパワー管なのである。ブギーやレイニーがパワー部のみに真空管を採用しているのは、そういうことを熟知している顕れであり、プリ部をコンデンサーにして多彩な音作りを可能にしつつ、パワー管でナローに持って行く、という訳だ。
真空管搭載!」などと謳いつつちっこいプリ管が一つしかない製品は、ラムネのビー玉みたいに意味がない。ちょっと有り難いところもよく似ている。
 
 ラックは外したし、MIDIペダルは使い方が解らないし、FXはラクリマ・クリスティだった。つまりわたしは、最初に思っていた通り、PSA-1以外はまったく無駄な買い物をしてしまった。残りの品物を欲しいひといませんか。安くしときますヨ、スリスリ、20000円で結構ですヨスリスリ(おまえはキキョウヤか)。
 
 ふたつのアンシュミを味見しつつ、この二日間で6時間はギターを弾いた。右手親指の傷口から血が吹いてネックに染みこんでしまった。
 絡まったシールドとヘッドフォンをブン投げて、アッテネーターを咬ませているVOX AC-15TBXをフルテンにしてジャキーン! と弾いてみる――
 
 真空管より空気だナ、と思った。